キャズム理論について|各市場についてや超えるための戦略もあわせて解説
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キャズム理論について|各市場についてや超えるための戦略もあわせて解説

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キャズム理論について|各市場についてや超えるための戦略もあわせて解説

記載されている内容は2021年10月28日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

初回公開日:2021年10月28日

更新日:2022年03月01日

マーケティングを行う上で重要な「キャズム理論」とはどのような理論なのでしょうか。本記事ではキャズム理論の概要やキャズムを超えるための戦略、キャズム理論を克服した企業事例などを紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

キャズム理論について

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キャズム理論とは、市場への導入に成功した商品やサービスが、その後の成長期において発生するさまざまなキャズムを乗り越えるための理論です。

「キャズム」とは日本語で「溝」を意味する言葉で、マーケティング業界では「市場に商品やサービスを普及させる際に発生する障害」を指します。

キャズム理論を理解するためには、その大前提として「イノベーター理論」への理解が必要になります。

イノベーター理論について

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イノベーター理論とは、エベレット・M・ロジャースによって提唱された製品やサービスの市場への普及に関する理論です。

イノベーター理論では、ユーザーは商品やサービスの普及率に合わせて「イノベーター(革新者)」「アーリーアダプター(初期採用者)」「アーリーマジョリティ(前期追随者)」「レイトマジョリティ(後期追随者)」「ラガード(採用遅滞者)」の5段階に分類されます。

キャズム理論は、このイノベーター理論でのイノベーション普及において、段階を進むための溝(キャズム)を指摘した理論となっています。

イノベーションにおける各市場の5つのキャズム理論

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イノベーション理論での5段階の分類の中では、「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティ」に進むキャズムがもっともハードルが高いと言われています。また、キャズム理論ではイノベーター理論の5つの市場は異なる名前で呼ばれています。

ここではイノベーションにおける各市場の5つのキャズム理論を紹介していきますので、参考にしてみてください。

1:ビジョナリーとは

キャズム理論での「ビジョナリー」はイノベーター理論での「アーリーアダプター」を指します。ビジョナリーは新しいテクノロジーをいち早く取り入れようとする人のことです。

企業においては最先端のテクノロジーが自社の戦略にマッチしているかどうか検討し、実際にプロジェクト化してテクノロジーを採用します。ビジョナリーはテクノロジーに対する知識があり、イノベーターよりも現実的であるという特徴があります。

2:テクノロジーマニアとは

キャズム理論での「テクノロジーマニア」はイノベーター理論での「イノベーター」を指します。テクノロジーマニアは名前のとおり、真っ先に新しいテクノロジーを習得することに関心を持った人のことです。

また、テクノロジーマニアはテクノロジーに対する知識や技術も持っており、積極的に最新のテクノロジーを取り入れようとすることから、新しいテクノロジーが普及するための最初の足掛かりであると言えます。

3:懐疑派とは

キャズム理論での「懐疑派」はイノベーター理論での「ラガード」を指します。懐疑派は新しいテクノロジーが市場に登場しても市場に参加してこない人のことを指します。

懐疑派は新しいテクノロジーが自身の期待に応えてくれる可能性は少ないと考えており、新しい商品やサービスを利用する気がなく、トレンドに左右されることもありません。

4:保守派とは

キャズム理論での「保守派」はイノベーター理論での「レイトマジョリティ」を指します。保守派は進歩よりもこれまでの慣習を重んじる人達のことで、本質的にイノベーションを受け入れません。

新しいテクノロジーを取り入れるよりも、自分達の役に立つものを使い続けます。また、周囲の大多数の人々が取り入れるようになってから、同じ選択をする傾向にある層です。

5:実利主義者とは

キャズム理論での「実利主義者」はイノベーター理論での「アーリーマジョリティ」を指します。実利主義者は新しいテクノロジーを採用するよりも、着実に成果測定できる進歩を重視する人達のことです。

実利主義者は実利主義者同士で情報交換する傾向が強く、先行している他の人の事例を重視して実利を満たすことが分かれば利用したいと考えます。また、マーケットリーダーの商品やサービスを購入する傾向にあります。

キャズム理論が発生する要因

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キャズム理論は、イノベーター理論におけるイノベーターとアーリーアダプターを「初期市場」、アーリーマジョリティーからラガードを「メインストリーム市場」として、両者の間にある深い溝を超えるために発生した理論です。

5つの段階の中でもこの「初期市場」と「メインストリーム市場」の間にあるキャズムは非常に深く、新しい商品やサービスを普及させるためには超えなければいけない障害となっています。

メインストリーム市場と初期市場との違いによるもの

メインストリーム市場と初期市場では、構成しているユーザー層や購買における優先度などが全く異なります。

初期市場は流行に敏感なイノベーターとアーリーアダプターで構成されており、メインストリーム市場は先行者の様子を見てから利用を検討するアーリーマジョリティやトレンドを取り入れることに積極的ではないレイトマジョリティ、ラガードで構成されています。

