PEST分析を行う際の手順やコツを解説|活用に成功した企業を紹介
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また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2021年08月25日
更新日:2024年06月24日
PEST分析とはどのような分析手法のこと?
PEST(ペスト)分析とは、外部の環境が企業に与える影響について予測するための分析手法です。政治(politics)・経済(economy)・社会(society)・技術(technology)の4つの要素から現在・将来の影響について分析します。
PEST分析を活用することで、マクロ環境が事業にどのような影響を与えるかを探ることが可能となります。
PEST分析の3つの必要性
ここからはPEST分析の必要性について解説していきます。「事業の成否はマクロ環境へ依存しているため」を始めとした3項目をピックアップしていきます。
PEST分析の必要性についてご興味がある方は、参考にしてください。
1:事業の成否はマクロ環境へ依存しているため
事業の成否は、マクロ環境(macro environment)から中長期的に影響を受けます。業界の動向や自社の収益性について分析するためには、世の中全体の変化を把握する必要があるのです。
例えば、消費税増税の影響で消費が減ったり、駆け込み需要が発生したりします。そのため、マクロ環境をもとに戦略目標を立てることが効果的です。
2:市場に隠れたリスクやチャンスを発見するため
PEST分析を行うことで、数年後以降の世間のトレンドについて先見の明を持つことができます。市場に隠れたリスクやチャンスを発見し、仮説を立てたり、模擬演習をしたりすることができるのです。
実際にPEST分析を行う際は、各分野の外部環境に関わる情報を機会と脅威の二項目に分けます。将来について予測することで、今何をすべきかを組織全体で考えることができるでしょう。
3:経営判断を素早く下すため
マクロ環境を分析することで、他者が気づく前にチャンスやリスクを把握できるため、経営判断を素早く下すことができます。例えば、今後成長が見込まれる市場に素早く進出でき、衰退している市場からは手を引くといった判断を下すことが可能です。
経営判断が遅れてしまうと、潜在顧客を失ってしまう可能性があるため、素早く外部環境に適合することが大切となります。このように、PEST分析を通して競合企業との差別化ができるのです。
PEST分析に使われる手法
この章では、PEST分析における内部環境分析・外部環境分析の違いについて簡単に解説します。それぞれの分析手法によって対象となるツール・進め方が異なるため、注意しましょう。
内部環境分析とは
内部環境分析とは、自社の強み・弱みについて調査する手法です。SWOT分析におけるStrength(強み)とWeakness(弱み)が内部環境分析の一例となります。
他にも、製品分析・生産力分析・営業力分析・技術分析も含まれているのです。製品分析を行う際は、利用者がどのようにして自社の製品を使っているかを定量的に分析します。
外部環境分析とは
外部環境分析とは、業界の動向や世間のトレンドといった自社ではコントロールできない事柄を把握・分析する手法です。具体的には、マクロ環境分析(PEST分析)と、市場や競合に関わるミクロ環境分析があります。
マクロ環境分析の場合は、環境の変化が事業内容にどのような影響を与えるかについて分析するのです。ミクロ環境分析はSWOTという枠組みを用いて、強みや弱みだけでなく企業の外部に存在する機会や脅威について分析します。
PEST分析を行うための3つの手順
ここからは、PEST分析の手順とフレームワークについてご紹介します。まずは目的を明確にしてから、情報収集をすることが大切です。その後で集めた情報をフォームに整理していきます。
1:目的を明確にする
まずは、PEST分析の目的を明らかにします。PEST分析の目的は、中長期的な視点でマクロ環境について調査・分析し、自社のマーケティング戦略に活用することです。
そのため、データの変化について分析して、今後の機会をどのように掴みに行くか・脅威に対してどのように対策するかといった戦略を立てる必要があります。情報の収集や整理にとどまらず、仮説や戦略立てに活かすことを念頭に置きましょう。
2:PESTの各分野から情報を収集する
