ABC分析の4つの手順|パレートの法則・分析の目的とメリット
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初回公開日:2021年10月28日
更新日:2022年03月01日
ABC分析とは?
ABC分析は、商品を効率的に管理するために用いられる手法です。小売業では売上の分析によく使われ、企業の経営や販売戦略を考える際にも参考となります。
企業によって取り扱う商品は様々ですが、数ある商品の中で優先順位を決めて管理することが効率化につながります。
ABC分析を学んで、適正な在庫管理・売上管理に役立てましょう。
商品を「A」「B」「C」に分ける手法
ABC分析という名前の通り、商品をAとBとCの3ランクに分類します。Aは重要度が高く、Bは中間、Cは重要度の低い商品です。
商品を分類するにあたって、分析の軸を決めましょう。売上高を分析の軸に考えるとすれば、Aは売上の大半を占める売上貢献度の高い商品群です。Cは売上の割合が小さいため、重要度は低いと判断されます。
ここでは売上高を例に挙げましたが、販売個数や売上利益など他の項目に軸を設定すれば、違った視点でデータを分析できるでしょう。
パレートの法則
ABC分析を用いる際、「パレートの法則」というものが関連づけられます。パレートの理論で売上高について考えると次のようになります。
「全体の売上高に対して8割の売上を占めているのは、全商品のうち2割の商品である。」
パレートの法則によると、売上を生み出している2割の主力商品に注力することが重要となります。ABC分析はパレートの法則に基づいて、売上の8割を占める商品を重点的に管理しようという手法です。
ABC分析の目的とメリット
ABC分析の目的は、重要度の高い商品を優先して管理することです。売上を分析の基準にすれば、どの商品が売上に貢献していて、どの商品が売上に貢献していないのかを把握できるでしょう。
売上の高いAランクの商品は在庫を切らさないように管理し、保管場所を広く取るなど販売体制に力を入れます。一方で、売上の低いCランクの商品は最低限の在庫に抑えるか、取り扱いをやめることも検討しましょう。
売れ筋でない余分な在庫を持つことは、コスト増大の原因となります。在庫リスクは企業の経営にも関わることでしょう。適正な在庫にコントロールすることでコストカットを図れる点が、ABC分析のメリットです。
ABC分析の4つの手順
ABC分析をするには、データの準備と構成比の計算が必要です。分析の軸を売上高にするのか、販売個数や売上利益にするのかで用意するデータが変わってくるため、重要度の軸を決めてデータを揃えましょう。
ここでは、4つの手順でABC分析手法の説明をしていきます。
1:構成比の計算
最初にするのは商品のデータを準備することです。売上高で分析するなら、品目別の売上高をまとめておきます。
データが用意できたら売上構成比を計算しましょう。まず、商品を売上高の高いものから順番に並び替えます。次に、全商品の売上合計を出しましょう。
売上合計に対して、商品ごとに売上構成比を求めます。計算方法は、「対象品目の売上高÷全体の売上高」です。
2:累計構成比の算出
品目ごとの売上構成比が出たら、次は累計構成費を計算しましょう。商品を売上構成比の大きいものから順に並べ替えます。
1番上の商品が売上構成比50%なら、累計構成比は50%となります。2番目の商品が売上構成比25%とすると、累計構成比は50%+25%=75%です。上から順に売上構成比を足していくことで、累計構成比が求められます。
3:累積割合で分類
いよいよ商品をA、B、Cの3つに分類します。累計構成比を使ってランク付けしていきましょう。
・累計構成比70%〜80%はAランク
・累計構成比80%〜90%はBランク
・累計構成比90%〜100%はCランク
上記のように区分すると、全体の売上高に占める割合の大きい商品が見えてきます。Aランクに該当する商品は、在庫をしっかり持って重点的に管理するべきグループです。Cランクは売上が低いため、仮に取り扱いをやめても影響が少ないグループです。
なお、ABCをグループ分けするパーセンテージは、あくまでも目安です。実用するときは企業それぞれの状況に合わせて変更が可能です。
4:パレート図を作成
最後にパレート図の作り方を説明していきます。パレートの法則に基づいてABC分析の結果をグラフ化したのがパレート図です。
パレート図を作るために、ABC分類表を作成しましょう。ABC分類表は売上構成比や商品ごとのランクをまとめた表です。エクセルなど表計算のできるソフトがあれば、フォーマットを作っておくと便利でしょう。
ABC分類表を用意したら、表をグラフ化しましょう。2つの項目を1つのグラフに反映させます。
1つ目の項目は売上高で、金額の多い順に棒グラフで表します。2つ目の項目は累計構成比です。累計構成比は折れ線グラフで表しましょう。
分類表は数値のみですが、パレート図でグラフ化すると累計構成比80%に達している品目がどれなのか把握しやすくなります。
なお、エクセルのグラフ作成する場合は、テンプレートでパレート図があるため、活用すると良いでしょう。
ABC分析の注意点3つ
ここまで、ABC分析のやり方を見てきましたが、ABC分析は全てのケースに当てはまるわけではありません。
続いて、ABC分析を活用するにあたって注意が必要な点を3つご紹介します。
1:ネットショップの場合にはCグループにも着目する必要がある
インターネット販売においては、ABC分析の手法が必ずしも最適でない場合があります。これは、ネットショップで買い物をするとき、消費者がWeb検索をして商品を検索するためです。
Web検索の場合は、ABC分析のCランクに入る商品でも、検索にヒットすれば購入されることが多くなります。
上記の理由から、実店舗を持たないネットショップの場合は、Cランクのグループを継続して取り扱った方が消費者の需要に応えられる可能性があるでしょう。
2:一過性の商品の存在に注意する
平時は売上の少ない商品でも、テレビやSNSなどで取り上げられることにより、急に売れることがあります。
一過性の商品は人気が出たときに短期間で大きな売上を形成するため、動向を見極めて在庫を確保する必要があります。
普段はCランクに入る商品が一時的に売れ出したときは、品薄にならないよう注意しましょう。
3:季節商品・新商品にも注意する
一過性の商品と同じように、季節商品や新商品も短期間で動くものです。
季節商品は、年間で分析したときは売上構成比が低くなりますが、特定の期間に絞って分析すると全体の売上に占める割合が大きくなります。季節限定で重要度が高い位置付けになるため、在庫コントロールに気を配りましょう。
また、新商品はこれから売れる期待値を含めて重要度の高い分類と言えます。売り出してすぐAランクに入らなくても、プロモーションを強化して売上を伸ばしていくことが必要です。
ABC分析の手法についての理解を深めよう!
ABC分析は、商品の管理を効率的にするために有用な手法です。本記事では、売上高を主な指標として紹介しましたが、実際に活用するときは売上高、販売個数、売上利益など複数の観点で分析することをおすすめします。
売上高が大きくても、利益の薄い商品ばかりでは最終的な利益貢献度は低くなるでしょう。売上だけでなく利益の取れる商品に着目して販売戦略を立てるのも、重要なポイントです。
ABC分析を使って在庫管理の精度を上げ、売上と利益の拡大を目指しましょう。