ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介
用語・フレームワーク
ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介

Share

Facebook
Twitter
はてな

ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介

ABC分析表とはどんなものなのでしょうか。この記事では、ABC分析表を活用する目的やメリットを始め、活用する際の注意点、ABC分析に役立つツールについて紹介しています。マネジメントでABC分析を活用したいと考えている方は参考にしてください。

ABC分析表とはどのような表のこと?

ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介
※画像はイメージです

ABC分析表は、マネジメントでよく聞かれる管理ツールで、重点分析とも呼ばれている分析・管理手法です。

数多くの指標のなかからプライオリティ(優先順位)を設けて、ABC分析表を作成して管理していく方法です。商品を重要度が高い順にA、B、Cの3つのグループに分けて管理します。

ABC分析とパレートの法則との関連性

ABC分析の基本的な考え方は、「パレートの法則」を元にしています。

パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した経験則である「全体の数値の80%は、全体を構成している要素のうちの20%が産み出している」という、分布の偏りのことをいいます。

パレートの法則では、上位(20種類の商品群)と下位(残りの80種類の商品群)の2つの区分ですが、ABC分析では、A、B、Cの3ランクに分けて分析を行います。

ABC分析表を活用する目的

ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介
※画像はイメージです

ABC分析表は、重点を可視化するツールです。ABC分析を行う目的は、いろいろとありますが、大きく分けると2つの目的に集約できます。

第1は、事業の現状を確認することにより効率化してマネジメント力を高めることです。第2としては、適切な経営戦略を構築するための情報を蓄える目的です。

ABC分析表を活用する4つのメリット

ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介
※画像はイメージです

ABC分析表を活用するメリットは、資源を適正に分配することにあります。可視化することで現状を把握し、時系列で経営戦術の効果を測定します。

では、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。それは、これから説明する4つのメリットになります。

1:在庫管理しやすくなる

ABC分析を行うことで、その企業の売れ筋商品・主力商品をつかみ、在庫管理に役立てることが可能になります。

例えば、Aランクの主力商品に対しては、在庫切れによる欠品を起こさないために、少し多めに仕入れするとか、Cランク商品の仕入れは最小限に抑えておけば、限られた在庫スペースも有効に管理することができます。

2:売上高の内訳を数値化できる

売上高の内訳とは、商品・品目ごとの売上高を意味します。売上の構成比や売れ筋商品を把握することで可視化することができれば、課題や将来の戦略が見えてきます。

ポイントは売上高や構成比を知るだけではなく、その商品の特性を理解しておくことが重要です。

また、総合商社のように企業が多くの業種の事業を営んでいる場合には、業種別(セグメント)で分析することもあります。

3:次の対策を検討しやすくなる

ABC分析表の分析結果から得た現状を確認することで、次の対策を検討しやすくなります。

例えば主力商品や顧客層を把握することで、力を入れるべき対象が明確になるため、事業の効率化や経営力を向上させることが可能になります。

ABC分析は、指標を売上高のみに限定したものではないため、他の指標を使った分析で得たABC分析表も併せて検討すると新しい観点からの対策案の立案の一助となります。

また、一定期間にわたってABC分析を行なうことで、事業の推移を定点観測的に把握することができるため、企業の実態に即した経営戦略を立案するためのデータとしても活用できます。

4:コストを抑えられる

例えば経費(一般管理費)を削減しようとする場合、すべての経費項目について削減方法を考えるのは効率的であるとはいえないでしょう。経費のなかで構成比が大きい項目にターゲットを絞って削減方法を検討します。

パレートの法則の考え方である「80:20の法則」からすると、上位にランクされる商品にかかるコストを削減すれば、かなりの成果が得られるということです。

売上高という指標からみると、売上を支えているAランクの商品について改善すればコストを抑えられるという考え方です。

ABC分析表の基本的な6つの作成手順

ABC分析表を作成する場合、その作成の手順があります。

ABC分析表は、一般的にはエクセルを用いて簡単に作成することができます。ここでは売上に関してABC分析を行う場合を例にして、ABC分析表の基本的な6つの作成手順について説明します。

1:必要なデータを集める

まずは、ABC分析を行なうために必要なデータを収集します。売上に関してABC分析を行う場合には、商品の品目ごとの売上高や売上個数のデータを集めます。

前述したとおり、ABC分析はエクセルで行なえるため、商品別売上高や売上個数はあらかじめデータ化しておくほうが、エクセル上に入力する場合に作業時間を短縮できます。

2:売上高を算出する

第2のステップは、売上高の算出になります。ここでの売上高は商品ごとの売上高を意味します。

売上高の求め方ですが、ある商品の販売単価が販売先によって異なるケースがあります。例えば、商品Aの標準販売単価は100円ですが、顧客によって90円や95円で販売しているというような場合です。