そのため、両者では購買の際の基準が全く異なります。

ユーザーによる価値観の違いによるもの

メインストリーム市場と初期市場では、それぞれの市場に属するユーザーの購買における価値観が異なります。初期市場のユーザーはトレンドに敏感であることから、新しさ自体が魅力になります。

しかしメインストリーム市場のユーザーはいかに信頼できるか、本当に実利があるのかといった安心感を優先する傾向が強いため、両者の間にあるキャズムを超えることが難しくなっています。

キャズム理論を超えるための8つの戦略

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ここまで紹介してきたとおり、市場に新しい商品やサービスを普及させる際には初期市場とメインストリーム市場の間に深い溝があります。このキャズムはいくつかのポイントを押さえることで超えやすくなります。

ここではキャズムを超えるための8つの戦略を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

1:各市場の特徴を捉える

キャズムを超えるには、まずは商品やサービスが市場のどの位置にあるのかを知る必要があります。そのためには、イノベーター理論やキャズム理論を学び、それぞれの市場の特徴を捉える必要があります。

イノベーターとアーリーアダプターの初期市場、アーリーマジョリティーからラガートまでが属するメインストリーム市場の特徴を把握することで、自然に自社製品やサービスの現在の位置を掴んで対策を行いやすくなるでしょう。

2:ユーザビリティを尊重し好意的な意見を聞く

ユーザー目線でのユーザビリティを意識することは、特に新しいテクノロジーに対する知識や技術を持っていない市場に対して効果的です。そのためには、ユーザービリティを尊重することがポイントになります。

メインストリーム市場では専門的な知識を持っている人の方が少ないため、最先端のテクノロジーを使いこなせる人は稀になります。そのため、ユーザビリティを最適化し、使用したユーザーから好意的な意見をもらえるように意識する必要があります。

3:アーリーマジョリティを意識してアプローチする

アーリーマジョリティは先行している人の事例を重視する人達であり、世間で話題になっている商品やサービスに反応します。また、そのような商品やサービスを市場に浸透させるのもアーリーマジョリティです。

そのためには、アーリーマジョリティを意識したアプローチを行うことが重要です。アーリーマジョリティに適切なアプローチを行うことができれば、レイトマジョリティやラガードの購買意欲アップにもつながります。

4:リリース直後に先進性をアピールする

市場に商品やサービスをリリースした直後は、まずは初期市場に受け入れてもらう必要があります。初期市場のユーザーは新しいものに関心を持っているため、先進性をアピールすることは非常に有効です。

初期市場に商品やサービスをうまく浸透させることができれば、そのまま軌道に乗せることができるでしょう。さらに、メインストリーム市場に至る際には認知度を向上し、「世の中の人達みんなが知っており使っている」ことを訴求することでキャズムを超えやすくなります。

5:狭い市場にターゲティングする

最初から大きな市場に商品やサービスを投入するのではなく、まずは狭い市場をターゲティングすることがおすすめです。狭い市場での普及を行い、徐々にシェアを拡大していくという戦略です。

地道にシェアを拡大していく必要はありますが、時間をかけて着実に市場を広げることにより、キャズムを超えられる可能性があります。

6:研究機関や専門家からお墨付きをもらう

初期市場とメインストリーム市場の間には大きな価値観や購買動機の違いが存在するため、このキャズムを超えるためには「先進性があるもの・目新しいもの」から「みんなが使用している安心できるもの」に変化させていく必要があります。

その業界の研究機関や専門家からのお墨付きをもらうことができれば、メインストリーム市場のユーザーも安心して利用できるようになり、キャズムを超えやすくなります。

7:信用・品質を訴求するためのコンテンツを作る

自社製品やサービスをメインストリーム市場のユーザーが安心して利用できるものに昇華させるには、信用や品質を訴求するためのコンテンツ作りも重要になります。

たとえば、BtoBであれば業界に対して影響力のある企業に製品やサービスを導入してもらうことで、その製品やサービスの信用度をアップさせることも可能になります。

8:アーリーアダプターを越えるにはホールプロダクトが有効である

ホールプロダクトとは「完全な商品」のことで、製品やサービスが提供する機能とユーザーの課題に差がなく、期待に応えられる商品という意味になります。

アーリーアダプターを超えてアーリーマジョリティに至るには、ホールプロダクトが必要だと言われています。

キャズム理論を克服した企業事例

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キャズムを超えるためには、メインストリーム市場のアーリーマジョリティ層に受け入れてもらうことが必須です。アーリーマジョリティに受け入れてもらうことができれば、レイトマジョリティ以降にも浸透させていくことができるでしょう。

