集中戦略の意味とは?採用して成功した事例やメリット・デメリットを解説
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初回公開日:2021年08月25日
更新日:2024年05月31日
集中戦略の意味とは
集中戦略とは特定の顧客層やマーケット、地域市場、流通チャネルなどのセグメントに集中する戦略のことです。
集中戦略は中小企業などでよく選ばれる経営手法です。特定の顧客やマーケットに絞って経営資源を投入することで、市場での優位性を上げることができます。
集中戦略の種類について
集中戦略は「コスト集中戦略」と「差別化集中戦略」の2つに分けられています。
コストリーダーシップ戦略や差別化戦略などもよく耳にするでしょうが、この2つの戦略は業界の幅広いターゲットに対して低コストな商品やサービスを提供したり、オリジナリティの高い製品などを提供したりします。
ここでは特定の市場に対して打ち出す戦略、「コスト集中戦略」と「差別化集中戦略」について説明します。
コスト集中戦略
コスト集中戦略とはターゲットを特定し、競合他社よりも低価格の商品やサービスを提供することで、多くの利益を得て優位性を図る戦略です。
原材料の仕入れや、販売などのコスト削減をすることで低コスト商品を実現させます。また、経営資源を特定の分野に集中させることで経営コストの削減にもつながります。
差別化集中戦略
差別化集中戦略とは特定のターゲットを対象に、製品やサービスの差別化を図ることで優位性を確立させることができる戦略です。
中小企業の多くは差別化集中戦略を採用しています。独自の技術やオリジナルの製品を扱っている企業が取り入れやすい戦略です。
集中戦略における3つのメリット
集中戦略を採用している中小企業は数多くありますが、そのメリットは大きく分けて3つあるといわれています。
ここでは集中戦略における3つのメリットについて解説します。
1:顧客の満足度を上げることが可能である
特定の顧客や市場に絞り込むことでニーズを満たし、顧客の満足度を高めることができます。
顧客の満足度を上げることで売上アップも期待できますし、自社のブランディングにもつながりやすいため、大規模な企業が参入しても勝てる可能性があります。
2:特定の分野で地位を獲得することが可能である
特定の分野で競争相手が少ない市場などはシェアの獲得がしやすく、ニッチャー企業として地位を獲得することができるでしょう。
特定の市場や流通チャネル、特定の顧客に的を絞って商品やサービスを提供することで経営資源を効率的に活かすこともできます。
3:他社と差別化を図ることが可能である
特定の市場や顧客のニーズに沿って独自性のある製品やサービスを提供することで、他社との差別化を図ることができます。
さらに、特定の市場に経営資源を集中できるため、ブランディングなどにも力を入れることができ、参入障壁を築きやすい面があります。
集中戦略におけるデメリット
集中戦略のデメリットは大きく分けて2つあります。特定の市場や顧客に対し、限られた経営資源を集中して投入するため、それなりのリスクが伴います。
デメリットをよく把握し、問題に対応できるよう解決策を用意しておくことが重要です。
1:社会状況に左右される
社会状況により顧客のニーズも変化していきます。その変化に対応できなければ他社の製品やサービスに流れていく可能性があります。
社会情勢と顧客のニーズを常に把握し、それに合わせて柔軟に対応していくことが必要となります。
2:顧客が減少する可能性がある
顧客が減少する可能性は2つあります。
1つめは経営資源に余裕のある大手企業が参入して、一気にシェアを奪われ顧客を失う可能性があることです。そうなる前に、自社のブランド力を上げておくことで大きなダメージを回避することができるでしょう。
2つめは市場自体がニッチでなくなり顧客が減少するということです。市場が大きくなれば競合他社も多く参入してくるため、競争に巻き込まれてシェアを失う可能性があります。
集中戦略を採用して成功した5つの事例
集中戦略が成功し、今では誰もが知る大企業に成長した会社もあります。
集中戦略を成功させた企業としてオリンパスや住友林業なども有名ですが、ここでは代表的な5つの企業の成功事例を紹介します。
1:スズキ株式会社
軽自動車と言えばスズキをイメージする方も多いでしょうが、これはスズキが差別化集中戦略を取り入れブランディングに成功しているためです。
スズキは特定の市場を軽自動車に絞り、生産、販売を集中させることで確固たるポジションを維持し続けています。
また、軽自動車の需要があるインドに注目し、進出を果たしています。
2:有限会社高木商店
有限会社高木商店は栃木県小山市にある会社です。
