ペルソナ分析って何?メリット・デメリットと8つの段取りを解説
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初回公開日:2021年08月25日
更新日:2024年05月31日
ペルソナ分析の意味とは?
ペルソナとは、本来は演劇の用語で「仮面」の意味で用いられています。仮面をかぶることで別人を演じることができるという面から、「商品やサービスを購入・利用する具体的な人物像」として、マーケティング分野で利用されるようになった背景があります。
マーケティングにおける「ペルソナ分析」とは、自社が制作や開発を行う商品、提供するサービスのターゲットとなる顧客を細かく設定するという意味を持っています。
さらに、そこから関係者間での意思疎通を容易にし、商品やサービス開発、マーケティング戦略に必要な情報収集を行う意味に派生しました。
ペルソナ分析って何?
ペルソナの意味を踏まえると、ペルソナ分析とは自社の商品やサービスのマーケティングを行う際に、重要かつ象徴的なユーザーモデルを詳細に設定する手法のことを指します。この手法は「ペルソナマーケティング」と呼ばれています。
ターゲットの場合は抽象的なユーザーモデルを設定しますが、ペルソナは年齢や性別などの定量的なデータだけではなく、身体的または性格的な特徴やライフスタイル、価値観をはじめとした様々な定性的データを活用します。
場合によっては顔写真を用意するなど、まるで実在しているかのようなユーザーモデルを設定することで、商品やサービスを具体的な顧客対象に合わせて設計することが可能となります。
ペルソナ分析をするメリット5つ
ペルソナ分析を行うことで、商品開発をする際に様々なメリットがあります。特に、ユーザー目線で商品やサービスを検証できるようになり、そこから社内での足並みを揃えて考えを統一しやすくなる点は大きなポイントです。
このように、マーケティングの観点からもメリットはありますが、まずはどのようなメリットがあるのか把握しておく必要があります。
1:ユーザー目線になりやすくなる
ペルソナ分析をする場合、理想のユーザーモデルを設定する際にユーザーの考えや心理状況なども想像することになります。そうやってユーザーモデルの内面も考えていくうちに、自然にユーザー目線で商品やサービスのことを考えるようになります。
その結果、自社の商品やサービスがペルソナからはどのように見えるのか、どうすれば満足できるのかなどの判断ができるようになります。
開発者目線だけではなくユーザー目線になれる点は、ペルソナ分析ならではのメリットと言えます。
2:ペルソナに向けた表現の方が印象に残る
ペルソナ分析を行った上での表現やデザインは、万人向けではなくペルソナに設定された人物に近い人ほど印象に残りやすいというメリットもあります。
これは、具体的なユーザーモデルを設定する過程で、その人ならどんな表現が印象に残るのか、何度も試行錯誤したことに起因しています。
極端に言えば、たった1人「その人」に届けるための表現を行うため、万人受けしなくても、ターゲットとなるペルソナにはしっかり印象を残せるということです。
3:ソーシャルメディアでの集客が期待できる
ペルソナ分析をすると、どのようなコンテンツを優先するべきなのか、商品やサービスを提供するべきタイミングや、利用するべきメディアも選出しやすくなります。
特に「ニッチ・マーケティング」と呼ばれる小規模に市場を絞った手法との相性がよく、ソーシャルメディアと併用することで、商品購入やサービス利用を呼び込みやすく、ユーザーの集客効果が高まります。
4:ユーザー中心の考えを社内で徹底できる
ペルソナ分析では、関係者全員にペルソナとなるユーザーモデルの設定や情報を浸透させることが必要となるため、自然にユーザー中心の考えを社内で徹底しやすくなります。
そのため、社員は商品開発やサービスの見直しをする際、ペルソナとなるユーザーモデルがどのように考えるのか、どのように思うのかというユーザー中心の考えで作業に取り組むようになります。
上記のような理由から、ペルソナ分析をすることそのものが、社内の意識統一に役立てられます。
