MECEとは何?用いるためのアプローチとメリット・デメリット
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MECEとは何?用いるためのアプローチとメリット・デメリット

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MECEとは何?用いるためのアプローチとメリット・デメリット

記載されている内容は2021年08月25日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

初回公開日:2021年08月25日

更新日:2024年05月31日

MECEというロジカルシンキングの基本となる概念をご存知でしょうか。この記事ではMECEとは何か、MECEを用いるためのアプローチや分析の切り口、ロジカルシンキングのフレームワークについて紹介します。MECEを知り、マスターしたい方参考にしてください。

MECEとは何?

MECEとは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字をとって略した言葉で、ミーシーと読みます。日本語で訳すと「漏れなく、ダブりなく」という意味です。

物事を考えるとき、必要な要素をすべて網羅しつつ、かつ要素が重複しないようにすることが、正しい答えを導き出すためには必要です。つまり、MECEを意識することが、全体像を正しく捉え、問題解決にたどり着くための、正しいアプローチにつながるのです。

MECEの重要性

MECEとは、正しい答えを導き出すために非常に重要な概念で、戦略やマーケティングの場面でよく使われています。では、MECEのどういったところが重要と言われているのでしょうか。

ロジカルシンキングの基本

MECEは、ロジカルシンキングの基本とも言われる概念です。ロジカルシンキングは、筋道を立てて矛盾が生まれないよう物事を考える思考方法です。

ロジカルに思考を重ねるには、結論があり、その下に主張や根拠という形でなくてはなりません。この主張を設定するために、対処する物事の根本や全体像を明らかにしたり、複雑な構造をしている物事、シンプルに切り分け細分化したりして分析することが大切です。

マーケティングにも有意義

マーケティングの際には、商品やサービスの内容、競合他社、ターゲット、市場ニーズなど、多岐にわたる複雑な要素を取り込んでいかなければいけません。

MECEを用いると、こうした膨大で複雑な要素をシンプルに切り分け細分化し、整理して考えることができます。また、新しく出すアイデアの要素もMECEを用いて漏れもダブりもないか確認することによって、独自の商品・サービスを打ち出すことが可能です。

MECE(漏れがなく、ダブりもない)ではない3つの状態

分析をする際に漏れやダブり、またはその両方があるとMECEではなくなってしまいます。

マーケティングにおけるターゲット層の分類をMECEに考える際の具体例として、MECEではない状態について見ていきましょう。

1:漏れがなくダブりがある状態

まずは、漏れはないがダブりがある状態です。ターゲット層を、大人・子ども・男性・女性と分類したとしましょう。

この場合、ターゲット層は網羅できているため漏れはありませんが、大人や子どもの中に男性も女性もいるため、ダブりが発生してしまっています。

2:漏れがありダブりがない状態

次に、漏れがありダブりがない状態です。ターゲット層を、10代・20代・30代・40代と分類したとしましょう。

この場合、ターゲット層に重複はないためダブりはありませんが、10代未満や50代以上の分類がないため、漏れが発生してしまっています。

3:漏れがありダブりもある状態

最後に、漏れもダブりもある状態です。ターゲット層を学生に限定した場合で、小学生・中学生・高校生・予備校生と分類したとします。

この場合、大学生の分類がないため漏れが発生しており、かつ予備校生には中学生や高校生が含まれることが多いためダブりも発生してしまっています。

MECEを用いるためのアプローチとメリット・デメリット

MECEとは何?用いるためのアプローチとメリット・デメリット
※画像はイメージです

MECEを用いるためのアプローチ方法には、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの2種類があります。

それぞれのアプローチ方法の特徴とメリット・デメリットを理解したうえで、使い分けたり組み合わせて使ったりすることが大切です。MECEの精度を向上させるためにも、どちらのアプローチ方法も使えるようにしておきましょう。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチとは、全体から詳細にブレークダウンする方法で、上から全体を見て大枠を決め、そこに目的や課題に沿った要素を当てはめていくものです。

例えば、営業に必要なスキルを考える際、聞く力・話す力・思考力などと分類していく、ということです。トップダウンアプローチは、物事の全体像やゴール、分類の仕方や方向性が明確になっている場合に、有効な手段と言えるでしょう。