ABC分析では単純に、「商品の標準販売単価×販売個数=売上高」という計算方法で、売上高を計算します。

3:売上が高い順番に並べる

売上高が高い順番に表(テーブル)を並び替えます。この並べ替えは、パレート図を作成するときに必要となります。

エクセルでは、「データ」のタブで「並び替えとフィルター」で 「Z→A」(降順)をクリックすれば、大きい売上高から小さい売上高の順で並び換えを行うことができます。

並べ替えるときに、売上高のセルだけではなく、商品名や単価、個数など隣接するセルのデータも並べ替えの選択範囲に含めます。

4:累積額の計算を行う

売上高が高い順から並べた表ができましたら、累積額の計算を行います。

累積額とは、特定の階級までにある数のことで、計算は項目ごとの売上高を次々に足していくことで求めることができます。エクセルで「オートSUM」を使えば、自動的に計算されます。

5:累積構成比を算出する

累積構成比(累積比率)を算出します。

累積構成比とは、累積額の売上高に占める比率のことです。計算式は「累積構成比=累積額÷売上高」となります。この累積構成比は、パレート図の折れ線グラフを描画するときに必要となります。

6:決めたルール通りにグループ分けする

ABC分析表作成の最後のステップです。A、B、Cのランク付けのクライテリア(尺度)に従ってグループ分けを行います。

グループの分け方は、例えばAを売上高の80%、Bを15%、Cを5%とした場合では、トップの売上高の商品から累積構成比が80%になるまでの商品群がAランクになります。以下、95%(80%+15%)になるまでの商品群がBランク、それ以降がCランクという方法です。

ABC分析表の4つの活用シーン

ABC分析表を活用するメリットとは|作成手順や活用シーンも紹介
※画像はイメージです

ここまで、ABC分析表の作り方についてご説明しました。それではこのABC分析表は、どのように活用することができるのでしょうか。

代表的な活用方法は、在庫管理、商品の販売(売上)管理、コスト管理などですが、分析する指標として売上高以外の指標も使うことで、さまざまなシーンで使うことができます。その活用シーンを4つ紹介します。

1:メッセージ送信の際に顧客グループ別に優先順位づけしたい

メールやDMなどのメッセージを送るときに、顧客グループに優先順位づけしたい場合にABC分析の結果を活用することができます。 

全顧客にDMを発送していたのでは費用もかさみ、費用対効果が低くなります。そこでABC分析表を活用して、顧客にメッセージ送信の優先順位をつけ、Aランクのみに配送するという方法です。

この場合にポイントとなるのはABC分析の指標です。売上高を指標とした分析による順位だけを頼りにしてしまうのでは、問題があります。現在では、RMF分析などの顧客分析のデータも併用されています。

2:文具店で売上・コスト・不良品などのデータをランクづけしたい

例えば文具店では、ABC分析を活用して経営資源の効率的な配分を図ることができます。

売上高を指標とした分析により、Aランク商品の在庫管理を優先的に行い、欠品による販売機会の損失を防いだり、Cランク商品の仕入れすぎを防止するなどの対策を講じたりすることができます。

ABC分析の特徴は、指標が売上高に限定されてはいないことで、データをランク付けできるものなら何でも分析できるという点にあります。従ってコストや不良品の発生件数などを指標にすることができます。

3:居酒屋で売れ筋メニューを識別化したい

売れ筋だと感覚的に捉えていたメニューを、ABC分析を行うことによって「見える化」することができます。

分析によって、店舗の現状を正確に把握でき、Aランクメニューをメニュー板に大きく目立たせて載せたり、店内ポップなどでアピールしたりすることで、売上を伸ばすことができます。

注意する点は、居酒屋の売上高を指標とするABC分析を行う場合、フードとドリンクは分けて分析することです。またランチ営業を行っている場合は、ランチメニューについては夜営業の分析対象からは外す必要があります。

4:ネットショップでニッチ層へアプローチしたい

実店舗の場合には、陳列スペースに限りがあります。ABC分析の結果からCランク商品は露出や仕入を下げるとか、新商品への入れ替えを検討します。ところがネットショップの場合は、一概にはそうとも言えません。

なぜなら幅広い商品を取り扱うことによって、ニッチ層へのアプローチが可能になるからです。

ABC分析での注意すべき点は、「ロングテール理論」に当てはまる商品群です。「ロングテール理論」とは、複数のニッチな商品の合計の売上高が、主力商品の売上高を上回るという理論です。

ニッチな商品であっても、コンスタントに売れる商品なら売上を支えている場合があるため、ニッチな商品を掲載し続けることで、ニッチ層にアプローチすることができます。

ABC分析表を活用するときの3つの注意点

さまざまなシーンで活用できるABC分析ですが、活用するときの注意点があります。

基本的にABC分析は経験則であり、その法則に基づいて現状を分析して「見える化」したものです。分析する商品は、その特性や性質は度外視して、売上高や粗利益などの指標によって一律に評価されます。

また、経営戦略上で重要視されるべき商品群についても、これらは勘案されずに現状のみを分析していることになります。

以下では、ABC分析を活用するときの注意点を、具体的に説明しています。

1:季節商品や見せ筋商品を重要視する

季節商品や見せ筋商品については、注意する必要があります。

季節商品は、一年間全体での売上高が低くても短期間では大きな売上になるため重要度は高いでしょう。例えば、柏餅はスーパーマーケットでは一年を通して販売されていますが、売上は端午の節句に集中しています。

