KPIとは何か|似た単語との違いや設定方法からコツもあわせて解説
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初回公開日:2021年08月25日
更新日:2024年05月31日
KPIとは何か
KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語に訳すと「重要業績評価指標」のことです。組織の目標を達成するための重要な業績管理評価の定量的な指標で、その達成度合いを定点観測することで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握するものです。
目標達成に向けた達成度合いを定量的に把握することで、もしそこにギャップが生まれた場合、すぐに修正することができます。
KPIとKGIやKFSやOKRとの違いについて3つ
KPI、KGI、KFS、OKRは、すべて目標設定に関する単語です。近年、組織の目標達成のために、KPIだけでなく、KGIやKFS、OKRも合わせて活用することが増えています。それぞれの単語の意味や違いについて、詳しく見ていきましょう。
1:KGIとは何か
KGI(Key Goal Indicator)とは、日本語に訳すと「重要目標達成指標」という意味です。組織の最終目標を定量的に表した指標です。
目標が定量で定められていなければ、達成度合いを確認することもできず、漠然としたまま風化していってしまいます。そのため、定量的に表す必要があるのです。
KGIは最終目標を表した指標のため、中間指標にあたるKPIと同時に使われることが多いです。例えば、新規月間売上100万円というKGIに対して、訪問50件、失注率5%などのKPIが設定されるイメージです。
2:KFSとは何か
KFS(Key Factor for Success)とは、日本語に訳すと「重要成功要因」という意味です。ビジネスを成功させるために大きな影響のあるキーになる要因のことを指します。KFSは組織で戦略を立てていくときには、必ず必要なものです。
KFSがプロセス自体を指すのに対し、KPIは目標数値を指します。つまり、KFSを定量的に指標化したものがKPIです。KFSがきちんと言語化されていると、KPIの設定がしやすくなるでしょう。
3:OKRは何か
OKR(Objectives and Key Results)とは、日本語に訳すと「目標と成果指標」となります。組織の目標と、チームや個人の目標を連動させるもので、組織全体の方向性を統一するための目標管理手法です。
OKRは、達成できるラインの少し上の目標設定を行います。組織が一丸となって取り組んだ結果、60~70%ほどの達成率になるように設定すると良いとされているのです。
また、OKRは到達点や状態、道筋などを定量・定性同時に設定します。KPIはOKRの一部と言え、OKRの定量目標をさらに細分化した指標となります。
KPIを設定するメリット4選
KPIを設定するメリットにはどういったものがあるのでしょうか。KPIは、組織の目標達成までのプロセスを定量化するため、組織全体が共通認識をもった状態で齟齬なく目標に向かって進んでいくのに役立つものです。では、メリットを詳細に見ていきましょう。
1:目標達成のための行動がわかりやすくなる
KPIを設定することで、目標達成に向けた行動がわかりやすくなるというメリットがあります。なぜなら、KPIは社員の具体的な指標となるからです。具体的な指標があると、どのような行動をいつまでに取るべきかの判断が容易となるでしょう。
社員一人一人が取るべき行動を理解することで、業務スピードが必然的に上がったり、PDCAサイクルがまわるようになったりし、目標達成に着実に近づくでしょう。
2:組織全体の意識を統一できる
KPIの設定は社員にとって、組織の共通の目標を認識することにつながります。今まで曖昧であった業務上の目標や指標、評価基準が明確になれば、目標達成までのプロセスで起きた問題を組織で共有することも可能です。
そうなれば、目標達成に向けて組織全体の意識が統一されます。意識を統一することができれば、組織としての目標達成や、そこに対するスピードなど、多くのメリットが生まれるでしょう。
3:個人のパフォーマンスを第三者から明確に判断できる
KPIの設定により、達成すべき目標の数値や期限が明確になります。そのため、個人のパフォーマンスについても、主観ではなく客観的で明確な評価ができます。
KPIの目標が、売上100万円であったとして、実績が120万円であれば目標達成ですし、実績が50万円であれば未達成です。それは、第三者から見ても明らかで、誰もが納得のいく判断がなされていると言えるでしょう。
4:モチベーション向上に役立つ
KPIを組織で共有することにより、社員のモチベーション向上にも役立ちます。なぜなら、KPIは目標に対する心理的な障壁を下げることができるからです。
