PDCAとはどんな特徴を持つ手法?要素や効果的に回す方法もあわせて解説
記載されている内容は2021年08月25日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2021年08月25日
更新日:2022年03月03日
PDCAとはどのようなマネジメント手法のこと?
PDCAとはPlan(計画)→Do(実行)→Check(確認・検証)→Action(修正・改善)を1サイクルとして、このサイクルを何度か回すことで色々なことのレベルアップを図る手法です。
元は品質改善を継続的に実施する手法として1950年代に生まれたものですが、その手法が品質管理以外にも有効であるとして、近年ではマーケティングにも応用されています。
PDCAとOODAとの相違点とメリット3つ
PDCAと対比して語られるOODAとはどのようなものでしょうか。OODAとはObserve(観察)→Orient(方向性決定)→Decide(決断・判断)→Act(行動)のサイクルを回すことで意思決定を行うプロセスのことです。
以下ではPDCAとOODAの相違点を取り上げて説明します。
1:問題解決の方法やステップが違う
PDCAとOODAは、何を解決したいのかという課題が異なります。PDCAは「品質」を「改善」するためのプロセスであり、OODAは「意思決定」を「早くする」ためのプロセスです。
PDCAはまず「計画」します。その「計画」に沿って「実行」し、その結果を「確認・検証」して「改善」することで次の「計画」に繋げます。ここで重要視されるのは「計画」と「確認・検証」です。
これに対して、OODAは「観察」から入って、その内容に応じて「方向性決定」をして、「決断・判断」を行った後に「行動」します。このように、問題解決方法やステップが異なります。
2:OODAが持つメリットとは
OODAは元々「意思決定」を「早くする」ために米空軍で生まれたプロセスです。そのため、時時刻刻と変化する状況に速やかに、かつフレキシブルに対応できるというメリットがあります。
また「観察」から入ることで、組織のラインの指示がなくても「行動」に移ることができ、成果を上げやすいというメリットもあります。
3:OODAループについて
OODAループは、「観察」が重要視されます。現状をつぶさに「観察」することで問題点を明らかにすることができます。この「観察」をきちんと行うことで、その後の「方向性決定」「決断・判断」のスピードアップが容易となります。
最後の「行動」によって、問題点が改善されるなどの変化が起こると、再度「観察」して次の問題点を抽出することで、次のOODAループを回し、それによって物事を進めていくことができます。
このようにPDCAとOODAは相反するものではなく狙いが異なるので、併用することができるプロセスだといえます。
PDCAの4つの要素
PDCAには4つの要素があります。Plan(計画)のフェーズ、Do(実行)のフェーズ、Check(確認・検証)のフェーズ、Action(修正・改善)のフェーズの4つです。
それぞれにポイントとなる点がありますので、以下にそれぞれのフェーズを説明します。
1:Planフェーズとは
Planフェーズは、問題がどのようにすれば解決できるのかを「計画」する部分です。
一般に、PDCAサイクルを回すときには、このPlanのフェーズが重要といわれます。論理的にかつ実行可能な仮説を立てて進めていく必要があります。
2:Doフェーズとは
Doフェーズは、Planで計画された内容に従って「実行」します。
ここでは、精度の高い実行をする必要があります。計画にない内容を実行したり、計画にある内容を実行しなかったりすると、後の「確認・検証」が正しく実施できなくなります。
3:Checkフェーズとは
Checkフェーズでは、実行した内容の結果に対して「確認・検証」を行います。
特に、計画通りに実行できなかった場合や、想定していたことと異なった結果が得られた場合は注意する必要があります。なぜそのような結果になったのかをきちんと「確認・検証」しないと、次の「修正・改善」が誤った方向に進んでしまいます。
4:Actionフェーズとは
Actionフェーズでは、確認・検証された結果を元に、次の計画に向けて何をどう「修正・改善」するのかを決めます。
PDCAサイクルでは、このActionフェーズで修正・改善が必要な点を抽出し、次のPlanフェーズに繋げてサイクルを回すことで、継続的に改善活動を行うことができます。
PDCA手法の4つの特徴
