差別化戦略のメリット・デメリットとは?成功事例をあげて詳しく説明
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初回公開日:2021年08月25日
更新日:2022年03月03日
差別化戦略の意味とは?
一般的な意味での差別化は「ほかのものとの違いを際立たせること」ですが、マーケティング的な意味での差別化は「価格以外の部分で商品やサービスに際立った特徴を持たせ、競合他社のものとの違いをアピールすること」という意味になります。
そのため差別化戦略とは、他社との明らかな特異性や差別化を作り出すことで、競争優位を築く戦略を指すのです。
アメリカの経営学者が提唱した3つの基本戦略の1つとして知られており、顧客が魅力的だと価値を認識したものをブランド力として追及するやり方になります。
これによって高くても売れる仕組みを作り出して、競合他社が簡単に模倣できない特異性を活かした経営が可能となります。
差別化戦略で重要な競争戦略3つ
マーケティングや経営戦略を考えるなかで、企業は競合他社に埋もれないためにも、差別化戦略をはじめとした基本的な戦略を理解しておく必要があります。
特に先述したマイケル・ポーターが提唱した3つの基本戦略や競争戦略に関しては、必要に応じて複数の戦略を組み合わせて対応していかなければいけません。そのため差別化戦略だけではなく、ほかの戦略についても知識を持っておくことが望ましいです。
1:差別化戦略
差別化戦略は、自社の商品やサービス面で競合他社にはない特徴や特異性をアピールする戦略です。差別化の源泉は様々なものが挙げられていますが、消費者側から特徴や特異性に価値があると認識されなければいけないところが重要になります。
そうして業界内での独自のポジションだけではなく顧客価値も高まっていくことが、差別化戦略の大きなポイントです。
2:集中戦略
集中戦略とは、特定の地域や消費者など、特定の市場に経営資源を限定して経営を行っていく戦略です。
差別化やコストリーダーシップを推し進める効果があり、特定の顧客層をターゲットとしていることから、資本や規模が小さい会社であっても大企業と対抗できる戦略として知られています。
3:コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略は、競合他社よりも安価な商品やサービスなど、低価格を武器として幅広いターゲットに売り込む戦略です。そのため商品やサービスの開発製造、提供時もコストを抑える必要が出てきます。
結果として、安く売っても儲かる仕組みを作り出し、業界内での地位を確立していくことが可能です。
差別化戦略による企業のメリット5つ
差別化戦略を行った企業にもたらされるメリットとしては、まず価格競争から離脱できるという点が挙げられます。またブランド力を向上させることができるので、高い価格であっても購入してもらえる点やブランディングを確立できるという点も大きいです。
ほかにも業界内で地位を確立できる点から得られるメリットもポイントになっており、業績アップにつながる多くの魅力を有しています。
1:価格競争から離脱できる
差別化戦略は競合他社とは差別化された商品やサービスを提供する戦略であり、基本機能やサービス内容は同じであっても、その商品やサービスにしかない価値が認められることになります。
そのため価格に関係なく消費者からは付加価値の方を求められるので、競合他社との価格競争から離脱して商品やサービスの提供が可能となるのです。
2:価格を下げなくても消費者に購入してもらうことができる
価格競争から離脱できるメリットに付随して、価格を下げなくても消費者に購入してもらえるというメリットもあります。
このためコストリーダーシップ戦略などを検討する必要がなくなり、高い価格で販売してもきちんとした利益を確保できる状態になります。その結果、利益率が向上して会社の業績自体を伸ばせるというメリットにつながるのです。
3:他社の新規参入を抑えられる