次に、政治・経済・社会・技術の各分野から、自社に関連すると考えられる情報を収集することも必要です。国内の最新情報であればe-Statといった政府の情報窓口やニュースサイトから採用することをおすすめします。
政治の分野では、消費税の増税や条例の制定、経済の分野では景気の動向や株化の変動などについての理解が深まる点がメリットです。社会の分野では人口ピラミッドや自然災害、技術ではIT業界の技術開発や改革といった項目もあります。
3:集めた情報を整理する
最後に、各分野から集めた情報を表にまとめて整理することがおすすめです。ExcelやPDF、PowerPointのプレゼンなどを用い、表に分けて記載することで、全ての情報が一目で分かるようになりますPowerPointにまとめる際は、色分けがおすすめです。
また、4つの分野を機会と脅威にそれぞれ分けることもできます。少子高齢化のように、事業によっては機会と脅威の両方になり得る事象も存在するため、慎重に項目分けを行うと良いでしょう。
PEST分析を行う際の3つのコツ
この章ではPEST分析を行う3つのコツをご紹介します。まずは項目ごとに、IT業界・建設業界・自動車業界・不動産業界などの動向を確認する必要があるのです。
食品業界・製薬業界・飲食業界・コンビニ業界などについても確認しましょう。その後、ポストコロナのマクロトレンドについて仮説を立て、マーケティング戦略に活用していきます。
1:PESTの項目ごとに将来動向をチェックする
PEST分析を行う際は、項目ごとに2022年以降の動向について確認しておくと良いでしょう。動向を確認することで、仮説立てをして今取り組むべき課題は何か考えることができます。
具体例としては、国全体の経済状況や社会情勢について調べることで、今後特定の産業が成長するのか・衰退するのかについて予測することが可能です。また、仮説をもとにシミュレーションをすると、外部環境が今後自社に及ぼすであろう影響について調べることができます。
2:中長期的な将来のマクロトレンドについて仮説を立てる
一時的なトレンドだけでなく、2025~2030年を目処にした中長期的なマクロトレンドについて仮説を立てることも大切です。なぜなら、長期にわたる需要が見込め、事業の将来性を確保することができるからです。
例えば、中長期的には、自然エネルギーの開発が進み、必要な技術が変化する可能性があります。他にも、自然災害が増えることにより、災害対策の需要が見込めるのです。したがって、駆け込み需要のように一時的なものではなく、中長期的視点で未来予測をする必要があります。
3:マーケティング戦略に活用してマクロ環境変化に適合させる
マーケティング戦略の一環としてPEST分析を用い、マクロの環境変化に適合させましょう。そうすることで、顧客のニーズへ対応しやすくなり、競合優位性を保つことが可能です。
例えば、Googleなどはマクロ環境変化に適切に対応し、成長を遂げたと言えます。
PEST分析の具体的な4つの活用方法例
PEST分析をいつ使うのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。PEST分析は、製造業(メーカー)やIT業界の企業が海外進出をする際や、国内事業の分析を行う際に多く使用されます。ここでは、市場や業界別に分析のやり方について解説します。
1. 海外市場へ進出する場合
海外市場へ進出する際にPEST分析を用いることで、その国・地域に潜むビジネスチャンスを見つけたり、リスクを予測したりすることが可能です。
例えば、進出する国を選ぶ際に、人口動態の変化・所得の変化について把握することで購買力の予測ができます。少子化が進んでいる国であればヘルスケア業界の成長が見込めるでしょう。PEST分析は海外進出する際のマーケティング戦略として重要です。
2:国内事業の分析に活用する場合
国内事業に関わる2020年・2021年のPEST分析は、コロナショックによる影響を考慮しましょう。アフターコロナにおける社会の変化についても調べることで、今後の事業の方向性を掴むことができます。
政治分野では、検疫の法律が改正され、経済分野では飲食業界や小売業界が休業や時間短縮をしています。社会面では、オリンピックが延長となり、ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンなどの娯楽施設が休業となり、旅行業界が打撃を受けたことでしょう。
