コトラーのマーケティング理論6つの考え方|歴史と3.0と4.0に必要な3i
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初回公開日:2021年10月28日
更新日:2022年03月01日
コトラーとは?
コトラーは「マーケティングの父」と呼ばれている人です。コトラーはアメリカの経営学者で現代マーケティングの第一人者ともいわれています。他に有名なマーケティング関係の経営学者には、ピーター・ドラッカーやマイケル・ポーターがいます。
コトラーは先述したように「マーケティングの父」といわれているほどの人で、マーケティングに関する多くの著書があります。今回は、コトラーのマーケティング理論に関して解説を行います。
ドラッカーって誰?
ドラッカーは「マネジメント」という分野を初めて体系化した人です。コトラーが「マーケティングの父」と呼ばれるのに対し、ドラッカーは「マネジメントの父」と呼ばれています。
ドラッカーは自身を「社会生態学者」と呼び、マネジメントを論じています。日本でもドラッカーの本は有名なため、その名を冠した本を書店で見たことがある人は多いでしょう。ドラッカーは知識量が豊富で、物事の本質を見極める鋭さは高く評価されています。
ドラッカーのマーケティング理論
ドラッカーはマネジメントのイメージが強いですが、マーケティングにも長けています。その理論では、マーケティングを究極的には「販売を不要にすること」と定義しています。
ドラッカーのマーケティングでは「顧客の欲しいもの」を知り、「顧客の現実・欲求・価値を理解」することが重要となっています。つまり「顧客の状況を理解し製品やサービスを顧客に合わせることで、商品はおのずと売れていく」という考えです。
マーケティングといえばコトラーとも思われますが、ドラッカーのマーケティング理論を発展させたのがコトラーのマーケティング理論です。
コトラーのマーケティング理論6つの考え方
コトラーのマーケティングは、顧客や市場のニーズを見極め、それに対応することで、利益を上げていくという考えに基づいています。深堀して説明すると、「ターゲットを見定めてターゲットに必要な商品やサービスを提供する」ということになります。
コトラーのマーケティングでは、このことを6つの理論で体系化しています。ここでは、コトラーのマーケティング理論6つを解説していきます。
1:ターゲットを明確にする
コトラーのマーケティングの考え方に、「ターゲットを明確にする」ということがあります。ターゲットを明確にすることは、ターゲットを絞ることになります。
そのため、ターゲット範囲が狭くなっているように考えられますが、ターゲットを絞り込むことで、より一層、濃いアプローチをかけることが可能になります。
強烈で濃いメッセージを発することで、本来ターゲットでなかったユーザーに響くことも考えられるのです。
2:価値は顧客が決める
コトラーのマーケティング理論の1つに「価値は顧客が決める」というものがあります。企業は時として、自社の利益ばかりを考えて、顧客をないがしろにしてしまうことがあります。
このような行為は、その時は利益が見込めますが、後から顧客の信頼を失い、顧客を失う危険性もあるので注意が必要です。コトラーのマーケティングでは、顧客と長期的に良好な関係を築くことが重要とされています。
競合他社に勝つために顧客を無視したビジネスを展開するのではなく、顧客から選ばれる、価値を見出してもらえるビジネスを行うことが大切です。
3:価格ではなく価値を提供する
ビジネスにおいて「低価格」は非常に強力な武器であり、魅力的な戦略です。しかし低価格戦略は、最終的には競合他社と共に消耗し続ける可能性もあり、長続きする戦略とはいえないでしょう。
コトラーのマーケティング理論では、顧客が求めているものを知り、自社が提供するものを考え、その答えを探り、顧客がどんな価値を求めているのかを知る必要があるとされています。
価格ではなく、顧客の求めている価値を知り、その価値を適切に提供していくことが重要といわれています。
4:市場の再定義を行う
コトラーはマーケティングにおいて、市場の再定義を推奨しています。現在、販売している商品やサービスのシェアが50パーセント以上を占めていても、市場を広げてみたり、分野を変えてみたりすると、シェア率は急変するでしょう。
広げた市場や、分野を変えた市場に商品やサービスをコミットさせることで、新たな需要や商品が生まれる可能性があります。市場の再定義は常に意識しておくことが重要です。
5:価値ある情報の重要性
マーケティングでは、価値ある情報をどれだけ集めるのかが重要になります。情報は多すぎても少なすぎてもよくありません。
また、集めた情報をただの情報として扱うのではなく、その情報を市場に活かす「知恵」に転換することが大切です。情報を知恵に変えることで、市場や顧客に新たな価値、提案を行うことが可能になります。
6:創造的なアイデアを生む必要性
コトラーは企業に対し、新しい創造的なアイデアを生む必要性を説いています。創造的なアイデアを生む場合には、時として現在の成功例を否定することも必要になってきます。
現在の成功例を否定したり、全く新しいアイデアをゼロベースから立ち上げ、それを具現化していくことはとても難しい作業です。しかし、企業が発展し、市場で勝ち残っていくためには、うまくいっている時にこそ、新しいアイデアを生み出していく必要があります。
