限界利益率と損益分岐点とは|損益分岐点以上の売上高を得る方法
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初回公開日:2021年09月24日
更新日:2022年03月03日
限界利益とは?
売上高から変動費を差し引いて算出したものを限界利益と呼びます。限界利益とは事業の収益性を明確に確認する管理会計の方法であり、事業の収益性の判断材料として用いられます。限界利益を知ることで、事業改善の必要性や費用の見直しを確かめることが可能です。
固定費
固定費とは経営学では、生産に関わりなく発生する費用を指します。たとえば、お店を営業するのに必要な家賃や、設備のリース、水道光熱費などが固定費として挙げられます。
ここからは直接固定費、間接固定費について解説していきます。
直接固定費
直接固定費とは製品製造や、サービスを行う場合に必要な費用を指します。機械を動かし製品を製造するなら労務費が掛かり、製品を作る材料の原材料費も直接固定費として含まれます。製品製造やサービスを行う上で、直接掛かる費用として捉えておくと良いでしょう。
間接固定費
間接固定費とは直接関わらない費用を指します。たとえば、製品の輸送費や販売費、管理費なども間接固定費に含まれ、直接固定費に付随して発生する費用として考えると良いでしょう。
コスト費用は、業種により異なるため直接固定費と間接固定費の分類が必ずしも同じではないことも覚えておきましょう。
変動費
変動費とは売上高の増減に合わせて、変動する費用を指します。主に原材料費、売上原価、販売手数料など、生産量や販売量の変化に連動する原価要素のことを言います。変動費を把握することは、収益性を図る数値計算に役立ち、経営計画を実現するために必要な指標です。
貢献利益とは?
売上高から変動費と、直接固定費を差し引いた利益を貢献利益と呼びます。貢献利益は、物販やサービスによる売上高から原価費用を差し引くため、収益に対して商品やサービスの貢献度を表す指標として用いられます。
貢献利益を各分類で分析し比較することで、前年度からの増減を知ることが可能です。合わせて必要な経費を分析できるため、経営の数値改善を明確化していく上では欠かせない指標でもあります。
限界利益との違い
限界利益と貢献利益の違いは分析する対象です。限界利益は、売上高から変動費を差し引くため、利益で固定費を賄えるかどうかを分析することができます。また、固定費と利益の比較を行えるため、経費改善が必要かどうかの指標として活用できるでしょう。
貢献利益は、各分類や部門での利益貢献度を分析するのに活用し、事業で得られる収益を把握するのに用いられます。また、前年対比の収益増減を明確に分析できるため、経営の方向性を改善するのにも用いられます。
限界利益は固定費との比較、貢献利益は収益増減の比較に活用されています。
粗利益
粗利益とは、売上高から原価を差し引いたものです。ビジネスでは粗利益と呼ばれるのが一般的ですが、決算書では会計上の言葉で売上総利益と記載されます。
粗利益は純利益に辿り着くまでの基礎とも言える利益で、企業の収益の源泉とも呼ばれています。粗利益は原価を抑えることで増やすことが可能です。
営業利益
営業利益とは企業が物やサービスで稼いだ収益のことです。分かりやすく言うなら、粗利益から販売管理費や一般管理費と経費を差し引いた数値を営業利益と呼びます。
営業利益は粗利益から販売を行うための経費や、人件費、企業の維持費を差し引いて算出します。営業利益の高い企業は、ビジネス力が高い企業であることを示すことができます。
限界利益率と損益分岐点とは?
