市場調査の主な方法12選|マーケティングリサーチとの違いとは
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市場調査の主な方法12選|マーケティングリサーチとの違いとは

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市場調査の主な方法12選|マーケティングリサーチとの違いとは

記載されている内容は2021年09月24日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

初回公開日:2021年09月24日

更新日:2024年05月31日

市場の動きを数値で可視化できる市場調査は、マーケティング戦略の中でも重要な地位にあります。この記事では、市場調査のメリット・効果や調査方法の種類、調査のステップなどを、実際の企業例を交えて解説しています。ぜひ市場調査を行う際の参考にしてください。

市場調査とは?

市場調査とは、数値データで現在の市場を把握し、どうすれば商品が売れるかといったマーケティング施策を考えることです。

「マーケットリサーチ」とも呼ばれ、個人の意見や事実といった個々のデータから顧客全体の傾向や統計的な数字を分析し、最終的に商品やサービスの抱えた問題の解決を目指します。

マーケティングリサーチとの違い

マーケティングリサーチは市場調査と混同されがちですが、実際には違いがあります。試供品の提供と使用感の調査、広告や流通の調査など、共通する手法も多くありますが、目指すゴールが異なります。

市場調査は主に現状の問題解決を目指すものですが、マーケティングリサーチは市場における未来の動向の予測や考察を行い、売れる商品や市場の開拓にアタリをつけるものになります。

市場調査の5つの目的

市場調査の主な方法12選|マーケティングリサーチとの違いとは
※画像はイメージです

市場とは、企業が提供する商品やサービスに対する顧客の意志や感情に基づいた動向であり、絶えず変化するものです。

そこで、数値的な裏付けを持って事業に取り組む足がかりになるのがマーケティング市場調査です。市場調査を活用する目的には、主に5つの項目が挙げられます。以下で詳しく見ていきましょう。

1:商品開発への活用

商品開発への活用としての市場調査は、顧客に対する調査で潜在的なニーズを把握し、ユーザーの「欲しい」という感情を刺激する「売れる」商品の傾向を把握した上で開発を行う手がかりをもたらします。

商品開発のために行う市場調査の手法には、大きく3つの方法があります。

1つ目は、「コンセプト(&プロダクト)調査」と呼ばれるものです。想定するターゲット層に開発中の商品コンセプトや試作品を提示し、評価を取得してフィードバックします。

その商品の魅力に思う部分はどこか、価格は適正か、実際にどんな人が購入しそうか、といったことを回答してもらいます。

2つ目は、「アイデアスクリーニング調査」と呼ばれるものです。商品開発前のテーマやアイデアをいくつか並べ、ユーザーにとって魅力的なものを選択し、選んだ理由といっしょに提出してもらいます。

3つ目は、「U&A/消費者ニーズ探索調査」と呼ばれるものです。商品の市場規模とターゲット層を絞込み、今後のアイデアのヒントとなる潜在ニーズを調査します。現在売れている商品への不満や改善要望の調査が主になります。

2:価格戦略への活用

価格戦略は「プライシング」とも呼ばれ、商品やサービスの価格を決定することを言います。この戦略では、市場調査で得られた情報を参考に適正価格を導きます。

市場において、「価格」はそれ自体が商品の価値を印象付ける重要な要素です。商品の実態に対して価格が高すぎる場合、売れ行きは伸びませんが、逆に低すぎても品質への不信感につながる場合があります。

そこで、商品を買ってほしい顧客層を把握し、自社でかかっているコストはいくらか、競合商品の相場はどれほどかといった情報を加味して、そこにプラスアルファのクオリティやサービスを付帯できるかどうかを考えて価格を決定します。

3:ブランドイメージへの活用

市場調査では、商品や企業に対するブランドイメージの浸透度や評価を測定できます。これは、特定のコンセプトやブランドで売り出している商品が、必ずしも企業側が狙った通りのイメージでユーザー側に受け入れられているとは限らないためです。