主に競技用のビーチボール・シーリングPOP、パンチングPOPなど空気を入れて使用するビニール製品を自社工場で製造しています。
特定の顧客のニーズに応え特注品や一品物などを請け負うことで多様な技術を積み重ね、他にはない高性能な製品開発を実現しました。
広く流通している安価な空気入りビニールとの差別化を図り、ブランド力を上げたことで安定した価格で受注ができ、売上アップへとつながっています。
出典:会社概要|有限会社高木商店
参照:https://www.big-advance.site/s/143/1480/company
3:株式会社しまむら
株式会社しまむらは集中戦略の代表的な成功例としてよく挙げられています。
株式会社しまむらが運営する「ファッションセンターしまむら」は特定のターゲットを20代~50代の主婦層に絞り、低価格で手に取りやすい商品を提供することで現在のポジションを獲得しています。
また、他社にない強みは多品種、多アイテム、少量品揃えを基本としているところです。
さらに、店のオペレーションが本部主導のため、物流、店舗オペレーションなどを無駄なく効率的に管理することができローコストオペレーションを実現させています。
4:有明産業株式会社
有明産業株式会社は京都府京都市にあり、洋樽を製造販売している会社です。
有明産業株式会社は、当初行っていた事業が社会状況により低迷したことをきっかけに、洋樽製造、販売事業に参入しました。
洋樽という特有な産業の中で、独自の発想を活かし顧客に提案することで洋樽の製品価値を上げることに成功しました。
さらに、今までは難しかった日本の木材を用いた洋樽の開発にも成功し、海外などではプレミアム洋樽としての需要が出ています。
現在では洋樽専業メーカーとして独自のポジションを築いています。
出典:会社概要|有明産業株式会社
参照:http://ariakesangyo.co.jp/company/
5:日本KFCホールディングス株式会社
日本KFCホールディングス株式会社とは日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社のことです。差別化集中戦略を成功させた企業の代表的な例としてよく挙げられています。
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社は「フライドチキン」という特定の市場に絞ることで、ハンバーガーを始めファーストフード全般で事業展開をしているマクドナルドに対して差別化を図り成功しています。
また、当初は若い女性をターゲットに絞り、店舗の内装をデザインしたり、サービスを提供したりしていました。
近年ではファミリー層をターゲットにしたり、持ち帰りの需要も高まったりしたことで、売り上げをさらに伸ばしています。
集中戦略を採用して失敗した事例
集中戦略は大企業であっても失敗することがあります。
その1つの例としてシャープを挙げてみます。シャープは100年以上も続く総合電子機器メーカーです。
シャープは液晶パネル事業に集中投資をし、事業を大きくしていきました。当時では最先端と言われる技術で大型液晶テレビを製造し、その液晶テレビは「亀山モデル」として人気を呼び一時は市場シェアの首位を獲得していました。
しかし、その後中国や韓国など海外の企業が参入し安価な液晶テレビが出てきたことにより市場環境が急激に変化し、一気にそのシェアを奪われてしまいました。
この原因として、市場調査ができていない状態で集中戦略を行ってしまったことや、液晶テレビの開発や製造にコストをかけすぎてしまったことなどが考えられます。
シャープの社長は当時の戦略について、集中戦略で企業が大きくなったのは間違いではないとしながらも、リスク管理が充分にできていなかったことや、成功した液晶パネル事業に頼りすぎていたことなどを原因として説明しています。
このように、集中戦略を実行するにあたっては、リスク対応をしっかり考えておくことが必要不可欠であるといえます。
出典:会社概要|シャープ株式会社
参照:https://corporate.jp.sharp/info/outline/
集中戦略が中小企業におすすめである理由
集中戦略は、特定の市場に経営資源を集中して投資することができるため、経営資源豊富な大手企業との勝負に勝てる可能性が十分にあります。
特に中小企業では差別化集中戦略を採用する企業が多く、独自の技術やサービスなどを活かし営業利率を上げているようです。
集中戦略を上手に活用しよう
集中戦略は自社の強みを十分に活かし、ニッチな市場で勝負することで営業利率のアップ、特定市場のシェア獲得も実現可能な戦略といえます。
自社の特徴に合わせて、コスト集中戦略や差別化集中を選択し上手く活用してみてください。