技術分野ではテクノロジーの進展・通信業界の成長が見られます。ビジネスや農業ではAIやドローンの利用も増えており、コンビニ業界はUberを活用してコンビニからの宅配を行なっています。
出典:検疫法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000201
3:携帯電話業界へ活用する場合
携帯電話業界へ活用する場合、NTTデータ・NTTドコモ・NTT西日本といった企業の例を参考にすることをおすすめします。NTTデータのサイトから分かることは、生命科学の分野に力を入れていることでしょう。
また、政治面では国土交通省によるMaaSという取り組みを行われています。さらに、携帯電話を用いたテレワークは、働き方改革への貢献とともに今後この業界の成長が見込める技術的要因であると言えるでしょう。
4:災害後に活用する場合
東日本大震災といった災害後に活用する場合は、二次災害に備えて自治体などから情報収集をする必要があります。
損保業界(損害保険業界)や生命保険業界にとって、災害は脅威・機会の両方になるのです。近年では、台風や地震などが増えたことにより防災への意識・保険事業の需要が高まっています。
クレジットカード業界は、災害後に利益が減少してしまう傾向にあるため、災害は脅威でしょう。これは、代替として現金が用いられることが理由となります。
対策としては、支払い猶予といった措置を取ったり、電力業界やエネルギー業界と協力して電動化を促したりすることが大切です。
PEST分析に成功した企業7選
この章では、PEST分析に成功した企業をご紹介します。これらの企業をもとにPEST分析の使い方や分析手順の理解を深め、業界分析に役立ててみてください。業界における消費動向の変化にも目を向けることで、より考察を深めることができるでしょう。
1:日本コカ・コーラ株式会社
日本コカ・コーラ株式会社は、SDGsにおける「エコ」の重要性に着目しました。グローバル社会の動きが日本に一般化していなかった2009年頃に、エコに着目していたことから、PEST分析における5年後・10年後の中長期的な視点を取り入れていると言えます。
実際に、環境問題の解決に力を入れている「い・ろ・は・す」は、プラスチックゴミの削減に貢献しています。国内産地にこだわっている点も魅力です。このように、マクロトレンドの仮説立てを適切に行なったことから、環境に優しい水というポジショニングに成功したと言えます。
2:日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフト株式会社は、PEST分析において社会的変化・技術的変化への対応に注力しています。社会的には、デジタルトランスフォーメーションによりオンラインでの活動が普及したため、多くの需要が見込めるという側面があったのです。
また、日本マイクロソフト株式会社はDX推進を通した業務効率化にも貢献しています。実際に、東南アジアで日本の商品の需要が見込まれることから、日立製作所とともにワークマンが扱っているアパレル商品などの発注の自動化という取り組みを行っているのです。
3:インテル株式会社
インテル株式会社は、PEST分析を活かして国際化に力を入れています。実際に、イギリスや中国、タイ、ラオス人民民主共和国といった国に進出しているのです。また、ソニー(SONY)などの企業との連携も行なっています。
国際化に力を入れた政治的要因としては、米国の政府が企業の世界的な進展をサポートしていることが機会と脅威の両方の側面があると言えます。経済的には、発展途上の市場が伸びていることが進出の機会であると言えるのです。
社会的側面では、富野分配が増えたことは差別型マーケティングをする上で機会となるでしょう。技術面では、スマートフォンの利用が増えていること・競合が存在することが、コンピュータの販売に注力しているインテル株式会社にとって、脅威となり得ます。
4:Google株式会社
Google株式会社は、インターネットが1990年代から消費者へ普及したという社会の変化、そしてインターネットが低価格となったという技術革新に伴う変化に対応しています。
実際に1990年から1995年頃にかけてインターネットが普及し始め、1996年以降は光回線が誕生したことからインターネットが安くなりました。Googleが検索サービスを日本語に対応させたのが2000年頃です。
日本ではインターネット普及率が2019年頃には約94%であり、スマートフォンの利用率が高いことから、Pixel 5といった商品の販売に至ったと言えます。
