プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
用語・フレームワーク
プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介

Share

Facebook
Twitter
はてな

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介

記載されている内容は2021年08月25日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

初回公開日:2021年08月25日

更新日:2022年03月03日

本記事では、マーケティングの考え方でよく取りあげられる、プロダクトアウトとマーケットインについて、各々の定義、メリットとデメリット、成功事例をあげて説明しています。さらに、この2つを対比させるのではなく、バランスを取って融合することの大切さも説明しています。

プロダクトアウトの一般的な定義とは

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

マーケティングの業務ではプロダクトアウトとマーケットインという言葉をよく聞くでしょう。この2つの言葉の定義は何なのでしょうか。

プロダクトアウトの一般的な定義としては、提供側の発想で製品を市場に投入する活動をいいます。開発開始から生産、販売まで提供側の判断で実施されます。

マーケットインとの違い

これに対してマーケットインとは、市場や消費者などの買う側が必要としていると想定されるものを提供する活動をいいます。

その製品を投入すれば「売れる」はずであると判断した根拠が、プロダクトアウトでは提供側に、マーケットインでは市場側にあるというところが違いといえます。

プロダクトアウトのメリット4つ

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

プロダクトアウトとマーケットインは、上記の通りどちらが「判断」するかに違いがありますが、ではそれぞれのメリットとデメリットはどのように異なるのでしょうか。まず、プロダクトアウトのメリットを取り上げます。

プロダクトアウトのメリットは、企業の得意分野で力を発揮できる、独自性のある製品が開発されやすい、コストを抑えやすい、市場調査や売上分析を必要としないの4つがあげられます。

1:企業の得意分野で力を発揮できる

まず、企業の得意分野で力を発揮できるということがあげられます。プロダクトアウトは、提供側である企業が判断して、自分たちの「作りたいもの」「売りたいもの」を作って売るということに他なりません。

企業の「作りたいもの」「売りたいもの」は、「自社が得意としているもの」であることが多いため、すなわちその企業の「得意分野」で力を発揮できることになります。

2:独自性のある製品が開発されやすい

次に、独自性のある製品が開発されやすいことがあります。上記の通り、自社の得意分野で勝負をすることは、その分野に他社よりも精通しているということに他なりません。その結果他社にはないアイデアが発出されることもあり得ます。

すなわち、他社が真似したくても困難な、独自性のある全く新しい製品が開発されやすいということがいえます。

3:コストを抑えやすい

さらには、コストを抑えやすいこともあります。自社の得意分野ということは、その分野に投入している製品も多いと考えられるでしょう。従って、全くの新規からの開発と異なり、これまでの製品の応用開発でできる場合も多いため、開発コストを抑えることができます。

また、製造装置や販売のための人的資源も既存製品のものを活用できることもあり得るため、よりコストは抑えやすくなります。

4:市場調査や売上分析を必要としない

市場調査や売上分析を必要としないところもメリットです。あくまでも販売側の判断で市場投入するため、「何が求められているのか」という市場調査や、「どの程度売れるのか」という売上分析が前提となっていません。この部分にかかる時間やコストを削減できるのもメリットです。

プロダクトアウトのデメリット

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

では逆に、プロダクトアウトのデメリットはどういうことが想定されるでしょうか。デメリットとしては、売上に繋がらない可能性がある、売れなかった場合の見直しが困難の2つがあげられます。

売上に繋がらない可能性がある

プロダクトアウトは提供側の判断で市場投入されます。そのため、実際には市場に求められていないものを出してしまうということが起こりえます。

提供側の「売れるはず」という自己満足に近い判断で市場投入してしまい、実際は市場がそのような製品を求めていない場合は、販売が伸びず売上に繋がらないという事象が発生してしまうでしょう。

売れなかった場合の見直しが困難

さらに、売れなかった場合の見直しが困難ということもデメリットです。プロダクトアウトは自社の得意分野への市場投入が多いことで、売れなかった場合の原因分析が逆に困難になってしまいます。