そこで、企業側とユーザー間にあるイメージギャップや、消費者に商品のブランドを認知してもらっているかどうかを調査で明確にします。

競合市場での自社ブランドの位置付けを把握し、ポジションを明確にすれば、今後のプロモーションの改善などに活かせるようになります。

4:販売支援への活用

適切な販売促進が行われているかどうかを調べる方法として、消費者が商品を購入する時の判断基準をもとにした「4C分析」と、企業側が考えるべき対応について模索する「4P分析」があります。

4Cとは、「Customer Value(消費者にとっての価値)」「Cost(消費者にかかるコスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(対話)」の4つの要素です。

対して、4Pとは「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通チャンネル)」「Promotion(広告、販売促進)」の4つの要素になります。

消費者が求めるニーズと、商品や企業対応の実態が釣り合っているかを調査し見直すことで、商品やターゲット層に合った販売支援を考えることができます。

5:顧客の満足度を調査

商品を使用したユーザーから満足度の評価や改善点のアドバイスを募ることを「顧客満足度調査(CS調査)」と言います。

取得したデータをもとに、商品の問題点を改善してユーザーの満足度を向上させ、リピーターとして継続的に購買してもらったり、ユーザー同士の口コミを広げてもらったりすることで、新規顧客の獲得を目指すことができます。

マーケティングにおける市場調査の4つの効果

マーケティングにおいて重要な要素のひとつは、「数値によるデータ」です。売上の推移やユーザーの意見のパーセンテージなどの、目に見える明確なデータは、今後の活動を行う上で判断を助ける指標となります。

それらのデータを土台に、新しい商品を受け入れてもらえる下地を作ることが市場調査の役割と言えるでしょう。

ここからは、マーケティング上の市場調査のメリットにどんなものがあるのか確認していきましょう。

1:数字での把握ができる

先述の通り、市場調査で得られるのは数値によるデータです。商品の市場規模や今後の推移、顧客層といった売上に関する環境などを、具体的な数値で確認できることは強みと言えるでしょう。

数値のデータは比較や検討が容易であり、流通の状況など商品の周辺を見直すきっかけにもつながります。

2:事前に成功や失敗の度合いをシミュレーションできる

市場調査で得られた数値データを利用して、商品の発売前に売れ行きをシミュレーションする方法もあります。

販売する店舗の立地やターゲット層、期間などの情報をもとに将来的な売上はある程度予測できます。事前にシミュレーションしておけば、商品を大量に生産した場合の成功確率を知ることも可能です。

3:ターゲットや市場の変更が容易になる

市場調査では、現在商品を実際に購入しているユーザーの属性を明らかにできます。そのため、当初は想定していなかった思いがけないターゲット層の開拓につながる可能性があります。

また、現状の市場規模やその環境、ユーザー間のトレンドなどが分析できれば、それに合わせて売れやすい市場へ変更することもできます。

上記のような理由から、市場調査で得られるデータは、マーケティング戦略において重要な意味を持っていると言えます。

4:価格を調整しやすくなる

商品の価格を調整する方法として、「PSM分析」と呼ばれるものがあります。消費者が持つ価格に対する知覚を表す4つの曲線から、「最低価格」「最高価格」「妥当価格」「理想価格」の4つの交点を求め、商品が市場で許容される価格帯を計測するという方法です。

このPSM分析に必要なデータは、市場調査で集めることができます。定価を決めるのみならず、バーゲンセールなどで売り出す時の価格の参考にもなり、買ってもらいやすい価格に調整するのに役立ちます。

マーケティングにおける市場調査の進め方7ステップ

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マーケティングにおいて市場調査を行う際、まず問題・目的を明確にし、それをもとに調査の計画を立てます。そして計画に沿ってデータを収集し、得られた情報を分析して会社としての意思決定を行う、というのが大まかな流れとなります。

それぞれの段階をさらに細かく見ると、大きく7つのステップに分けられます。ここからは、その方法を確認していきましょう。

1:現状の課題を洗い出す

まずは、商品に対する現状の課題や目標を明確にするところから始めます。

商品が抱える問題点と、改善のためにどんな情報が必要であるのかなるべく具体的に洗い出しましょう。

2:調査の目的を明確にする

課題が明確になったら、次は解決するための目的を設定します。これは、何をどう解決するかによって、取るべき調査の方法が変わってくるためです。

商品の品質を改善したいのか、広告やキャンペーンの見直しをしたいのかといった目的は、マーケティングを行う上で重要な芯にあたります。ぼんやりとした曖昧なものでなく、具体的なものを設定しましょう。