限界利益は売上高に対して変動費を差し引くことで算出できますが、売上高の限界利益の割合を分析するのが限界利益率です。限界利益を算出することで、売上高の増減で限界利益が変動する幅を分析することができます。
損益分岐点とは、収益がプラスマイナスゼロになる売上高を指します。損益分岐点を超えれば収益は黒字となり、それ以下であれば赤字となります。
限界利益率が小さくなれば損益分岐点が上がり、収益を高めるための改善が必要になります。反対に限界利益率が大きくなることで、損益分岐点は下がり、収益を向上させることが可能です。
従って、損益分岐点と限界利益率の両方を分析することで、経営改善に繋がる指針を見出せるのです。
限界利益率=限界利益÷売上高×100
物やサービスの限界利益率を算出する方法として次の式を当てはめることで、限界利益率を算出することが可能です。限界利益率=限界利益÷売上高×100の式で考えると限界利益率を算出できます。
たとえば、売上高が300、限界利益が60とした場合、限界利益率は20%となります。限界利益率を算出することで、商品やサービスの収益性を見直すことが明確になるのです。
限界利益率が高いほど利益をあげやすい
先ほど限界利益率を上げることで、損益分岐点は下がり収益が向上すると伝えましたが、より分かりやすく説明すると、これは商品やサービスの限界利益率が上げれば必然的に限界利益単価が上がるということを意味しています。
そのため、固定費や経費の割合は下がるため、必然的に損益分岐点は下がります。限界利益率が高ければ高いほど、利益は上げやすく収益を確保することができるのです。
限界利益率が高いほど固定費が回収しやすい
限界利益率を高めることで、固定費を回収しやすくすることが可能です。限界利益は変動費を差し引いた数値のため、固定費は差し引いていません。そのため、限界利益の割合を分析することは、固定費の回収を測る指標ともなるわけです。
限界利益率を活用すれば、どのくらいの売上高を上げれば固定費を回収できるかを明確化することが可能でしょう。
損益分岐点=固定費÷限界利益率
損益分岐点の算出は、次の式に当てはめて考えることが可能です。損益分岐点=固定費÷限界利益率の式で、損益分岐点を算出することができます。
たとえば、固定費が150万で限界利益率が30%の場合、損益分岐点は500万となるわけです。500万の売上高がなければ赤字になることが数値で、明確に理解できます。
同じ数値で限界利益率が40%に上がれば、損益分岐点は375万に下がるため、限界利益率が上がれば収益性が上がるのも明確なのです。
限界利益がマイナスになる場合
限界利益がマイナスになる場合は、どのような状況なのか背景と合わせて考えてみましょう。たとえば、変動費が250万で売上高が200万となる場合、限界利益はマイナス50万となります。
物やサービスを売っても収益は上がらず、企業の赤字が増え続ける一方になり、大きな損失を生み出すことになるのです。限界利益は、企業にとって売上高よりも大切な指標であることが理解できるでしょう。
損益分岐点以上の売上高を得る方法
損益分岐点以上の売上高を得る方法は、2種類の考え方に分かれます。
1つ目は、価格を上げて高い売上高を得るという考え方です。しかし、これは販売価格を上げることで商品やサービスが低迷してしまう恐れがあり、企業によっては固定費や人件費が上がるデメリットもあるでしょう。
2つ目は、固定費や変動費を下げて損益分岐点そのものを下げてしまう考え方です。変動費は販売に応じて増える費用で、固定費は一定の維持費が掛かるものですが、これらを改善することで損益分岐点そのものを下げることができます。
固定費を削減する
固定費とは事業で掛かる一定の費用のことで、主に家賃や水道光熱費、減価償却費、人件費などが挙げられます。
これらを削減する方法としては、たとえば家賃なら家主との条件交渉、水道光熱費ならプランの見直し、人件費なら人員配置や生産性の見直しを図ることなどが挙げられます。
変動費を削減する
変動費は、売上高に合わせて増減する費用で、主に原材料費や売上原価、販売手数料を指します。原価材料は外注先に交渉や変更を加えると削減できますが、品質が下がってしまう可能性もあります。販売手数料などは、人件費やコストを考えると削減は難しいでしょう。
限界利益についての理解を深めよう!
限界利益は企業や事業において、収益性を測る上では欠かせない指数です。事業の計画から予算の組み立て方、事業の継続の可否など多角的な視点で活用でき、企業の意思決定に役立てることができます。
収益性を上げたいと考えている方は、限界利益を分析することが、物やサービスの付加価値や本質を考える鍵となります。損益分岐点以上の売上高を得るためにも、限界利益についての理解を深めておきましょう。