得意分野ということは、既存製品は成功していることが多いため、マーケティングや価格、販路など、どこに原因があるのかを分析する際に、既存製品の成功体験が逆に邪魔してしまうことになりかねません。

プロダクトアウトの成功事例

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

では、プロダクトアウトの成功事例はどのようなものがあるのでしょうか。よく知られている例としては、AppleのiPhoneや検索エンジンのGoogle、SONYのウォークマンなどがあげられます。

ウォークマンは、携帯音楽プレーヤーの代名詞的に語られていますが、これはSONYの登録商標です。屋外へ音楽を手軽に持ち出すということに革命を起こしたプロダクトアウトの製品といえるでしょう。

マーケットインのメリット4つ

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

次に、マーケットインのメリットについて取り上げてみます。マーケットインは売れるはずという根拠が市場側にあるため、以下のようなメリットがあります。

売上の予測がしやすいこと、開発期間が短期で済むこと、具体的な数値目標を立てやすいこと、顧客のニーズに合致しやすいことの4つです。

1:売上の予測がしやすい

マーケットインの場合、何がどの程度売れそうなのかという市場調査をあらかじめ行い、その結果を基に製品の市場投入を行うことが一般的です。そのため、市場投入前に自社の売上の予測を立てることは比較的容易です。

2:開発期間が短期で済む

マーケットインは、市場が求めているものが、すなわち製品の開発目標となります。検討を開始する前に開発目標が非常に明確になっているため、目標設定に時間がかからず、開発期間は短期で済むことが多くなります。

3:具体的な数値目標を立てやすい

上記の通り、マーケットインではあらかじめ市場調査を行うことが多いため、売上予測や開発目標設定が容易になります。すなわち、自社のシェアを踏まえた売上目標や製品性能などの数値目標を立てやすいということもメリットの一つです。

4:顧客のニーズに合致しやすい

さらに、市場調査では顧客が何を求めているのかを調査することも一般的に行われるため、顧客ニーズに合致したものを市場投入しやすいというメリットもあります。市場調査で判明した顧客ニーズが、すなわちマーケットインで市場に投入するものとなります。

マーケットインの4つのデメリット

プロダクトアウトとマーケットインとの違い|各メリットデメリットや事例も紹介
※画像はイメージです

では、マーケットインのデメリットはどのようなものがあるでしょうか。マーケットインは、市場調査の結果ありきのところがありますので、それに関わる部分がデメリットになります。

競合他社と似た製品になりやすいこと、革新的な商品は生まれにくいこと、大ヒットは難しいこと、企業イメージに主体性がなくなることの4つがデメリットとしてあげられます。

1:競合他社と似た製品になりやすい

先に記述した通り、マーケットインは市場調査の結果ありきのため、自社だけでなく競合他社の市場調査結果も似たような結果になることが多いと想定されるでしょう。

このため、新製品を市場投入しても目標とするところは同じであることから、競合他社と似た製品になりやすいというデメリットがあります。

似たようなアイデアになることが多いため、自社の開発が少しでも遅れた場合は、他社が先に製品を市場投入してしまう、すなわちアイデアをとられてしまうということも起こりえます。

仮に自社が他社に先駆けて新商品を投入できたとしても、競合他社がそのアイデアを踏まえて、さらに改善した製品を投入してくるということも十分に考えられるでしょう。

2:革新的な商品は生まれにくい

市場調査を基に製品を市場投入するマーケットインでは、これまでにないような革新的な商品は、顧客の頭の中には浮かんでいないため、そのような製品のアイデアが出てくることはありません。

すなわち、上記のウォークマンのような革新的な商品は、マーケットインからは生まれにくいといえます。

3:大ヒットは難しい

さらに、マーケットインのデメリットとしては、大ヒットは難しいということがあげられます。革新的な商品が生まれにくいということは、なかなか爆発的なヒットに繋がりにくいというところになってしまいます。

