マーケティングにおける戦略立案プロセス|使えるフレームワークも紹介
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初回公開日:2021年10月28日
更新日:2024年05月31日
マーケティング戦略の定義
マーケティング戦略とは自社の商品やサービスを「どういったターゲットに、どれくらいの対価で、どのように提供していくか」を決めていくことを指しています。
まずセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングで誰が顧客とするのか、自社や自社製品を顧客にどのような位置づけでみてもらいたいかを分析します。
そのうえで、4Pで、顧客に対して自社の製品やサービスをどれくらいの価格でどんな流通チャネルで提供していくか、また自社や自社製品をどのようにプロモーションしていくかの計画を立てます。
マーケティングにおける6つの戦略立案プロセス
戦略を定めるまでには6つのプロセスがあり、順を追って分析を進めていく必要があります。
ここでは、マーケティングにおける6つの戦略立案プロセスについて1つずつ紹介していきます。
1:フレームワークを使った環境分析
マーケティングで最初に行うべきことは、自社が属する業界の環境を分析していくことです。
マクロな環境分析を行った上で顧客や市場、自社に関する詳細な分析と解釈を行い、「自社の強み」と「顧客に対しての価値」が何かを明らかにします。
2:セグメンテーション市場を細分化する
最初に自社を取り巻く環境の分析ができたら、次は市場の細分化を行います。これをセグメンテーションと呼びます。この細分化は、自社の商品やサービスにとって、全体の中のどのターゲットが顧客となりうるのかを決めるうえで非常に重要です。
年齢や性別、地域などによる細分化のほか、複数の要件を組み合わせて細かく細分化していくこともあります。その市場にいる消費者のニーズや価値観などをもとに市場を分析、細分化していきます。
3:対象とする顧客を決める
市場が細分化できたら、その中から自社の商品やサービスを売り込むことのできるターゲットを決めます。自社の商品の強みを生かせる市場を特定することをターゲティングといいます。
自社の商品やサービスの強みを生かすためには、その市場の動向や顧客の属性、競合企業が存在するのかなどを考えることが重要です。「誰に対して」であれば強みを生かせるのかを明確にします。
4:価値の提供を定義する
ターゲティングによって売り込むべき市場が確定したら、次に行うことはポジショニングです。自分たちが定めた顧客に対してどのような立ち位置で、どんな価値が提供できるかを決めます。
このステップでは、顧客に対して、自社の商品やサービスが競合とは違いがあり、より優れているという見せ方ができるかが重要になります。差別化できる特徴を見出すために、ポジショニングマップを使うこともあります。
5:価値を顧客に届ける方法を考える
自社の商品やサービスを提供したいターゲットが明らかになれば、次に行うべきことは「それをどうやって届けるか」を考えることです。
これは定めたターゲットに実際に売り込むに向けてのマーケティングの実行戦略であり、マーケティングミックスといいます。主に「4P」というフレームワークを用いて分析することが多いです。
4Pは「製品(Product)」「価格(Price)」「流通や販路(Place)」「販促(Promotion)」のそれぞれの頭文字を取っています。そのほか、近年は消費者の視点を重視し「4C」という考え方を取り入れる場合も増えています。
6:戦略を決める
自社の製品やサービスを提供すべきターゲットを確定し、そのターゲットに対しての立ち位置と提供の仕方(販路)が定まれば、マーケティングの戦略立案までができたことになります。
ここまでが定まれば、後は実行へと移ります。なかにはエリアなどを絞って限定的に販売を行いながら本格的な実行へ移していくこともあります。
実行段階で重要なことは、その戦略が適切であるかを評価することです。うまく売れない場合にどこを改善した方がよいのかを見るために、プロセスごとに評価を行うとよいでしょう。
マーケティングの戦略立案に使えるフレームワーク6選
マーケティングでは、環境分析に始まり戦略立案までのプロセスで多くの分析を行います。分析にはフレームワークの活用が欠かせません。
ここでは、マーケティングの戦略立案までに活用できるフレームワークを6つご紹介します。
1:3C分析の活用
3C分析とはCustomer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)という3つの「C」について分析するために用いるフレームワークです。