トップダウンアプローチのメリット

トップダウンアプローチのメリットは、体系的・俯瞰的に物事を考えることができ、ゴールを意識した分類がしやすいことです。全体像が既に描かれているため、検討から始めることができます。

トップダウンアプローチのデメリット

逆に、トップダウンアプローチはスタート地点がゼロベースであれば使えない手段です。分解の方向性が見えない状態や、全体像が不明確な状態で分解してしまうと、分類に漏れが発生してしまう可能性があります。

ボトムアップアプローチ

ボトムアップアプローチとは、詳細を集めてから全体像を描く方法で、まったくのゼロベースから必要な要素の洗い出しとグルーピングを進めていくものです。

例えば、営業のコツについてのアンケートをとり、そのアンケート結果から営業に必要なスキルを考える、ということです。ボトムアップアプローチは、全体像が不明瞭な場合や、事前にどのような分類をしたらいいのかがわからない場合に、有効な手段と言えるでしょう。

ボトムアップアプローチのメリット

ボトムアップアプローチのメリットは、未知の物事についても思考をスタートできる点にあります。また、新しい領域の開拓にも有効です。

未知の物事については、ボトムアップアプローチである程度構造をかためてから、トップダウンアプローチで修正を加えていくことで、より確実な進め方となるでしょう。

ボトムアップアプローチのデメリット

逆に、ボトムアップアプローチのデメリットは、漏れやダブりが生じやすい点です。

ボトムアップアプローチでは、まず思いつく要素を出すところから始まりますが、ここでの洗い出しが甘いと、分類に漏れが生じやすくなります。また、要素の洗い出しの甘さや要素の偏りは、分類の仕方の間違いにもつながり、ダブりを生じさせてしまいます。

ボトムアップアプローチのみを用いる場合は、MECEになるように訓練が必要です。

分析の切り口

MECEを用いる場合は、ただ漏れやダブりがない状態にするだけでなく、分析したい対象である物事に合わせて適切な切り口を設定することが大切です。ここからは、MECEに有効な切り口を4つに分けて紹介します。

要素分解

要素分解は、全体像を把握したうえで、それらを一定の方針のもとで、構成している要素へと分解する方法です。

分解した要素を合わせたときに全体像になるように、部分集合に切り分けていくことで、それぞれの要素ごとに集中して分析や解決策の検討が可能になります。

要素分解は部分集合の総和が全体像になるため、「足し算型」や「積み上げ型」と呼ばれる場合もあります。

対称概念

2つ目は、対称概念です。対象となる物事について、相反する概念・対称的な概念をできるだけ挙げていき、分解する方法です。それぞれの因果関係による対立や排他的な関係といった点から考えていきます。

例えば質と量、メリットとデメリット、主観と客観、クオリティとスピード、といったものがそれぞれ対称的になっている概念です。マーケティング活動や営業活動を分析する際に有益な方法と言われています。

因数分解

3つ目は、因数分解です。分析したい対象を計算式という形に置き換え、記号で結びついた文言を要素として分解していく方法です。「掛け算型」と呼ばれる場合もあります。掛け算だけでなく、足し算、引き算、割り算でも使用可能です。

例えば、企業の売上を「顧客単価×顧客数」や「市場規模×市場シェア」といった計算式に分解することを指します。相互関係を考えながら様々な切り口で分解ができる方法です。

時系列・ステップ分け

4つ目は、時系列・ステップ分けです。その名の通りの意味で、時系列や段階で分類していく方法です。

例えばプロジェクトを立ち上げる際に、準備→実行→評価→改善というステップに分けたり、消費者の購買行動をステップに分けたりすることを指します。

ロジカルシンキングの基本フレームワーク9選

ここまで、MECEを用いるためのアプローチや分析の切り口についてご紹介しましたが、MECEでロジカルシンキングをすることが難しいと感じている方も多いことでしょう。そういった方は、既存のフレームワークを活用することをおすすめします。

MECEに要素を分解するために役立つ、ロジカルシンキングの基本のフレームワークであるため、ぜひ活用してみてください。

1:バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、事業活動を一連の価値の連鎖として捉える分析の手法です。原材料の調達から顧客の消費までの主活動と、技術開発や人事労務などの主活動をサポートする支援活動に分けて、どの部分でどれくらいの付加価値が生まれているかを分析します。