3:調査方法や調査期間を決める

マーケティングの目的が定まったら、調査の計画を立てます。必要な情報を集めるための期間、場所、対象者、手法など、目的に合わせて適切な計画を練りましょう。

たとえば、商品が新しいものであるかどうかによって調査期間は変わり、ネット上で済む調査もあれば専用の会場を用意しなければならない場合もあるでしょう。

対象者の年代やライフスタイルなどを明確にし、より多くの情報を柔軟に得られる方法を選びましょう。

4:調査を開始する

綿密な計画が出来上がったら、いよいよ調査の開始です。

市場調査を行う上で一番時間的・金銭的コストがかかるステップですが、焦らずじっくり、たくさんのデータを集めましょう。

5:調査結果を分析

調査の期間が終了し、十分な量のデータが集まったら、今度はそれを集計して分析します。

最初に洗い出した問題をもとに決めた目的を踏まえた上で、自部門以外の第三者も交えてより多くの観点から分析すると良いでしょう。

6:レポートを作成する

分析が終わったら、結果をレポートにまとめます。ただし、単に結果をまとめるのではなく、そのデータをどう活用するのかを見越したレポートを作成しましょう。

なお、調査を外部に委託する場合、上記のような観点からレポートを作成してくれる業者かどうかは会社選定の重要なポイントになるでしょう。

7:課題解決のための意思決定を実施する

レポートを作成してデータがまとまったら、最後にそれをもとにして会社としての意思決定を行います。最初に決めた課題の解決のためにアプローチする方向や、投入するコスト、採用する手段を吟味して、より相応しいものを選びます。

データは取得して終わりではありません。得られた情報をもとに、目的を達成するためにどうするべきか判断する足がかりにしてください。

マーケティングにおける市場調査方法12選

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マーケティングにおける市場調査の方法には、実にさまざまなものがあります。それらを大まかに分けると、「定量調査」「定性調査」「統計データ調査」の3つになります。

「定量調査」は、数量や割合などの数値的なデータを収集する調査です。数字による説得力が高く、市場全体の傾向を把握できます。ターゲット別に比較したい場合などに向いています。

「定性調査」は、調査対象者のニーズや意見を具体的に聴き取る調査です。ユーザーの生の意見を把握でき、企画や開発のヒントにもできます。心理的な感想を知りたい場合などに向いています。

「統計データ分析」は、公的機関によって公表されている統計データを利用する調査です。調査にかかるコストを削減でき、サンプル数も膨大になるといった特徴があります。

そして、こういった調査の方法を細分化するとさらに12に分類されます。マーケティングの目的に合わせた調査を行うために、それぞれの方法の特徴をしっかり理解して使用しましょう。

1:会場調査

調査対象者に指定の会場まで来てもらい、その場で商品を試用して評価を収集する方法です。パッケージを含む瞬間的な印象の調査や、同一条件下での試用、商品の機密性が高い場合などに実施します。

情報や資料を回収でき、表情や行動といった商品に対する反応を直接観察できます。また、その場で回答を掘り下げられるため、より精緻なデータを集めることができます。他にも、試用の条件を実施側で統一できるため、余計なバイアスを防げる確率が高くなります。

2:アンケート調査

事前に質問をまとめた調査票を用意し、調査対象者に回答をもらう方法です。「はい/いいえ」の二択で答えられる設問や、自由回答欄がある設問などが存在します。

調査票には、「そのアンケートを実施するに当たっての対象者への依頼文」「質問文と回答の選択肢」「回答者情報記入欄」が掲載されています。この内質問文は、設問の順序や数で回答数が変化します。

有効な分析結果を得るために必要な回答数はいくつかなど、さまざまな要因を絡めて計画を立てましょう。

3:ホームユーステスト

試供品を調査対象者の自宅に送付し、一定期間試用してもらった感想や評価を収集する方法です。スキンケア用品など、一定期間使わないと効果が実感しにくいものが対象で、途中経過の情報も集めることができます。