前述のとおり、マーケティングでの戦略立案プロセスにおいて、最初に自社を取り巻く環境の分析を行います。
この際に外部環境と内部環境の両面を見る必要があります。外部環境とは、自社で調整することのできない環境要因で、内部環境は自社で調整可能な要因を指します。
3C分析では外部環境である「市場・顧客」「競合」と、内部環境である「自社」の両面を分析します。
2:STP分析の活用
STPとはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングのそれぞれの頭文字を取ったもので、戦略立案までのプロセスにおいての順序を示しています。
どのようなセグメントをターゲットにするかでポジショニングは異なります。また、ターゲット顧客や自社が目指すポジショニングによって、最適な4Pの組み合わせも変わります。
そのため、戦略を立案する上では、まずセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを定めることが重要です。
3:PEST分析の活用
PEST分析とは、自社の商品や業界を取り巻く外部環境を4つの視点に分けて分析を行うマーケティングフレームワークです。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの象限に分けて外部環境を分析します。
PEST分析はマーケティングプロセスにおいて最初に行うべきとされています。外部環境は自社でコントロールできないため、外部環境に自社の戦略が適合できるようにする必要があるからです。
4:SWOT分析の活用
SWOT分析とは「Strength(強み)」、「Weakness(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Threat(脅威)」の4つの要素を用いて行う分析です。
内部環境として自社の強みと弱み、外部環境として機会と脅威について分析します。自社を取り巻く環境を多角的に分析したい場合に活用します。
5:4C分析の活用
前述のとおり自社の商品やサービスを売り込むべき市場や立ち位置が決まったら、次に行うのは商品をどのように届けるかを定めることです。
この際、活用できるのが4C分析や4P分析です。4C分析では商品の提供について消費者の立場で価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4つの視点に分けて分析します。
もともとは後述する4P分析が主流でしたが、4C分析はそれを消費者側の視点に再定義したものとなります。
6:4P分析の活用
消費者側の視点で分析する4Cに対して、企業側の視点で分析を行うのが4P分析です。4P分析では、製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つのPに分けて顧客への提供方法を分析します。
顧客側の視点も企業側の視点もいずれも重要であり、マーケティング戦略はこの2つの観点を軸としながら作り上げていく必要があります。
企業によるマーケティングの戦略立案事例3選
マーケティングの戦略立案のプロセスやその際に活用するフレームワークについてご紹介してきました。
実際に行われたマーケティング戦略立案にはどういったものがあるのでしょうか。ここでは、マーケティング戦略立案の事例を3つご紹介します。
1:アメリカのリーディングプロバイダー会社の場合
マーケティングオートメーションで有名なマルケトによって作られたMarketo Engageは現在、全世界で5000社以上の企業で導入されています。
マルケト社ではマーケティングオートメーションツールによってセグメンテーションを行い、さらにインフルエンサーと意思決定者を絞り込むことまでを行いました。
そのうえでターゲットに応じてパーソナライズしたメール送信や、コンテンツをパーソナライズしたWebサイトとランディングページを作成したり、顧客グループの特性に合わせてメッセージを変えたFacebook広告などの表示を行うことで、目標の3倍以上の認知を獲得しました。
2:アメリカの教育機関向け管理機能ソリューション運営会社の場合
School Dude社は教育機関向け管理機能ソリューションを米国やカナダ、ヨーロッパ、中東、オーストラリアなど世界中の教育機関に導入している会社です。
この会社では高等教育業界を30のセグメントに分け、高等教育業界の最新情報や、ブログやビデオなどのお役立ちコンテンツをターゲットによって使い分けてWebに表示するようにしました。
ウェビナー登録者500件のうちの30件がこの戦略によって得られ、また、東海岸で400以上のユーザーカンファレンスの登録を獲得しました。