差別化によって業界で地位が確立されると、同じ業界に新規参入を検討する企業は自社以上の差別化をはからなければならなくなります。差別化には多大なコストがかかる可能性があるため、これは新規参入を躊躇させる要因となります。
このように他社が新規参入しにくい状況が生まれるため、競合他社の増加を抑制できることになります。
4:自社の強みに気づくことができる
差別化戦略を進めるためには、綿密な市場調査を行う必要があります。さらに自社の強みや特徴についても改めて振り返って検討しなければならなくなるため、結果として市場のなかでの自社の強みや特徴に気づくことができるのです。
それらを伸ばして差別化戦略を行えば、営業や広報でも自社の強みを生かした宣伝ができるなど、仕事にも反映させやすくなります。
5:ブランディングを確立できる
差別化戦略をはかる企業の多くは、付加価値についてわかりやすくするために商品やサービスを「ブランド化」しています。ブランド化には、わかりやすくするだけでなく、消費者からの認知度の向上や新規顧客開拓、安定した顧客の確保などの効果もあります。
このようにブランディングを確立できるというメリットは、消費者や顧客の安定化や新卒採用時のPRに活用できるなど様々な効果が期待できます。
差別化戦略による企業のデメリット4つ
差別化戦略にはメリットだけでなく、デメリットもあります。例えばブランディングや戦略に失敗してしまうと顧客離れにつながる点や、常に市場調査などを続けていかなければいけないのでその労力や負担が大きい点などです。
ほかにも競合他社に模倣されてしまう懸念もあるため、デメリットも踏まえてどのように差別化戦略を実行するのか検討する必要があります。
1:顧客ニーズの分析・把握に労力が割かれる
差別化戦略を成功させ続けるためには、顧客のニーズを分析・把握するための調査が不可欠です。
そもそも差別化戦略はただ差別化するのではなく、特定の顧客のニーズをきちんと満たせる内容でなければいけません。しかし、自社の特異性や特徴がきちんとニーズに対応できているのかどうかは、その都度調査しなければわからないのです。
特に差別化戦略を始めたばかりの時期は、戦略の成否を分けるポイントとなっています。
2:戦略に失敗すると顧客を失いかねない
差別化戦略は成功すれば大きな利益を得られる反面、失敗してしまうと顧客を失って大きな損失につながるリスクがあります。
特に価格に関する部分は、どんなに顧客のニーズを満たせていても、その付加価値分の価格をあげてしまうと顧客のニーズに反してしまう可能性が出てくるのです。そうすると顧客に受け入れられず、失ってしまう失敗例につながりかねません。
このように市場調査やニーズの分析・把握に失敗すると、顧客や利益がなくなってしまうというデメリットにつながります。
3:競合他社が模倣する場合がある
差別化戦略で注意しなければいけないのは、自社の商品やサービスを競合他社に模倣される可能性がある点です。
差別化した商品やサービスは、その特異性や特徴によっては競合他社が模倣できる場合もあり、類似したものを販売・提供されてしまうと、せっかくの差別化が意味を失ってしまいます。そうすると価格競争にも参加せざるを得なくなるので、損失が大きくなるのです。
4:競合他社に顧客が流れる可能性がある
価格を上げるなど差別化戦略に失敗したり、競合他社が模倣するなどのデメリットを被ったりした結果として、顧客が競合他社に流れてしまうというリスクが考えられます。
戦略に失敗すると顧客を失ってしまうリスクがあることは前述しましたが、失うだけではなく競合他社に流れてしまう可能性が高いです。基本機能が同じなら、価格が高いものよりも安いものを顧客が選ぶのは当然の結果だと言えます。
差別化戦略で押さえるべきポイント4つ
差別化戦略を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえて戦略を検討する必要があります。特にターゲットとする顧客のペルソナとストーリーの設定、顧客ニーズの分析や自社及び競合他社の分析は、差別化戦略を成功させる重要な鍵です。
ここからは、それぞれのポイントについて解説していきます。
1:ペルソナとストーリーを設定する