普段の生活の中でのデータが採取できるため、会場調査よりも対象者の実態に近い本音を聴くことができます。そこまで機密性の高くない商品に使用できます。

4:行動観察調査(オブザベーション)

調査対象者の日常の行動を観察し、話を聞きながら対象者と同じ環境に一定期間身を置いて調査する方法です。言葉以外の行動や癖などから、新たな気付きを得られる場合があります。

調査対象者の素の状態が見やすく、行動に至るまでの前提条件を共有できるため、回答への理解・共感が生まれやすくなります。なるべく調査担当者の先入観や固定観念を捨て、俯瞰して物事を捉えることが必要になります。

5:オンラインインタビュー

インターネットを介してオンラインで行うインタビューです。通信環境とカメラ・マイクが使用できるパソコンがあれば、どこでも調査を行えます。

地方のユーザーともやり取りでき、リラックスした状態で回答できるため、より率直な回答を集めやすくなります。擬似的な座談会方式を取ることもできます。

6:グループインタビュー

調査対象者を6人程度集めてインタビューする方法です。司会者が調査するテーマについて質問し、それに対して自由に発言してもらう形式で行います。

グループでのインタビューは対象者同士の相互作用的に意見が活発になりやすく、個別のインタビューと比べて短時間かつ安価に多くの意見を集めることができます。消費者目線の情報が収集でき、購買心理や行動の深堀りができる調査です。

7:デプスインタビュー

調査対象者とインタビュアーの1対1形式で行うインタビューです。深層面接法とも言います。対象者の生活や行動実態の詳細を掘り下げて、裏側にある価値観、理由、動機、願望や不満などの深層に入り込む方法です。

対象者1人1人に時間をかけて質問できることから、より情報の中身を緻密にできます。この方法では、対象者に適度に共感して心理的距離感を縮め、謙虚な聞き役に回ることが求められます。

8:ショップアロング調査

調査対象者が実際に買い物をする現場に付き添い、行動を観察する調査です。購入の検討から購入までを観察し、買い物が終わってからインタビューも行います。

営業中の店舗やWebサイトを使用し、購買行動の実態を見ることができます。同時に映像データも記録しておけば、後から行動の詳細を分析できます。マーケティングにおいて、店頭POPなどの売り場のレイアウトや、商品同士の相乗効果で売上を向上させるための参考になります。

9:郵送・FAX調査

アンケートの調査票を郵送やFAXで送り、回答を調査対象者に返送してもらう方法です。全国規模で広範囲に実施できるという特徴があります。

はがきや調査票を用意して送るだけという手軽さから、大量の情報を取得することができます。また、対象者の顔が見えないため、対面では聴きにくいことも調査できます。

10:訪問観察調査

調査対象者の自宅を訪問し、実際の生活を観察しながらインタビューを行う行動観察調査の一種です。「ホームビジット」とも呼びます。

行動を観察しながら直接ヒアリングする「面接調査」の他、調査票を後日回収する「留め置き調査」があります。留め置き調査も、直接調査票をやり取りする方法のため、回収率が高いのが特徴です。

11:ミステリーショッパー

調査員が一般客に扮して店舗の接客や営業の様子を調査する方法です。覆面調査とも呼びます。

通常の利用客に紛れて行うため店舗側に気付かれにくく、普段の営業状態が分かる調査です。飲食店を始め、小売店、ファーストフード店など、さまざまな店舗の調査に利用される方法です。

12:ネットリサーチ

事前に用意したアンケートに、インターネット上で答えてもらう方法です。Web調査またはオンラインサーベイとも呼びます。

低コストかつスピーディに、広範囲の調査ができます。既に個人情報を登録したモニターから対象者を選定するため、商品のターゲット層に近い対象者からの情報を集めることができます。

市場調査方法の参考にしたい4つの企業事例

次に市場調査方法の参考にしたい企業事例として「一定期間データを測定した後にアンケート回答を実施」「商品を利用した新規ユーザーへのデプスインタビュー」「調査主導の新製品開発の徹底」「アンケート調査の精査及び消費者のマインドの分析」などがあります。