このフレームワークは、自社の事業活動の価値創造の中で、改善すべき点の洗い出しや、他社との差別化戦略の立案に役立ちます。つまり、事業活動を俯瞰して、顧客満足を生みだし価値を創造するには、どの部分に目をつけるべきかを見出すフレームワークと言えます。

2:SWOT分析

SWOT分析とは、強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)・機会(Opportunities)・脅威(Threats)の頭文字をとったもので、この4つの視点に分けて分析する手法です。

競合や市場、社会情勢といった自社を取り巻く外部環境と、自社の価格や品質、ブランド力といった内部環境を、プラス面、マイナス面に分けて分析します。

このフレームワークは、自社のビジネスチャンスの発見や、事業成功のための戦略策定、マーケティングの意思決定に役立ちます。

3:7S分析

7S分析とは、組織の戦略を分析するもので、組織を考えるうえで必要な7つの構成要素に分けて分析する手法です。

7Sは、組織の仕組みに関するハードの3S=仕組み(Systems)・組織構造(Structure)・戦略(Strategy)と、組織に属する人に関するソフトの4S=力(Skills)・人材(Staff)・価値観(Shared Value)・経営スタイル(Style)のことです。

このフレームワークは、企業の戦略立案や組織改革に役立ちます。

4:4P分析

4P分析とは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販売促進)の頭文字をとったもので、この4つの要素に分解することで、マーケティング戦略を分析する手法です。

マーケティング戦略においては、この4つの要素は欠かすことができないものです。どれかが欠けてしまうと、売れない価格設定になってしまったり、世の中に認知されずに終わってしまったりします。

これらの要素は独立しているのではなく、関連性のある状態でなければ有用ではないため、このフレームワークは見落としやダブりを防ぐ考え方が可能です。

5:3C分析

3C分析とは、市場・顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の頭文字をとったもので、市場・顧客と競合の視点から自社を分析する手法です。

自社の分析だけでなく、外部要因からも分析することで、漏れやダブりのない分析が可能です。このフレームワークは、マーケティング戦略の立案や事業計画の立案に役立ちます。

6:ロジックツリー

ロジックツリーとは、直訳すると「論理の木」で、分析する対象を分解し、その要素をツリー状に並べたものです。分析したものを可視化できるため、全体像が把握しやすいフレームワークで、縦軸はロジックで結びつけ、横軸は要素が同じレベルでMECEに並ぶように配置します。

このフレームワークは、論点のずれをなくしたり、問題を深堀し原因を特定したり、アクションの優先順位をつけたりするのに役立ちます。

7:AIDMA

AIDMAとは、人が購買に至るまでのプロセスを表したフレームワークで、Attention(注意)・Interest(関心を持つ)・Desire(欲求)・Memory(記憶)・Action(購買行動に移す)の頭文字をとったものです。

このフレームワークは、プロセスごとに分析し、マーケティング戦略を立て、実行していくことで、効率的なマーケティングを可能にします。

8:製品ライフサイクル

製品ライフサイクルとは、製品が市場に出回り始めてから市場から撤退していくまでのプロセスを表したフレームワークです。

認知度を高めていく「導入期」、ブランド力を高める「成長期」、シェア拡大を狙う「成熟期」、支出を抑え撤退を考える「衰退期」の4つのステップに分けて分析します。

それぞれのステップに適したマーケティングを行なうことで、利益の最大化が可能となります。

9:PDCA

PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字をとったもので、この4つのプロセスのサイクルを何度もまわし、継続的に業務改善を行なっていくフレームワークです。

このフレームワークは、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していくのに役立ちます。

MECEに考えることはマーケティングの立案にも役立つ!

MECEはロジカルシンキングの基本となる概念で、MECEに考えることはマーケティングの立案にも役立ちます。しかし、使いこなせるようになるまでは非常に難しいものです。

この記事では、MECEを用いるためのアプローチや分析の切り口、またMECEに考えやすくなるためのフレームワークをご紹介しました。これらを用いて、少しずつMECEをマスターしていきましょう。

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