PDCA手法は、その発達の過程からいくつかの特徴があります。ここではそのうちの4つを取り上げてみます。
その4つとは、様々な企業規模に対応できること、様々なプロジェクト規模にも対応できること、職種に影響されないこと、継続的な品質管理や業務改善が可能なことです。
以下でその4つについて、それぞれ解説します。
1:様々な企業規模に対応できる
PDCAは企業の規模に関係なく管理手法として使うことができます。大きな企業では、新入社員研修で基本知識として学ばせているところもあります。では、小規模な企業では使うことができない手法かというと、決してそのようなことはありません。
大きな企業では、複数人数で議論して「計画」を考え、分担して「実行」、その結果について関わっている皆で「確認・検証」して、「修正・改善」する点を抽出することで次の「計画」に繋げます。
小規模な企業では、このサイクルを一人または少人数で行うことでPDCAサイクルを回すことも可能です。このようにPDCAは企業規模に依らずに使える手法です。
2:様々なプロジェクト規模にも対応できる
企業規模と同様、PDCAはプロジェクト規模にも依らずに使える手法です。少人数の小さなプロジェクトは、そのプロジェクトを小規模の企業と考えれば、上記と同様の考え方で、PDCAサイクルを回すことができます。
大人数の大きなプロジェクトでも、いくつかのグループに分けて、それぞれのグループの中でそれぞれのPDCAを回すことができます。また、プロジェクト全体に対しても経営管理の観点からPDCAを手法として活用できます。
このように、様々なプロジェクト規模に対応できることも、PDCAの特徴の一つです。
3:職種に影響されない
PDCAは元々品質管理の手法として確立されたものです。ここから、研究開発や製造現場の業務改善に応用され、その手法の有効性から経営管理にまで使われるようになりました。
このように、職種に依らず活用できる手法であるということも、PDCAの特徴の一つです。
4:継続的な品質管理や業務改善が可能である
PDCAサイクルは、最初のPlan(計画)からDo(実行)を行い、その結果をきちんとCheck(確認・検証)してAction(修正・改善)を行うことで、ステップアップした次のPlanに繋げることができます。
このようにPDCAという手法は、そのサイクルを複数回回すことで継続的な品質管理や業務改善を可能とします。
PDCAを効果的に回す8つの方法
PDCAサイクルもただやればいいというものではありません。PDCAサイクルを効果的に回すためにも、押さえておくべき8つのポイントがあるため、以下それぞれを取り上げて説明します。
1:環境要因を考慮する
一つ目は環境要因を考慮するということです。PDCAサイクルのPlan(計画)フェーズでは、現状の環境要素をあまり考慮せず、抽象的な目標を立ててしまいがちです。抽象的な目標では、次のDo(実行)フェーズで何をするのかが曖昧になってしまいます。
Plan(計画)フェーズでは、現状の環境要因分析をきちんと行い、改善に向けての具体的な目標を設定することが大事です。
2:スパイラルアップしていくことを念頭に置く
PDCAはサイクルの最後のAction(修正・改善)を踏まえて次のPlan(計画)に繋げるという、スパイラルアップして改善を進めていくということがこの手法の特徴の一つです。サイクルを何度も回して、少しずつスパイラルアップしていくことが大事になります。
Plan(計画)フェーズでは、スパイラルアップして改善を進めることを念頭に置くことが重要です。
3:実現できる目標にする
1つめと2つめのポイントにも関係しますが、PDCAはスパイラルアップが特徴の一つですので、抽象的な目標を立てて、一気に大きなステップアップを目指すと、実現性に欠けサイクルが上手く回りません。Do(実行)のフェーズで何をすればよいのかが明確になっている必要があります。
Do(実行)のフェーズで、迷いなく実行できるよう、実現性のある目標を立てることが重要です。
4:Planフェーズでは仮説を立てよう
Plan(計画)フェーズでは、仮説を立てることも重要です。具体的な目標を立てても、その目標に向けてどのように進めればよいのかの仮説がないと、Do(実行)のフェーズで何をすればよいのかが明確になりません。
また、きちんと仮説を立てて実行することで、Check(確認・検証)のフェーズで仮説が正しかったのか否かの判断が容易になります。また、Action(修正・改善)のフェーズで何をどう「修正・改善」すればよいのかもより明確になり、次のPlanが立てやすくなります。