数値目標が設定されると、取るべき行動が明確になり、日々の業務での迷いや不安が軽減されます。さらに、自身が取った行動、それに伴う結果に対しても、客観的な振り返りが可能となり、モチベーション向上に役立つでしょう。
また、業務プロセスの中で問題が起きた場合もすぐに認識でき、その起きた問題の解決に向けて組織全体で動くことができます。このように組織の結束力が高まることもまた、モチベーション向上につながるでしょう。
KPIの設定方法3つ
では、実際にKPIを設定する方法を3つのステップにわけて紹介していきます。KPIを設定する際は、KGI→KFS→KPIの順で設定していきます。これからKPIを設定する方は、ぜひ参考にしてください。
1:KGIの最終目標を設定する
まずは、最終目標となるKGIを設定しましょう。KPIはあくまでもKGIという最終目標を達成するための中間指標のため、KGIを明確に設定しておく必要があります。
KGIは売上や利益、アクセス数、シェア率など、自社の状況に合わせて、何にするか検討しましょう。誰にでもわかりやすい数値を設定し、それを組織全体で共有することも大切です。
2:KFSは達成するための絞り込みをする
KGIの設定が完了したら、それを達成するためにKGIの細分化を行います。KGIの細分化には、KFSを絞り込む必要があります。KGIの達成のために重要な要因を、実現可能性を意識しながら絞り込んでいきましょう。
KGIを達成するために重要な要因とそうでない要因を区別して、限られた資源を重要な要因に集中投資することで、効率的に成果を出すことが可能となります。
3:KPIは上記項目を数値化する
KFSの絞り込みができたら、具体的な数値を当てはめ、KPIを設定していきましょう。例えば、KFSとして「SEO対策」を要因として挙げたとしたら、KPIは「検索流入数○件」といった形で設定します。
このように、KPIを設定するためには、KGIとKFSを一緒に考えていくことが必要でしょう。
KPIを設定するコツ5選
KPIは、KGIを達成するために具体的な行動まで落としこんでいくための指標ですが、KPIを設定するのは簡単なことではありません。なぜなら、KGIの達成には様々な選択肢があるため絞り込むことが難しいですし、組織の特性に合わせたKPIを選択する必要もあるためです。
そこで、ここから紹介する「SMART」というKPI設定のコツを押さえておくことが大切になります。SMARTが網羅できていなければ、適切なKPIになっていない可能性があるため、非常に重要な考え方です。
SMARTとは、Specific(明確な)・Measurable(測定可能な)・Achievable(達成可能な)・Relevant(関連した)・Time-bound(期限を定めた)の頭文字をとったものです。では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1:明確に設定をする
KPIは社内で共有し、達成を追っていくものですから、誰が見ても明確に理解でき、かつ達成・未達成がわかるものにする必要があります。KPIが曖昧で漠然としたものだと、いざ達成に向けて動こうとしても何をしたらいいのかわからなくなってしまうでしょう。
KPIはただ設定すればいいものではなく、社員が現場で実感をもち突き進んでいけるようなものにする必要があります。社員のパフォーマンスを上げ、目標の達成をより確実なものにするためにも、KPIの明確さはしっかりと意識しておきましょう。
2:測定ができるようにする
目標の達成率や進捗度合いを確認するためには、測定可能な指標が不可欠です。KPIとはまさにこの目的を果たすためのものであり、定量的に設定し、測定可能なものにする必要があります。
KPIを測定可能なものにすることで、もし達成への道中で目標とのギャップが生まれてしまった場合も早期に発見することができ、行動の修正が可能になります。
また、組織内のチームや社員個人が、自身でも達成率や進捗度合いを認識できることで、情報共有やモチベーション向上にもつながりやすくなるでしょう。
3:達成ができそうなものにする
いくら成し遂げたい目標であっても、達成ができなさそうなものは、社員のモチベーションを下げてしまい、KPIへのパフォーマンスも低下してしまいます。また、達成困難なKPIが未達成で終わることは、社員の自信を削ぎ、他の活動にも影響を及ぼしてしまうでしょう。
そのため、KPIを設定する際は、達成ができそうな、納得感のあるものにしましょう。しかし、あまりにも簡単なものであっても意味がないため、達成のために今できる最大限のパフォーマンスを発揮する必要があるような目標を設定するのがおすすめです。
4:関連があるものにする
KGIとKPIには本来、相互に強い関連性があるものです。前述の通り、KPIはあくまでもKGIという最終目標を達成するための中間指標です。つまり、KPIが適切にKGIと関連するものでなければ、組織の最終目標であるKGIの達成につながりません。
よって、KPIを設定する際は、KGIに対して適切か、強く関連しているものになっているかを、必ずチェックしましょう。