5:ペルソナを共有することで社内の足並みが揃う
社内全体にペルソナの設定を共有できれば、ターゲットに対する考えや思いのズレ、または思い違いを予防できる効果も期待できます。
このように、ユーザーモデルの設定が統一できれば、開発時に足並みを揃えられるため、商品開発やマーケティング戦略を明確・確実にしやすくなります。
結果として、スムーズに商品やサービスの販売・開始に至りやすく、プロジェクトの効率アップなどにもつなげやすくなります。
ペルソナ分析をするデメリット3つ
ここまで見てきたように、魅力的なメリットが多いペルソナ分析ですが、ペルソナを設定するからこそのデメリットもいくつか見受けられます。
特に、分析や設定が間違ったペルソナを設定してしまうと、効果が得られないどころかマーケティング手法としても失敗してしまうリスクがあります。
そのため、ペルソナ分析のデメリットも考慮した上で、実践するか検討する必要があります。
1:時間や手間を要する
ペルソナを分析・設定するためには、イメージで考えるのではなく、商品やサービスのターゲットから細かな工程を経て緻密に設定する必要があります。さらに、ユーザーへのインタビューやリサーチ、市場の調査も不可欠です。
つまり、ペルソナの設定にはかなりの時間を要するだけではなく、調査や分析にかかる費用も決して少なくないということが言えます。
このような理由から、プロジェクトの完成にかかる時間やコスト、手間は無視できないデメリットとなっています。
2:目的から外れたペルソナ像ができる可能性
ペルソナを設定する際は、膨大なデータ量を統計して適切なペルソナ像を作り出します。この時、データの読み方を間違えてしまうと、目的から外れたペルソナ像が出来上がってしまう可能性があることに注意しましょう。
間違ったペルソナ像ができると、最初から設定し直さなければいけないため、さらに余計な時間や手間、コストがかかってしまいます。
その結果、さらにプロジェクトの完成が遅れてしまいます。
3:分析や設定が間違っていると効果がない
目的と異なる分析や設定をしてしまった場合、そのペルソナ分析は商品販売やサービス利用を促進することはできず、集客効果なども期待できなくなります。
そうなるとプロジェクト自体が失敗となり、大きな損害を被ってしまうリスクがあるため、注意が必要です。
ペルソナ分析8つの段取り
ペルソナ分析を行う場合、大まかに8つの段取りを経て行っていきます。
段取りによっては複数の作業を並行して行う場合もありますが、どのような段取りでも共通しているのは、「情報収集」「データ分析」「ペルソナの絞り込み」です。
ここからは、その内容について具体的に見ていきましょう。
1:簡易ペルソナを確かめる
情報収集やリサーチには、ある程度ターゲットとなるユーザーのモデルを設定しておく必要があります。そのため、商品やサービスを提供する予定のターゲットについて、最初に仮説として簡易ペルソナを設定し、内容を確認します。
「簡易ペルソナ」は、名前や住所などの基本情報、職業などの仕事に関する情報、趣味や嗜好品などのライフスタイルに関する情報を設定します。
ここでは人物像を詳細に設定する必要はないため、ターゲットにしたいペルソナがどのような人物なのかは、簡易的に確かめる程度にとどめます。
2:定量調査をする
簡易ペルソナを確かめた後は、そのペルソナの定量データに基づいた調査を行います。
「定量調査」とは、年齢や居住地、よく利用するWEBサイトやSNSなどの、「行動データ」と呼ばれる数値化して収集できるデータの調査を指します。
定量調査で得た情報は、その後収集する定性データと照らし合わせてペルソナに反映させていく必要があります。
3:情報の整理とグループ分けをする
定量調査や定性調査で集まった情報は、そのまま簡易ペルソナに入れ込めないため、まずは情報を整理していきます。
そうして集まった情報の「事実」の部分を分別していき、共通項目があるものをグループ分けします。
最終的に、グループ分けされたものの中から必要なものをペルソナにアウトプットしていくことで、より明確なペルソナを完成させやすくなります。