それでは、企業事例について詳しくご紹介していきます。

1:一定期間データを測定した後にアンケート回答を実施

始めに、東京電力ホールディングスの例を見てみましょう。東京電力ホールディングスはマーケティング支援会社のネオマーケティングと提携し、一般住宅の断熱性能に関する調査を行いました。

従来、模擬住宅で行っていた断熱性能の測定を一般家庭に切り替えることで測定方法を簡易化し、サービス開発のための大規模なサンプルを確保する目的で、調査対象者の自宅に計測器を送り、夜間のリビングにおける断熱性能の測定を行いました。

計測器の数に限りがあったため一度に100件ずつ、最終的に約900件のデータを得ることに成功しました。

測定で得られたデータをグループ企業のサービス開発に応用した他、この調査の終了後に改めて約9,000件のモニターを確保してライフスタイルや電気使用状況を分析し、必要に応じて随時アンケート調査を実施しています。

2:商品を利用した新規ユーザーへのデプスインタビュー

次に、ホーユー株式会社の例を見てみましょう。ホーユー株式会社は、東京電力ホールディングスと同じくネオマーケティングに依頼し、市販のヘアカラー商品の販促ツールを刷新するため商品を購入したユーザー向けに市場調査を行いました。

調査のきっかけは、店頭に置いてあるヘアカラー商品の使用感を示すサンプルである毛見本があまり使用されていないと気がついたことでした。

ユーザーは何を参考にヘアカラーを購入しているのかを検討した際、さらに社内で想定しているヘアカラーの分類やターゲット層のユーザー認識とのギャップが大きいことが判明しました。

そこで、まずユーザーの行動観察調査を行い、その後に新規ユーザー向けにヘアカラー商品に関するデプスインタビューを行いました。

そして、そのインタビューで得られたデータをもとに自社商品の愛用ユーザーと企業側が一緒に販促ツールを考える「共創ワークショップ」を開催しました。

この調査の結果、「もとの髪色によっては毛見本の通り染まらないので参考にできない」「白髪染めのパッケージデザインが若者向けに見え、商品の実態をイメージしにくい」といったユーザーのさまざまな意見を取り入れることができました。

このデータをもとに、ユーザーがストレスなく商品を選べる売り場へ改善する取り組みを行っています。

3:調査主導の新製品開発の徹底

アサヒビールの例を見てみましょう。アサヒビールは、ノンアルコールビール「ドライゼロ」の開発にあたって丁寧な市場調査を徹底しました。

まず、ノンアルコールビールの需要を調査するためにネットリサーチやグループインタビューを実施しました。その結果、ノンアルコールビールはビールの愛飲者が、休肝日やアルコールの摂取が憚られる場合にビールの代用品として利用していることが分かりました。

そして、同時にそういったノンアルコールビールを利用しているユーザーは、カロリーゼロといった健康面の機能性よりも、本物のビールに近い味わいや飲用感を重視していることも判明しました。

そのため、味に重点を置いた商品開発が行われ、ホームユーステストなど試供品のモニター調査を何度も重ねました。

最終的に完成したドライゼロは、ノンアルコールビール市場において24%ものシェアを誇る大ヒット商品となりました。

4:アンケート調査の精査及び消費者のマインドの分析

最後に、セブン&アイ・ホールディングスの例を見てみましょう。セブン&アイ・ホールディングスは、野村総合研究所における「生活者1万人アンケート調査」を精査し、消費者のマインドを徹底的に分析するところから商品開発を始めました。

分析の結果、それまで商品購入の決め手が「安いこと」であったのが、徐々に「値段が高くても品質の良いもの」「おいしいもの」に変化していることを突き止めました。そこで市場の高級志向に合わせた「セブンプレミアム 金の食パン」を開発し、ホームユーステストを実施しました。

その際、単に自社商品を送るだけでなく、比較対象として金の食パンの他に1斤300円程度の食パンを併せて送り、調査対象者の過半数から「金の食パンの方が美味しい」という支持を得ることができました。