ペルソナはターゲットとなる人物像、ストーリーは消費者や顧客の心を動かすための手法のことを指します。
差別化戦略ではペルソナを設定することはもちろん、商品やサービスの経緯、自社の歴史などのストーリーを設定することで特異性や特徴を引き出しやすくなるのです。特にペルソナの設定は商品やサービスのターゲティングでもあるので、的確な設定が必要となります。
2:顧客ニーズを分析し把握する
差別化戦略で欠かせない重要なポイントが、顧客ニーズの分析・把握です。顧客がどのような商品やサービスを求めているのか、何に対して価値を感じそれをどれくらい重視しているのか、などをアンケート調査や市場調査などで幅広く情報を集めて分析・把握します。
また商品やサービス利用の際に顧客が自社とどこの競合他社を比較しているのか、という情報も重要です。これらの情報を顧客目線で収集・分析しながら、自社の強みと照らし合わせた上で、差別化が可能かどうか検討していきます。
3:自社を分析し強みや弱みを探す
自社の商品やサービスの分析を行い、アピールポイントや内容の価値から自社の強みや弱みを把握することも差別化戦略において押さえるべきポイントです。
自社の強みや弱みを理解しておけば、市場調査をするなかで自社が市場に打ち出せる独自性や特異性があるかを把握でき、市場で求められているものを提供できるかどうか判断しやすくなります。
また強みを特性のレベルまで引き上げられるか、という分析にも活用できます。そうして、差別化をより顧客や市場にアピールしやすくなるのです。
4:競合他社を分析し強みや弱みを把握する
自社の分析だけではなく、競合他社の強みや弱みを分析することで、差別化できるポイントを見つけることができます。そもそも差別化は他社と比較しなければいけないので、競合他社の分析は差別化戦略をする上で欠かせないポイントです。
競合他社の弱みの部分で独自性をアピールする、強みとなっている部分での差別化は避けるなど、差別化のポイントを見極める材料にできます。
差別化戦略の成功事例5つ
ここからは、差別化戦略の成功事例を5つご紹介していきます。差別化戦略について悩んでいる方は、ぜひ成功事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。
1:「健康志向」で差別化を図った大手コンビニチェーン
コンビニ業界は様々な差別化を図っていますが、その中でもとある大手コンビニチェーン店で健康志向にフォーカスを当てた差別化に成功しています。
例えば、販売している製品を全て合成着色料不使用、また糖質やカロリーを抑えたブランパンシリーズをはじめとした、健康志向の野菜や弁当の提供などを実施した店舗を出すなどして差別化をしています。
これにより健康志向を意識する層から高い支持を得て、健康に配慮したコンビニチェーンとしての地位を確立しています。
2:「高級タオル」のイメージで差別化を図った大手タオルメーカー
とある大手タオルメーカーは高級タオルというブランドイメージを確立したメーカーであり、贈答品として利用されることも多いタオルです。「安心・安全・高品質」を徹底することで、競合他社との差別化を図っています。
これは、ないものを付加価値にするのではなく、元々あるものを磨いた結果によって業界内での立ち位置を確立した差別化戦略の成功事例として評価されています。
3:ファストよりも「手作り」を重視した大手バーガーチェーン
ハンバーガー業界で差別化戦略を成功させたとある大手バーガーチェーンの特徴は、高級志向・斬新なメニュー・多様なニーズに対応したメニューの3つです。
競合他社ほど派手なプロデュースをするのではなく、手作りによるおいしさや国産素材にこだわっているところ、顧客ニーズの把握と対応など、他社とは異なる点を追求したことが差別化成功の鍵となっています。
4:「非顧客層」をあえて狙った大手ゲームメーカー
一般的に差別化戦略では顧客となる層をターゲットとするのですが、とある大手ゲームメーカーでは敢えて非顧客層を狙いました。
世界のユーザー全てをターゲット層としており、ゲーム愛好家だけではなく、任天堂IPに触れるユーザー全てを顧客層として取り込んでいます。