中国においては、政府との論争の末、2010年頃に撤退を決めたGoogle株式会社ですが、近年再参入を試みていると言われています。
5:楽天グループ株式会社コーポレートサイト
楽天グループ株式会社は、スマートフォンを通して購買を行う方が増えている社会背景から、Eコマースに注力しています。コロナ後も携帯電話の普及とともにECコマース業が伸びることが予測できるでしょう。
PEST分析や3c分析に基づくと、今後楽天の脅威となるのはアメリカに本社を置く競合他社のAmazonであるため、コーポレートサイトを通して差別化を試みています。
6:Facebook.Inc
FacebookのPEST分析における技術的な面では、5Gの推進が機会となっています。実際にFacebookが運営している非営利団体は、5Gを推進するため新しいグループを結成しているのです。
また、Facebookを通した団体の広報活動も可能となっています。行政機関の例や企業例としては農林水産省・農業経営者netや富士通株式会社のホームページがあります。今後は人材業界と連携して、ネット上での採用活動がより積極的に行われることが機会となり得るでしょう。
Facebookの問題点・デメリットとしては、若年層がLINEやInstagramといった他の媒体に移行していることが挙げられます。写真・画像ではなく文章主体であるため、投稿ネタを考えることが難しいといった理由があるのです。
7:Amazon.com Inc
Amazonは、経済的負担を減らしたいという利用者のニーズに答えるため、プライム会員であれば全商品が送料無料という制度をとっています。
技術面では、競合との優位性を保つため、ヤマト運輸といった運送業界・物流業界を用いた配送だけでなく、ドローンなどのロボットを用いた配送も検討しています。コロナ影響で在宅の時間が増えた今、オンライン店は進出の機会が多いと言えます。
PEST分析を活用するときの4つの注意点
ここからはPEST分析を活用するときの注意点について解説していきます。「推移や変化を読み取ることを忘れない」を始めとした4項目をピックアップしていきます。
PEST分析を活用するときの注意点についてご興味がある方は、参考にしてください。
1:推移や変化を読み取ることを忘れない
PEST分析を行う際は、定義を理解して情報を整理するだけでなく、データの推移や変化を読み取ることを忘れないようにしましょう。推移や変化を読み取ることは、トレンドを深く理解する上で重要です。応用情報技術者などの資格を活かすことができます。
グラフを読み取る際は変化の割合についても調べることで、今後どのような変化が起こるかを予測することが可能です。また、これまでのトレンドが変化した経緯についても調べることで、同じような事象が起こり得るかについても考察することができます。
2:分析したリスクを解消する手段を考える
PEST分析を通して政治的要因・経済的要因などを分類した後は、分析したリスクを解消する方法を考えることも大切です。
分析のゴールは自社のマーケティングに役立てることであるため、統計の概要・まとめ方を理解するだけでは無意味となってしまいます。誰が、どのようにリスクを解消できるのかを見極める必要があるのです。
3:内部業務の効率化のために使わない
PEST分析は、内部業務の効率化のために使うのではなく、今後の施策を打ち出すために使います。業務効率化を進めるのは、シンクタンクやコンサル業の仕事です。
そのため、4Pや5フォースなどの手法と同様に、マーケティング手法の1つとして活用しましょう。
4:ユーザーインタビューの分析に使わない
PEST分析はテンプレートに従って行い、ユーザーインタビューの分析には使わないようにしましょう。外部の変化を対象としているため、内部環境の分析や小規模のユーザー分析には適していません。PESTの必要性を理解し、フォーマットに合わせることが大切だと言えます。
PEST分析を理解してマーケティングに活用しよう
結論、PEST分析への理解を深め、マーケティングに活用することで、競合優位性を保つことができるでしょう。PEST分析を行う結果、国内事業を発展させるだけでなく、海外進出を成功させることが可能となるのです。
注意点としては、推移・変化の分析を忘れないこと、そして脅威を解消するための手段を考える必要があります。日本コカ・コーラ株式会社や日本マイクロソフト株式会社のような成功事例を参考に、PEST分析を行いましょう。