4:インタビューやアンケートの実施
抽出したターゲット層に対して商品やサービスのコンセプトを提示し、その内容についてインタビューやアンケートを実施することで、ユーザーの情報やコンセプトの受け入れに関する調査を行います。
なお、このインタビューやアンケートは、簡易ペルソナの設定や定量調査以前に行われる場合もあります。実施したインタビューやアンケートの内容から、定性データを収集していくことが大きな目的です。
5:インタビュー結果からスケルトン作成をする
インタビューやアンケート結果の中で、共通する部分をカテゴリー別にグループ分けしながら、ペルソナの骨格となるスケルトン作成を行います。
「スケルトン」とは、ユーザーの特徴を箇条書きしたものですが、使用頻度や市場規模など、スケルトンの中でも優先順位をつけておくことがポイントです。
6:スケルトンのブラッシュアップ
スケルトン作成と優先順位の決定が完了した後は、簡易ペルソナとスケルトンのブラッシュアップを行います。
これは、調査パネルに事前スクリーニングを行って調査対象者を絞り込んで、より簡易ペルソナに近しいユーザーの評価を確認することが目的です。
さらに、簡易ペルソナに近いユーザーを絞り込んでスケルトンを再検証することもできるため、結果として簡易ペルソナの妥当性を判断する材料にもなります。
7:ペルソナを物語風に作る
情報がまとまってペルソナに落とし込めたら、具体的にペルソナをまとめる段階に入ります。
このとき、ただ情報をまとめるのではなく、顔写真をつけたり、その行動を取る動機付けや背景を作ったりなど、物語風に仕上げるところがポイントです。
物語風にすることで、ペルソナを実在する人物のようにリアルに想像しやすく、イメージを社内で共有しやすくなります。
8:出来上がったペルソナを共有する
最終的に出来上がったペルソナは、重視するペルソナ項目などを設定した上で確定します。そして、ペルソナを社内全体で共有し、営業や宣伝など様々なマーケティングに反映させていきます。
ただし、一度出来上がってしまえば終わりというわけではないため、その後も定期的なペルソナの再検証が必要となります。
ホームページ制作にペルソナ分析を活かす方法3つ
「ペルソナ分析」は、様々なマーケティングで活用できる手法として注目されており、WEBマーケティングの代表的な手法であるホームページ制作においても活用できる手法です。
ユーザー目線での商品やサービスを考えられるだけではなく、ホームページの見やすさや使いやすさ、さらに内容の理解度も把握しやすくなる点がポイントです。
ここからは、実際のホームページ制作でのペルソナ分析の活用方法を見ていきましょう。
1:ペルソナへの信用を得る
まず、ユーザーからの信頼を得る前に、各関係者からペルソナへの信用を得ることが重要になります。
そもそも、関係者たちがペルソナのことを信用・把握できていなければ、ペルソナ分析に必要な感情移入をしてもらえないリスクだけではなく、適切なマーケティングを展開できない可能性も出てきます。
このため、ホームページ制作はもちろん、商品やサービスに関わる人たちからの信用を得るのは大切になります。
2:ペルソナになりきりながら制作を進める
ペルソナ分析のメリットとして、ペルソナ目線になりやすい点があります。ペルソナになりきって、感情移入しながら商品開発をしたりサービス検討をしたりできるため、それをそのままホームページ制作に応用することが可能になります。
ユーザー目線でホームページ制作することで、見やすいホームページ制作ができたり、ペルソナに近いユーザーに刺さるコンセプトやデザイン、アイデアを思いつきやすくなったりします。
3:複数のペルソナがあるケース
コンセプトによっては、ペルソナが単体ではなく複数設定される場合もあります。そのような場合は、トップページに全てまとめるのではなく、各ペルソナ向けのページを作成し、そちらに誘導することで対応可能です。
各ページでペルソナに刺さる内容の情報を提示すれば、複数のペルソナにも対応できます。また、ペルソナの数が多い場合には、別サイトの制作検討も効果的です。
ペルソナ分析の効果を確かめる3つの指標