これはゲーム機だけではなくビジネスや映画、テーマパークとの協業をすることで、競合他社と差別化を図れているからこその成功です。
5:「サードプレイス」を作り上げた大手コーヒーチェーン
数あるコーヒーチェーンのなかで、とある大手コーヒーチェーンでは高品質の商品とおしゃれで高級感のある店内環境を差別化のポイントに持ってくるという戦略で成功しています。
心地よい環境(サードプレイス)を提供することで消費者や顧客はその対価を支払い、コーヒーなどの商品による利益以外の利益を生み出しているのです。その結果、サードプレイス自体に大きな価値が生まれ、競合他社と差別化ができています。
差別化戦略の成功事例からみる手法5つ
差別化戦略に成功した企業の事例には、成功につながるいくつかの手法が見受けられます。特にどのような部分で競合他社と差別化をはかるのか、という点は今後差別化戦略を検討している企業に参考になる情報です。
ここからは、成功事例で見られた手法を5つ紹介します。
1:他のブランドとは違う世界観を作り差別化をはかる
コーヒーチェーンのブランドやメーカーはコーヒーの品質など商品での差別化は難しい傾向があります。そのため、大手コーヒーチェーンはほかのブランドでは味わえないおしゃれで高級感のある心地よい空間などの世界観で差別化をはかっています。
ほかのブランドにはない空間や世界観を演出することで、商品だけではなく提供する空間そのものの価値も認められるようになり、それまでのコーヒーチェーン店とは異なる新しいターゲット層を開拓することに成功したのです。
2:独自性のある製品を作り差別化をはかる
競合他社にはない独自性の高い製品を作り出すことができれば、多少価格設定が高くなっても安定した利益が生まれます。このような手法を用いた代表的な例として挙げられているのが任天堂で、競合他社のゲーム機にはない機能や特徴を次々と生み出しています。
また非顧客層も狙った製品開発を行っており、ターゲットを絞っていないからこそ独自性の高い製品を生み出せているということもポイントです。
3:サービス内容で差別化をはかる
競合他社にはない魅力的なサービス内容は、自社の強みやこだわりをアピールできるほか、顧客満足度につながる手法として有効です。大手コンビニチェーンの健康志向に基づいた商品の提供も、そのひとつだと言えます。
ほかにも店舗形態の多様化やサービスの多様化でも差別化をはかっており、似たようなサービスや戦略を行っている競合他社のものを、独自に進化させているところがポイントです。
4:チャネル戦略で差別化をはかる
チャネル戦略とは、商品の流通に関する戦略のことを指します。情報伝達のためのコミュニケーションチャネル・販売経路である販売チャネル・商品やサービスを届けるための流通チャネルを駆使して、競合他社と違う特徴を出すことで差別化をはかることができます。
例えば大手バーガーチェーンの事例では、実店舗での販売のほか、アプリやネットでの注文対応などオムニチャネルによる戦略に成功しています。またプッシュ通知を活用した戦略により、競合他社との差別化をはかっています。
5:価格設定により差別化をはかる
価格設定を競合他社よりあえて高くする手法は、高級ブランドというイメージを利用することで差別化に成功するだけでなく、利益を上げる手法として多くの成功企業で実践されています。
大手タオルメーカーもその1つで、高級タオルとしてのブランド力とそれに見合った価格、そして品質の高さを提供することで差別化に成功しているのです。
またストーリー設定にもこだわりを持ち、かつて窮地に陥っていた状況を組み込んだ世界観を提供することで、価格にも説得力を付加していると言えます。
差別化戦略とは何か理解を深めよう
差別化戦略は競合他社と異なる明らかな特異性や特徴を商品やサービスに組み込むことで、その価値を顧客に認識させ、業界内や市場での地位を確立する戦略です。成功させるためには顧客ニーズや自社・競合他社の分析が欠かせません。
このため成功している企業の手法を参考にしながら、差別化戦略に対する理解を深めて自社で可能かどうか検討することが必要になります。