その上で、今度は神奈川県内のセブン-イレブン約160店舗でテスト販売を実施し、最終的な価格を、ホームユーステストで送った別の食パンより安く「1斤250円」と決定した結果、この金の食パンはヒット商品となりました。

消費者の「値段が高くても品質の良いものを買いたい」というマインドに合わせ、何度も調査とテストを繰り返したことで、税込み256円という決して安くない食パンのヒットにつながりました。

出典:概要|式会社 セブン&アイHLDGS
参照:https://www.7andi.com/library/dbps_data/_material_/_files/000/000/001/709/kinpan.pdf

マーケティングにおける市場調査の6つの注意点

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有意義な市場調査を行うために重要なポイントは、「仮説を立てること」「調査の目的を意識すること」「ターゲットを明確にすること」の3つです。

現状を正しく分析して、その原因に対する仮説を立てることで、後々問題の解決に移るのがスムーズになります。また、目的とターゲットは常に明確にしておいた方がマーケティングの精度が高くなります。

ここからはもう一歩踏み込んで、市場調査の際に気を付けるべき注意点を6つご紹介します。

1:調査を行う前に仮説を立てる

本格的な調査に入る前に、必ず判明している事実をまとめて仮説を立てましょう。

まず、商品の現状と問題点を分析し、原因に対する仮説を立ててそれを検証します。その仮説が間違っていることが判明した場合は、新しい仮説を立て直して再度検証します。

このように、仮説の組立と検証を繰り返すことで、改善点を絞って明確にしていきます。

2:市場調査の目的を設定する

市場調査を行う目的は、その後のマーケティング戦略の核となる重要な項目です。調査の目的は具体的かつ明確に設定しておきましょう。

また、何のためにその目的を設定したのかは常に忘れないように意識しましょう。調査結果が思わしくないからと、データの改ざんや隠蔽を行ってしまっては本末転倒です。

3:調査のターゲットを明確にする

昨今の市場におけるニーズは多様化の一途を辿っており、商品開発で万人受けを目指そうとすると利益を得るのが難しい状況にあります。従って、効果的な販促のためにも年齢や属性、ライフスタイルと言った想定する顧客層は明確にしておきましょう。

顧客をグループ分けした上で商品に適した層を狙うことで、経営資源を集中できビジネスが展開しやすくなります。

4:難しい項目は専門家に頼む

市場調査において、調査の企画・設計やデータの集計・分析は専門知識が必要な分野です。自社内でそれらを行うのが難しい場合、専門の調査会社に委託するのもひとつの手です。

ただし、会社によってサービスの提供範囲は異なります。企画から関わってくれる企業か、調査以外を行わない企業かは事前に確認しておきましょう。

5:市場調査にかかる費用を確認する

市場調査にはさまざまなコストがかかります。調査の準備にかかる費用と時間、調査を開始してから結果が得られるまでの時間など、かかるコストは事前に確認して予算を組みましょう。

モニターへの謝礼、調査員の人件費、会場調査用の会場レンタル代、郵送調査のはがき代や送料など、希望する調査によって費用がかかる場所は異なるため、市場調査の方法ごとの特色は押さえておくと良いでしょう。

6:調査票はできるだけ中立的に作成する

自社内で調査票を用意する場合、設問の内容が偏ることがあります。調査票を作成する時は、なるべく作成者の主観や固定観念といったバイアスを取り除いた中立的なものにしましょう。

回答を誘導するような質問内容や選択肢や、回答者のプライバシーに踏み込んで不快にさせるような質問は避けましょう。また、回答者の解釈任せな質問文にならないよう、聞きたいことの範囲は明確にしておきましょう。

市場調査を実施して売上アップを目指そう

数値による市場データの可視化や目的に応じて柔軟にやり方をカスタムできる選択肢の豊富さなどの利便性により、市場調査はマーケティング戦略の中でも重要な地位を占めています。

冷静に状況を分析し、ブレない目的を設定できれば、ビジネスの成功率は格段に大きくなります。市場調査を有効に活用して、売上アップのマーケティング戦略につなげましょう。

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