ここではキャズム理論を克服した企業事例を紹介していきますので、自社の戦略を検討する上での参考にしてみてください。

特定の商品を販売してシェア獲得した事例

ネスレ日本株式会社では、「ネスカフェバリスタ」をオフィスに普及するために「ネスカフェアンバサダー」というキャンペーンを行いました。

Webで募集したアンバサダーのオフィスにネスカフェバリスタを無料で貸し出し、実際に使用してもらうことで、市場にネスカフェバリスタの情報を発信していきました。その結果、アーリーマジョリティを獲得することに成功しました。

使いやすさを追求してユーザーを獲得した事例

メルカリは今日では高い知名度を誇りますが、200万ダウンロードを突破するまではユーザービリティの向上のためのUI/UXの改良を重ねていました。

また、200万ダウンロードを超えたタイミングで認知度をアップさせるためにテレビCMを流したことで、アーリーマジョリティの獲得に成功し、多くの人が利用するサービスに成長しました。

キャズム理論を克服できなかった例

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戦略的にマーケティング施策を進めたとしても、キャズムを超えられるとは限りません。実際に、キャズムを超えることができずに失敗してしまった事例も存在しています。

ここではキャズム理論を克服できなかった事例を紹介しますので、こちらも参考にしてみてください。

顧客への導入基準の調査が不足していた

某ベンチャー企業の事例では、新しいプロダクトを市場に投入した際にキャズムを超えられずに失敗しました。この事例では、企業はターゲット市場が広く汎用性の高いハイパフォーマンスプロセッサの設計や開発、販売を行っていました。

しかし顧客がどのような基準でプロセッサを導入しているのかの調査が不足していたため、キャズムを超えられない原因となりました。

アーリーアダプター受けするサポートやライブラリが不足した

某ベンチャー企業の事例では、競合が提供しているようなアーリーアダプター受けが良いサポートやライブラリが不足していました。そのため、いくら高いパフォーマンスやハードウェアを提供しても、アーリーアダプターに普及することがありませんでした。

このように、リソース配分を誤ったこともキャズムを超えられない原因となりました。

イノベーター理論の消費者の分類5つ

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キャズム理論における5つの分類は紹介しましたが、キャズム理論の元となっているイノベーター理論の消費者の分類はどのようになっているのでしょうか。ここでは最後に、イノベーター理論の消費者の分類5つを紹介していきます。

1:ラガード

ラガードとは、イノベーター理論での5つの分類におけるもっとも保守的なグループです。トレンドに対する興味がなく、新しいテクノロジーに対する期待が少ないことから、ハイテクマーケティング市場に参加してくることがありません。

また、ラガードはその製品やサービスが文化や伝統のレベルになるまで利用しないという人や、どのようなことがあっても採用しないというような人も含んでいます。

2:イノベーター

イノベーターとは、イノベーター理論での5つの分類の中でもっともトレンドに敏感なグループです。新しいものに対する興味が強く、先進性や流行に対して価値を感じる層です。

また、テクノロジーに対する知識も持っており、新商品をまだ誰も使っていない段階からいち早く取り入れようとする傾向があります。

3:レイトマジョリティ(後期追随者)

レイトマジョリティ(後期追随者)とは、トレンドをすぐに取り入れるのではなく、周囲の状況を見てから採用するグループです。レイトマジョリティはアーリーマジョリティの次の層で、進歩よりも慣習を重視するタイプになります。

アーリーマジョリティよりも慎重であり、新しいものよりも自分の役に立つものを使い続ける傾向があります。また、レイトマジョリティは周囲の普及率が高くなることで導入を検討します。

4:アーリーマジョリティ(前期追随者)

アーリーマジョリティ(前期追随者)とは、比較的慎重で、確実に実利を満たすことが分かってから採用するグループです。アーリーマジョリティは先行した人の事例を重視するため、世間で話題になった商品やサービスに反応します。

また、アーリーマジョリティは市場に商品やサービスを普及する役割を担っています。

5:アーリーアダプター(初期採用者)

アーリーアダプター(初期採用者)とは、商品やサービスのメリットを重視する流行に敏感なグループです。イノベーターの次の層で、イノベーターほど最先端のものに飛びつくということはありませんが、新しいテクノロジーに敏感です。

また、今後普及する可能性がある商品やサービスをいち早くキャッチするインフルエンサーであることから、アーリーマジョリティやレイトマジョリティにも影響力を与えます。

マーケティング戦略ではキャズム理論を理解しておくことが重要!

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市場に商品やサービスを普及させるためには、キャズムを乗り越えることが必須です。

ぜひ本記事で紹介したキャズム理論の概要やキャズム理論を超えるための戦略、キャズム理論を克服した企業事例などを参考に、キャズムを乗り越えて自社の商品やサービスの普及を目指しましょう。

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