Planフェーズでは、何らかの仮説を立てて進めましょう。
5:Doフェーズでは計画性を持つ
Do(実行)フェーズでは、計画性を持つことが重要です。無計画に進めていては、目先の業務にとらわれてしまって、PDCAサイクルを効率的に回すことができなくなります。
期限を定めて、計画的にDoフェーズを進めて、定期的にCheck(確認・検証)することで、元のPlan(計画)で立てた仮説が正しかったのかどうか、どのようにAction(修正・改善)すればよいのかが見えてきます。
6:Checkフェーズでは定量的な目標を持つ
Check(確認・検証)フェーズでは、定量的な目標を持つことが重要です。抽象的な目標では、Checkフェーズの評価が曖昧になってしまって、次のAction(修正・改善)のフェーズの対応策を誤った方向に導いてしまう可能性があります。
Checkフェーズの目標を定量的にすることで、客観的な評価ができるようになり、正しいPDCAサイクルを回すことができます。
7:Actionフェーズで上手くいかなかったときの対処法を用意する
PDCAサイクルではAction(修正・改善)フェーズで上手くいかなかったときの対処法を用意することが重要です。PDCAサイクルを回していても、いつも必ず上手くいくとは限りません。そのようなときには、Actionフェーズで修正する必要があります。
Actionフェーズで対処法がないと、次のPlan(計画)フェーズで正しい方向に進むための仮説を立てることができません。結果を客観的に分析・評価して、対処法を用意しましょう。
8:PlanとDoのギャップを考える
Plan(計画)とDo(実行)のギャップを考えることも重要です。抽象的で壮大なPlanを立てると、実際にDoを行うときに何をどのようにすればよいのかの具体性に欠けてしまいます。
PlanとDoの各フェーズにはギャップが発生しやすいということをよく考えて、Doのフェーズを仮説と計画に従って淡々と進めていけるような具体的な行動に落とし込めるPlanを立てることが大事になります。
PDCA手法の3つの活用シーン
PDCA手法を活用して、組織を上手く回した実例を3つ取り上げてみます。大手自動車メーカーによる抜本的な組織・人事改革の促進、大手通信会社による「高速PDCA」の考え方、ISOへの活用の3つです。
1:大手自動車メーカーによる抜本的な組織・人事改革の促進
大手自動車メーカーであるトヨタ自動車がPDCA手法を活用しているシーンを取り上げてみます。
トヨタ自動車では、Planとして「ムリ・ムダ・ムラ」を省くための「トヨタ生産方式」を構築することを目標にあげて活動を開始しました。
Doとしてムダな在庫削減で有名な「ジャストインタイム」と異常発生時にムダな生産を継続しないように停止する「自動化」を導入しました。その上で、Checkとして現場と管理者が一体となって確認・検証する仕組みを構築、品質改善と原価低減を実現しました。
そこでとどまらずにActionとしてボトムアップで更なる品質改善と原価低減を実現するための「提案制度」を設けて改善方策を導き出すという、PDCA手法を活用した組織・人事改革の促進を実現しています。
2:大手通信会社による「高速PDCA」の考え方
続いて、大手通信会社であるソフトバンクのPDCA活用事例を取り上げます。ソフトバンクのPDCAの活用は「高速PDCA」という考え方が特徴です。
「高速PDCA」の考え方は以下の通りです。まず大目標を立てて、大きなPDCAサイクルを考えます。その大目標をブレイクダウンして日々実践できる小さな目標を設定、1日単位でかつ個人単位でPDCAを回すことで、全体の大きなPDCAを回していくという活動を実践していきました。
このように、小さなPDCAを素早く回すことを、ソフトバンクでは「高速PDCA」という考え方として実践し、大きな成果をあげることに繋げました。
3:ISOへの活用
続いて、PDCAのISOへの活用事例について取り上げます。ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことで、この機構が定めたものがISO規格として国際的に使われています。
ISO規格として、企業が数多く採用しているものにはISO9001(品質規格)、ISO14001(環境規格)、ISO22000(食品安全規格)ISO45001(労働安全規格)などがあります。複数の規格がありますが、基本となる考え方は全て共通しています。