柏餅がCランクに位置づけられたからといって、販売商品から外してしまうのでは、店舗戦略として問題があります。

見せ筋商品とは、集客のために売れることを期待せずに置かれている商品のことです。 ABC分析ではCランクの商品なのですが、死に筋商品として商品ラインアップから外してしまうと、用途・機能・サイズなどが欠落してしまうために置いてある商品です。

商品の選択肢が少ないと、売れ筋の販売数量が落ちるため、商品選択の豊富感を演出するために、わざと置いている場合があります。

このようなシーズン性がある商品や、他の売れ筋商品と関連性が高い商品については、ABC分析の結果のみで判断や決定を行わないように注意しましょう。

2:新商品を重要視する

プロモーションに力を入れている新商品については、考慮する必要があります。

新商品だけに、売上構成比も高くない場合があります。ABC分析では、Cランクになっている可能性もあるでしょう。しかし、売上データは過去の販売実績であり、それを指標とした売上金額での判断は注意する必要があります。

3:一定期間のみ売れる「一過性の商品」の存在にも注意する

ABC分析を行うときは、「一過性の商品」の存在について注意が必要です。

テレビや雑誌で取り上げられた商品は、一時的に売上が急増しますが、すぐに現れて、またすぐに消えてしまいがちです。しかし、「一過性の商品」とみなされた商品が、その後、人気が安定化して定番商品となることもあります。

「一過性の商品」だからといって管理面で軽視することはできません。一年間の分析ではCランクに分類される場合でも、一時的には売上もよくてAグループに属していることがあります。

ABC分析に役立つツール4選

これまでに見てきたように、ABC分析表は、エクセルを使って作成することができます。ただ、エクセルで効率よく分析作業を行うには、累計計算にはオートSUM関数、ランク分けにはVLOOKUP関数などの関数や機能を上手く使う必要があります。

ABC分析やパレート図を作成する場合に、効率よく適正に作業を行うためには、既存のツールを活用することをお勧めします。

1:エクセルで使えるABC分析表abc-001

「Vector」は、株式会社ベクターが運営するソフトウェアのダウンロードサイトです。「エクセルで使えるABC分析表abc-001」は、このサイトに掲載されているソフトウェアで、無料ダウンロードすることができます。

「エクセルで使えるABC分析表abc-001」は、エクセルのテンプレートです。分析作業は、シートのセルに、商品名、原価、販売数を入力するだけの手間で済みます。

テンプレートには既に分析機能がプログラミングされているため、売上高、販売数、粗利益のABC分析結果に自動的に並び替えられます。

2:Google アナリティクス

Googleが提供する「Google アナリティクス」では、集客、行動、コンバージョンの概要を1つの画面で管理することが可能です。

ABC分析の結果から、どのようにしてユーザーをサイトに誘導し、どのように行動したのか、そしてどの程度コンバージョンにつながっていったのかを、1つの画面で管理することができます。

ABC分析は、SEM(Search Engine Marketing)分野でも有効な分析手法です。GoogleやYahooなどの検索結果画面で、自社のWebサイトが上位に表示されることは、企業にとっては大きな課題です。

3:Customer Rings

Customer Ringsは、株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供しているツールです。インターネットを利用した小売ビジネスであるEC通販の他、BtoC向けの顧客管理ツールで、11の豊富な分析ツールからなっています。

一連のプロセスが完全自動化されており、分析データをリアルタイムで閲覧することができ、「顧客生涯価値(LTV)」の最大化が期待できます。

ABC分析の他には、顧客の最近の購入日(Recency )、来店頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の 3つの指標からランク付けするRMF分析やLTV分析なども含まれていて、テンプレートも20種類が用意されています。

4:active core

「active core marketing cloud」は、株式会社アクティブコアが提供するツールです。

同社が開発したソフトウェアを使ったAIクラウド・マーケティングクラウドソリューションを提供していますが、このツールは、ECサイトのデータ分析に効果的なツールとなっています。データ分析からマーケティングコンサルティングまで一括でサービスを行っています。

ABC分析の結果を充実したレポート生成機能によって管理しており、直観的なオペレーションが可能なユーザーインターフェースを特徴としているサービスです。

ABC分析表の作成方法や活用法を把握しよう

ABC分析では、現状における売上の主柱となっている商品が何であるのか把握することができます。注力すべき商品がわかると、経営判断がスムーズになります。

ABC分析表の活用法は、企業の状況や商品・サービスの内容によって違ってくるため、注意が必要です。またABC分析は、数多ある分析方法のうちの1つです。自社にとって、どのツールが効率的であるのかをよく検討することが大切です。

状況の変化に応じてツールを変化させていく柔軟な姿勢が望まれるところでしょう。

Share

Facebook
Twitter
はてな

RELATED