出典:マーケティング戦略の立て方と実践例をご紹介|Adobe
参考:https://jp.marketo.com/content/marketing-strategy.html
3:大手外食チェーン店の場合
ハンバーガーチェーンで有名なマクドナルドは2年ほど業績不振に陥りましたが、プロモーション活動により不振から脱却しました。
回復したポイントはプロモーション活動にSNSやWebを活用したことで、4P分析の効用の事例です。SNSで口コミが広がる条件を分析した結果、「議論したくなる」「つっこみたくなる」「写真を撮りたくなる」の3点を導き出し、これを活用してSNSやWebへ展開しました。
期間限定のメニューだった商品が顧客のSNSを発端にレギュラーメニューになったものもあります。
Webマーケティングの戦略立案に必要な4工程とフレームワーク
ここまでマーケティング戦略立案について紹介してきましたが、近年では 特にWebマーケティングの重要性が増しています。Webマーケティングは、「顧客が商品やサービスを購入するまでの流れについて、すべて数値を把握できる」という特徴があります。
Webマーケティングにおける戦略立案はどのようなプロセスで行うのでしょうか。Webマーケティングでは現状分析に始まり、企画戦略立案、戦略の可視化、戦略の振り返りという4つの工程で進めます。
ここでは、必要な工程で活用するフレームワークについてご紹介します。
1:現状分析工程の場合
最初の工程として、現状を分析して課題を明確にします。これを行うために前述の3C分析やSWOT分析、PEST分析などのフレームワークを活用します。
これらを活用する背景としてMECEという考え方があります。
MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略であり「お互いに重複せず、全体に漏れがない」という意味です。Webマーケティングの戦略を練る上で、要素が重複したり、肝心な要素が抜けているということを避けるための考え方です。
活用できるフレームワークは、この他にバリュー・チェーンや5フォース分析もあります。
2:企画立案工程の場合
現状分析によって自社の持つ強みや弱み、影響する外的環境要因などを踏まえて要点を洗い出すことができたら、次は企画立案工程に入ります。
この工程で活用するフレームワークは「STP分析」「4C分析」「4P分析」などです。この工程で自社製品の位置づけや詳細なターゲット、売り方やプロモーション法など、具体的なマーケティングの企画内容を固めていきます。
3:戦略の可視化工程の場合
企画立案まで進んだら、戦略の実行に向けて戦略を可視化、すなわち数値目標を立てる必要があります。この際に活用するフレームワークは「KPIツリー」や「カスタマージャーニーマップ」などです。
KPIツリーとは特に数値を向上させたいものを1つ定め、それを構成する要素を分解していく作業のことです。Webマーケティングの場合、「売上」や「会員数」が該当します。KPIツリーによって、成果を出すためにどの要素に着目すべきかが考えられるようになります。
また、カスタマージャーニーマップは顧客が商品やサービスを知ってから購買に至るまでのプロセスを図式化したものです。図式化することで購買に至らない理由が明確になります。
4:施策の振り返り工程の場合
実行した結果を振り返り、効果がどれくらいあったかを分析することは、改善や次の施策への足掛かりにもなり、非常に重要です。振り返りでは「KPT」や「PDCA」などのフレームワークを活用します。
「KPT」では実施した取り組みや進め方を「KEEP」「PROBLEM」「TRY」の3つの観点で評価します。
KEEPは続けるべきこと、施策において成功したことや良かったことを挙げます。PROBLEMは問題や施策において失敗したことや悪かったことを挙げます。最後にTRYは次に挑戦することを挙げます。これによって、施策の結果や次になすべきことが明確になります。
また、PDCAは継続的に改善を繰り返すためのフレームワークです。施策が次の問題の発見につながる場合があるので、PDCAサイクルを繰り返し回し、継続的に施策を検証します。
マーケティングの戦略立案を考えよう
マーケティングの戦略立案のプロセスをご紹介してきました。
マーケティングでは、環境分析に始まり戦略を実行するまでに多くのプロセスを踏む必要があります。また、実行後もその戦略が適切かを随時評価しながら必要に応じて見直しをしていきます。
やることはたくさんありますが、自社の商品やサービスが市場で売れるしくみを作り上げることのできるやりがいのある仕事です。ぜひ、フレームワークを活用しながら戦略立案までトライしてみましょう。