5:適当な期限を設ける
KPIは期限が設定されていなければ、後回しになってしまい、業務効率や生産性が落ちてしまう可能性があります。期限設定をすることで、行動に現実性と具体性が生まれます。つまり、今すべきことが明確になり、適度な緊張感を保ちながらKPIに向き合えるということです。
KPI設定の際には、週単位や月単位、四半期単位や半期単位など、必ず適当な期限を設けるようにしましょう。
KPIで失敗する設定方法について5つ
ここまでKPIを設定するコツを5つ紹介してきましたが、この5つを押さえられていなければ、運用しても効果が出ない、達成が不可能なKPIになってしまうでしょう。
この設定に失敗した形を、「逆SMART」と言います。先ほどご紹介した「SMART」のそれぞれの項目にNotをつけたものです。では、逆SMARTと言われる失敗する設定方法を具体的に見ていきましょう。
1:曖昧な設定をする
曖昧なKPIの設定をしてしまうと、客観的な評価や組織全体の統一した認識ができなくなってしまいます。曖昧なKPIは、その解釈も達成度合いの評価も主観に頼ってしまうことになり、主観で判断する部分が増えれば増えるほど、KPIの意味はなくなってしまうのです。
そのため、人によって解釈が変わってしまうような曖昧な設定は避けるようにしましょう。
2:測定不能になる
KPIは、KGIを達成するための中間指標のため、定量的に設定されていなければ、その役割を果たすことができません。そのため、「できるだけ多く」などの抽象的、かつ達成度合いが測定できない定性的なKPIの設定は避けましょう。
3:高すぎる設定
KPIが高すぎる設定になっていると、達成が見えず社員のモチベーションは低下してしまいます。社員のモチベーション低下は、他の活動や他のKPIにも悪影響を及ぼしてしまうでしょう。現状をきちんと踏まえた、適切なKPI設定が必要です。
4:つながる事柄を設定できていない
KGIとKPIは関連性があるべきもので、関連性のないKPIを設定してしまうと、まったく効果のないものとなってしまいます。
そもそも関連性のないKPIの設定をしてしまう場合もありますが、KPIを具体的すぎる行動目標にして、KGIとかけ離れてしまう場合もあります。また、KGIと関連性はあっても、業務と関連性のないものであれば効果が期待できないため、注意しましょう。
5:対象期間が定まっていない
対象期間が定まっていないKPIは、KPIとして機能しません。なぜなら、KPIが日々の業務に紐づかず、後回しになってしまい、社員がKPIに対して取り組まないまま、時間だけが過ぎていくことになるからです。そのため、KPI設定と合わせて必ず対象期間も検討するようにしましょう。
KPIを使用した人事での例5つ
人事では、人材採用や人材育成など業務の幅が広いため、様々な領域でのKPI設定があります。しかし、営業やマーケティングなどと比べると、明確かつ定量的に設定することが非常に難しい部門の1つでもあります。
ここからは、そのような人事という業務において、その領域ごとに、適切なKPI設定の例を紹介していきます。
1:企業全体と人事部門のKGI
まず前提として、人事部門のKGIは企業全体のKPIであるという認識をもっておくことが非常に大切です。よって、人事部門は独自にKGIを設定してはいけません。人事部門は企業の一部門に過ぎないのです。
つまり、企業全体のKGIを細分化したKPIが、人事部門のKGIとなります。この認識をもったうえでKGIの設定を行い、そこからKPIを設定していきましょう。
2:人材採用での例
人材採用は、人事の業務の中でも定量で測りやすいため、比較的KPIが設定しやすい領域です。人材採用でよく設定されるKPIの例は下記の通りです。
・採用人数
・応募者数
・内定(辞退)数
・一人あたりの採用コスト
・離職率/定着率
・入社配属後一定期間後の本人/上司の満足度評価
3:人材育成での例
人材育成は、企業の利益を向上させるために非常に重要なものです。そのような人材育成を戦略的に行うには、KPIの設定は欠かせません。人材育成でよく設定されるKPIの例は下記の通りです。
・一人あたりの研修時間
・一人あたりの研修コスト
・研修満足度
・スキル保有人材数/増加率/増加数
・研修の受講率
・研修対象者の評価推移
4:人事部門での例
人事部門自体でよく設定されるKPIの例は下記の通りです。
・一人あたりの売上
・一人あたりの利益
・間接人件費比率
・間接部門人員数/比率
・一人あたりのコスト
・一人あたりの福利厚生額
5:人材配置や管理での例
人材配置や管理でよく設定されるKPIの例は下記の通りです。
・配属に関する本人/上司の満足度
・部署別残業時間数
・部署別有給消化率
・部署別離職率/定着率
・管理者比率
・平均勤続年数
KPIの知識を深めよう
KPIは、組織の最終目標の達成のために非常に重要なもので、なくてはならない指標です。そのため、KPIについて理解を深め、適切なKPIを設定する必要があります。
この記事を参考に、適切なKPIの設定をしてみましょう。