ISO規格の考え方は、まず自分たちでルールを定めて(Plan)、そのルールに従って実践(Do)し、ルールが守られているかを確認・検証(Check)し、更により良くするためにルールを修正・改善(Action)していくことが求められています。
この仕組みは正にPDCAサイクルを回していることに他なりません。
PDCA手法の7つの注意点
これまで、PDCA手法の効果について説明してきましたが、PDCA手法を上手く活用するためには注意すべき点がいくつかあります。
以下で、それぞれを取り上げて説明します。
1:壮大な目標を立てない
Planのフェーズでの注意点としては、壮大な目標を立てないということがあげられます。
PDCA手法を活用するときに、どうしても大きな成果をあげたいと考えて壮大な目標を立ててしまいがちです。しかし、目標が壮大であれば、計画は曖昧なものになってしまいがちで、計画が曖昧だと何をどのように実行すればよいのかも曖昧になってしまいます。
実際にPDCA手法を活用する際には、壮大な目標をブレイクダウンした小さな目標を設定することが重要です。
2:DoとActionを混同しない
DoとActionを混同しないことも注意点として大事です。言葉としてはDoとActionは似ていますが、PDCA手法においては全く別物です。
DoはPlanで定めた計画を実行するフェーズで、ActionはCheckで評価された改善点に対して何をどのように修正・改善するのかを検討するフェーズです。Doの途中で修正・改善すると、Checkのフェーズで正しい評価ができなくなります。
Checkのフェーズで正しい評価を行うためにも、DoとActionを混同せず、Planで定めた計画をその通りに実践することが重要です。
3:過度に目的化しない
注意点の3つめはPDCAを回すことを過度に目的化しないということがあげられます。PDCA手法を活用していると、サイクルを回すことそのものが目的となり、確認・検証や修正・改善が甘くなってしまうことに陥りがちです。
PDCA手法はあくまでも課題を解決するための手段なので、回すことが目的にならないように注意する必要があります。
4:検証時にCheckとActionを忘れない
PDCA手法はサイクルをきちんと回すことで目標達成する手段です。検証時にCheckとAction を忘れると効果が得られません。
計画(Plan)して実行(Do)することにこだわると、確認・検証(Check)と修正・改善(Action)が不十分になり、課題解決ができない状態を繰り返すことになってしまいます。
5:有意差が生まれる前に感覚でそのときに良かった方を選ばない
有意差が生まれる前に感覚でそのときに良かった方を選ばないことも重要です。Check(確認・検証)のフェーズでやりがちな間違いとして、感覚で判断をしてしまうことが挙げられます。
実行している途中で良い結果らしきものが出てくると、感覚的にその計画が良かったという判断をしてしまうことがあります。確認・検証する際には、定量的に数値で判断することが大事になります。
6:Planを立てる際にも感覚で評価しないようにする
Planを立てる際にも感覚で評価しないということが大事です。上記のCheckフェーズと同様に、感覚で判断・評価すると誤った方向に進んでしまうことがあるので注意が必要です。
Planのフェーズで重要なのは、具体的に実行できる計画になっているかどうかです。
感覚的に良さそうというだけでPlanを立てると、Doのフェーズで迷ってしまうこと、Checkのフェーズで計画の修正すべき点が曖昧になってしまうことに繋がってしまい、Actionのフェーズで効果的な修正・改善の方策が立てられなくなってしまいます。
7:改善には長期的な目線が必要である
最後の注意点としては、改善には長期的な目標が必要であるということです。
PDCA手法は継続することが重要で、繰り返しサイクルを回すことで目標を達成する手段です。長期的に何を達成したいのかという目標をまず設定し、その目標をブレイクダウンして小さなPDCAを何度も回していくということが、大きな成果をあげるためには必要なこととなります。
PDCAの手法を理解してマーケティングに活用しよう
PDCAは直感的にわかりやすい手法で、色々な場面で適用できる便利なものです。発祥は品質管理や業務改善のためのツールでしたが、それにとどまらずに経営管理にまで活用されています。
マーケティングにおいてもPDCAの手法は考え方として十分に使えるものです。PDCAの内容をよく理解して、マーケティングの成果をあげるために活用しましょう。