また、似たような商品を競合他社も出してくるため、シェアの奪い合いになってしまい、自社にとっては大ヒットとならないことも十分にあり得ることです。

4:企業イメージに主体性がなくなる

マーケットインを追求することで、企業イメージに主体性がなくなることもデメリットの一つとして考えられるでしょう。

顧客のニーズを基に製品を市場投入するため、企業としてあるいは製品としてそれまで持っていたイメージと異なる製品となってしまい、企業イメージの主体性を損ねてしまうことがあり得ます。

また、競合他社も似たような製品を出してくることで、自社製品の特徴が薄れてしまうということも考えられるでしょう。

マーケットインの成功事例

マーケットインの成功事例としては、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは代表例として、iPhoneが出た後のスマートフォンと缶コーヒーの2つをあげることができます。

iPhoneまでのスマートフォンは、基本本体についている小さなキーボードで入力していました。しかし、iPhoneが登場したことでタッチパネルで入力する方法が知ります。このような入力方法を市場が求めているということが判明しました。

その後の多数の市場参入は、まさにマーケットインの成功事例でしょう。

缶コーヒー分野では、朝の忙しい時間帯にゆっくりとコーヒーを入れることはできないが、本格的なものは飲みたいという顧客ニーズが市場調査から浮かび上がり、それにあわせた商品を市場投入することで、ヒットに繋がっています。

プロダクトアウトとマーケットインどちらが良いのか?

プロダクトアウトとマーケットインのメリットとデメリットを取り上げて解説してきました。では、どちらの方がマーケティングを考える上では良いのでしょうか。結論的には、どちらが良いというものではありません。

向かう方向が逆のように見えるため対比して考えられがちですが、決して対立構造にあるものではなく、マーケットニーズに対する応え方を異なった側面から見ているというのが正しい見方でしょう。

どちらが良いかはケースバイケース

マーケットインは、市場調査などから顕在化したユーザーニーズに真っ直ぐ応える手法といえます。

これに対してプロダクトアウトは、顕在化はしていないものの、こういうものがあれば便利、あるいは嬉しいというようなユーザーが気付いていないニーズを掘り起こし、ユーザーに気付かせてあげるという潜在的なニーズに応えるものという見方ができるでしょう。

このように、プロダクトアウトとマーケットインは、いずれもユーザーニーズに応えるといえます。ニーズが顕在化しているか潜在化しているかの時と場合で、どちらが良いかはケースバイケースであるといえるでしょう。

対比ではなく2つのバランスが大切

上記のように、プロダクトアウトとマーケットインはケースバイケースです。それとともに、対比して考えるのではなく、バランスを取りながら融合して考えることが大事だといえます。

こういうものがほしいという顕在化しているニーズに応えながら、こういうものがあるといいのではないでしょうかという潜在化しているニーズに気付かせてあげます。

このバランスと融合を考えたマーケティングを行うことで、大きなヒットとなる良い製品を開発することに繋げることができるでしょう。

先にあげたiPhoneなどは、タッチパネルの便利さという潜在的ユーザーニーズを掘り起こしながら、通信手段がより便利に使えると嬉しいという顕在的ニーズにも応えたことで、大きなヒットに繋がったといってもよいでしょう。

プロダクトアウトを理解してマーケティングに活かそう

マーケティングを考える上では、市場調査から浮かび上がるマーケットインの手法に注目しがちです。

しかしながら、これまで説明してきたようにプロダクトアウトの考え方による潜在的ユーザーニーズに対しても応えていくことで、より良い製品の開発につながり、大きなヒットになる可能性が高くなります。

より良い製品開発のためにプロダクトアウトをよく理解して、その手法もマーケティングに活かしていきましょう。

Share

Facebook
Twitter
はてな

RELATED