ペルソナ分析を行ってからは、分析の結果を踏まえてデータを蓄積した後、再検証や経過観察をしていく必要があります。
ペルソナ分析の効果を確かめる指標としては、主に直帰率・平均のビュー数・コンバージョン率の3つが代表的です。
ほかにも指標とするべきものはいくつかありますが、特に上記の3つのデータは重要視されています。以下で詳しく見ていきましょう。
1:直帰率
ホームページを運営する際の重要な指数のひとつとして挙げられているものが、「直帰率」です。直帰率とは、流入ページから移動せず、そのページのみを見てすぐに離脱してしまうユーザーの割合を示した数値です。
この直帰率がペルソナ分析の前後でどのように変化しているかを調査することで、ペルソナ分析が効果を出しているか、ホームページがターゲットとなるユーザーに魅力的だと判断されているかを見極めることが可能です。
2:平均のビュー数
「PV数」とも表示されるページビュー数は、特定のページやウェブサイトが表示された回数のことを指します。
この平均回数を指標とすることで、ページに訪れたユーザー数を検証できるほか、制作したホームページの魅力がどの程度なのか、ペルソナ分析の効果が出ているのかを検証しやすくなります。
3:コンバージョン率
「コンバージョン」とは、サイト内で設定した目標が達成されたかどうかを示す指標です。分かりやすく言えば、商品購入やサービス利用の契約に至った回数といった内容の目標を指します。
達成された割合がどの程度なのか算出することで、ペルソナとして設定したユーザーに商品やサービスを届けられたのか、分析結果の再検証をする上で重要な情報となります。
状況に応じてペルソナ分析は修正する
ペルソナ分析は、一度行ったらずっと同じままで良いというわけではなく、時代や流行の変化に合わせて再検証する必要があります。
また、一度行ったペルソナ分析の効果が見られない、あるいはマイナスの結果になってしまった場合も、再度見直して修正していく必要があります。
上記の理由から、ペルソナ分析には、状況に応じた定期的な再検証や見直しが求められています。
ペルソナ分析を活かした企業の事例
ここからは、実際にペルソナ分析を活かした企業の事例について紹介しましょう。いずれの企業も、ペルソナ分析によって大きな利益を生み出し、マーケティングに成功していると高く評価されているところがポイントです。
成功している企業の事例を踏まえ、どのようにペルソナ分析を行っていたのか考えてみることが重要になります。
機能性を重視したペルソナを作成した事例
大手スープ専門チェーン店では、都心で働く37歳のキャリアウーマンという設定で「秋野つゆ」というペルソナを設計しました。
このペルソナの特徴は、経済的に余裕があることから、値段よりも「通いやすさ」や「商品の質の高さ」などの機能性や品質を重視する傾向があるところです。
このペルソナを満足させるための商品設計を行ったところ、少し値段が高くてもペルソナと似たような境遇のユーザーから高く支持される商品開発に成功しました。
女性ファッション雑誌の人気モデルをCMに起用した事例
子供や男性にしか人気が出ないと考えられていたスナック菓子を、当時売れない層と判断されていた20代から30代の女性にも売れるようにしたのが、大手スナック菓子メーカーのペルソナマーケティングです。
成功のポイントは、定量データをもとに文京在住の27歳の独身女性のペルソナを設定し、その年代の女性がよく読むと判断された女性ファッション雑誌の人気モデルをCMに起用したところにあります。
さらに、女性でも手に取りやすく目に映りやすい落ち着いた色合いのパッケージにするなど、設定したペルソナのニーズを意識した配慮を行い、見事に成功した事例です。
ペルソナ分析をうまく使ってマーケティングに役立てよう
ペルソナ分析はマーケティングの手法として有効な方法であり、ペルソナをリアルに存在する人物として設計し、正しい分析や情報収集を行うことで大きな効果を発揮します。
インフルエンサーマーケティングやニッチ・マーケティングとの相性が良いため、自社でもうまく活用できるよう、成功企業の実例も踏まえて分析・設計していきましょう。