コトラーが提唱したフレームワークSTP分析
コトラーはマーケティングのフレームワークを提唱しています。そのフレームワークが「STP分析」です。
STP分析はマーケティングの重要な要素である「セグメンテーション(segmentation)」「ターゲティング(targeting)」「ポジショニング(positioning)」の頭文字をとった言葉です。
「市場をセグメント(小分け)し」「どのセグメントをターゲットにするかを決定し」「ターゲットに対して自社のポジションを明確にする」ということをマーケティングの基礎とする考え方になります。
マーケティングの4つの歴史
マーケティングは時代によって形を変えてきています。コトラーはマーケティングを年代によってそれぞれ1.0から4.0まで区分けしています。ここでは、コトラーの区分けした4つの歴史について解説を行なっていきます。
1:マーケティング1.0(製品中心)
マーケティング1.0は製品中心の「マス・マーケティング」とも呼ばれています。マス・マーケティングは市場の状況を考慮せず、ひとつの戦略と商品を徹底して市場に提供していく手法です。
年代として1900年代ごろから1970年代までがマス・マーケティングの時代といわれています。
マス・マーケティング は「大量生産・大量消費」の考えであり、顧客のニーズを考えて商品を市場に提供するのではなく、企業側が決めたルールで商品が大量に市場へ投入されていました。
この時代は需要に対し、供給が追いついていなかったため、この手法が成り立っていたといえるでしょう。
2:マーケティング2.0(消費者志向)
マーケティング2.0は1970年代から1980年代のマーケティングとされています。「製品中心」のマーケティング1.0とは違い「消費者志向」中心のマーケティングに変化した時代です。
この時代は、技術革新も進み、顧客となる消費者も企業が提供する商品をただ買うのではなく「良い商品を自分で選択したい」という需要が出てきた時代です。企業は消費者の声に耳を傾け、競合他社に勝つための工夫を行なっていくことになりました。
3:マーケティング3.0(価値主導)
マーケティング3.0は1990年代から2000年代にかけてのマーケティングです。マーケティング3.0では「世の中をより良い方向に」という今までとは違う概念が現れます。
インターネットの出現により、消費者は市場に投入されている商品がどのような背景で作られたのか、また、その商品を使用することで世界にどのような影響を与えるのかを知ることができるようになりました。
企業は消費者に対して、商品を通じてよりクリーンな企業をイメージさせることが重要になった時代といえます。
4:マーケティング4.0(自己実現)
2010年代になり、新しいマーケティングである「マーケティング4.0」という概念が普及します。
マーケティング4.0のキーワードは「自己実現」です。消費者は商品やサービスの良さだけで選択するのではなく「商品を使用している自分が好きになれるのか」という判断基準が現れているのが特徴です。
マーケティング4.0の最終目標は「商品を使用した顧客が他の顧客に商品を紹介する」ことといわれています。自分が心から納得し、他社に勧めたくなるような商品やサービスの提供を行うことが重要視されている時代です。
マーケティング3.0と4.0に必要な3i
マーケティング3.0と4.0の時代には、「3i」が必要とされています。3iとは、「ブランドアイデンティティ(brandidentity)」「ブランドイメージ(brandimage)」「ブランドインテグリティ(brandintegrity)」の3つ言葉の「i」をとった概念です。
マーケティング3.0や4.0の時代は、顧客はただのターゲットではなく、意思や意見を持った存在として見ていく必要があります。つまり、顧客のハートや価値観を尊重し、意識することが求められている時代といえます。
3iは、そのような時代に対応するための概念となります。
ブランドアイデンティティ
ブランドアイデンティティは、顧客から見て自社がどのような位置づけであるのかを指すものです。企業の取り組みや企業が提供している商品を通じて、企業が顧客からどのような視線で見られているのかを表します。
ブランドイメージ
ブランドイメージは、商品やサービスを通じ、自社がどのように顧客から見られているのかを表すものです。マーケティング3.0から4.0の時代では、顧客は商品やサービスを使用することで、世の中にどのような影響があるのかを意識します。
世の中に良い影響を与えている企業というブランドイメージを顧客に持ってもらうことが非常に重要といえます。
ブランドインテグリティ
ブランドイングリティは、消費者の観点からの「企業の誠実性」です。自社の利益ばかりを追い求め、世の中のためになっていない企業と思われては、どんなに性能のいい商品、低価格の商品であっても、顧客に受け入れられない可能性もあります。
世の中に貢献するため、他の企業とは違う取り組みを行なっているなど、顧客に誠実性が伝わる取り組みが重要視されています。
コトラーのマーケティング理論についての理解を深めよう!
今回は「マーケティングの父」とも呼ばれるコトラーのマーケティング理論について解説しました。コトラーのマーケティング理論は、マーケターであれば必ず押さえておきたい理論です。
今回の記事を参考にコトラーのマーケティング理論に関して理解を深め、日々の業務に活かしていきましょう。