企業と業界別によるマーケティングリサーチの事例|代表される主な手法も紹介
マーケティングリサーチの需要は?
マーケティングリサーチは、企業がマーケティング活動を行う上で発生する課題を解決するために、顧客のニーズや市場動向などを把握し、分析することです。
的確なマーケティングリサーチを実施することにより、ターゲットのニーズにマッチした商品やサービスの開発にも繋がります。そのため、マーケティングリサーチは、マーケティング活動を行う企業にとって高い需要があると言えるでしょう。
マーケティングリサーチと市場調査の相違点
マーケティングリサーチは日本語では「市場調査」と訳されるため、市場調査と混同されるケースが多いです。しかし実際には、市場調査が市場動向を探るものであるのに対して、マーケティングリサーチは市場の中身や顧客なども調査するという違いがあります。
つまり、ビジネスの現場である市場を把握する目的で行われるのが市場調査、市場の潜在的なニーズまで予測するのがマーケティングリサーチであると言えるでしょう。
マーケティングリサーチの5つの必要性
マーケティングリサーチはマーケティングにおける課題解決のための意思決定をサポートするために行われます。それでは、マーケティングリサーチには具体的にどのような必要性があるのでしょうか。
ここではマーケティングリサーチの5つの必要性を紹介していきますので、参考にしてみてください。
1:自社製品に対するイメージを知るため
マーケティング活動を成功させるには、自社製品に対する顧客のイメージを把握する必要があります。しかし、企業内部からでは自社製品がどのようなイメージになっているのか知ることはできません。
そのため、マーケティングリサーチでは自社製品に対する市場のイメージを知るために実施されます。
2:顧客が不便に感じていることを知るため
ビジネスを成功させるには、ターゲットとする消費者のニーズを満たすだけでは足りません。顧客が不便に感じていることを知り、その課題を解決する方法として製品やサービスを提供することで、顧客満足度を向上させることも重要でしょう。
そのためにはマーケティングリサーチを行い、顧客がどのような課題を抱えているのかを調査する必要があります。
3:ビッグデータを活用するため
近年では、普通のコンピュータでは扱えないような膨大な量のデータ群であるビッグデータが注目されるようになってきました。マーケティングリサーチはこのようなビッグデータと同一の文脈で語られることも多いほど、両者は深く関係しています。
ビッグデータはWebサイトへのアクセス情報やGPS情報、POSデータなど誰が行ったのかわからない行動結果のデータが蓄積されているケースがほとんどです。
このようなビッグデータをマーケティング活動に活用するためには、マーケティングリサーチによって新しい知見をプラスすることで利用できるデータへと昇華させることが大切でしょう。
4:既存ブランドや商品のマネジメント課題を解消するため
どのように人気のあるブランドや商品であっても、時間が経過すれば顧客ニーズの変化などによって人気にも陰りが生じます。
このような既存ブランドや商品のマネジメント課題を解決するには、マーケティングリサーチによってそのブランドや商品がどのようなイメージを持たれているのかを調査することが重要です。
また、マーケティングリサーチによって、ブランドや商品のマイナスのイメージを変えるための具体的なリブランディング施策も検討できるようになるでしょう。
5:新市場を開拓しやすくするため
マーケティングリサーチでは単に市場の現状を調査するだけでなく、顧客や競合などについても調査を行います。そのため、マーケティングリサーチによって市場の現状を把握することができれば、まだ競合が存在していない新しい市場も開拓しやすくなるでしょう。
競合がいない市場を開拓することができれば、新しい市場における自社の優位性も保ちやすくなります。
マーケティングリサーチに代表される主な手法
マーケティングリサーチを実施する場合、調査手法としては大きく分けて調査結果を数値として表現できる「定量調査」と数字では表せない「定性調査」の2種類があります。また、これらの手法の中にもそれぞれ多くの調査方法が存在しています。
ここではマーケティングリサーチに代表される主な手法を紹介していきますので、どのような手法があるのか参考にしてみてください。
定性調査の3つのポイント
定性調査は定量調査のように結果を数字で表すことができない調査のことを指します。たとえば、ターゲットから意見を聞いたり、行動を探ったりするのが定性調査です。
定性調査を実施することで、特定の事象が発生した要因について深く探ることが可能になります。ここでは、まずは定性調査の3つのポイントを紹介していきます。
1:定性調査の種類とは
定性調査の種類としては、「インタビュー式」「ショップアロング」「行動観察調査」「ミステリーショッパー」などの種類があります。
インタビュー式の調査は調査対象に直接インタビューを行う手法となっており、個人に対して深く聞く「インデプスインタビュー」とグループでインタビューを行う「グループインタビュー」の2種類にわかれます。
また、ショップアロングは商業施設などでユーザーが買い物を行った後でインタビューを行う調査、行動観察調査はユーザーの行動パターンや心理を調べる調査、ミステリーショッパーは店舗に気付かれないように客として潜入したモニターが商品の陳列や清掃などを調べる調査です。
2:定性調査を実施するメリット
定性調査では直接ターゲットにインビューを行うことで、定量調査ではわからないユーザーのリアルな声を聞くことができるというメリットがあります。
また、自社の商品やサービスを購入しているユーザーの意見を得ることで、自社の仮説や想定などにとらわれない、新しいアイデアをひらめくヒントにもなります。
また、定性調査ではユーザーの意見だけでなくユーザー本人も気付いていない深層心理を発見することができるでしょう。
3:定性調査を実施するデメリット
定性調査は定量調査のように多くのサンプル数を集めることができないため、消費者や市場全体の傾向が出ているとは言えないというデメリットがあります。
また、インタビュー形式の定性調査を行う場合、質問を行うインタビュアーのスキルによってターゲットから聞き出せる内容も異なってきます。
また、比較的簡単に実施できる調査が多い定量調査と違い、定性調査ではインタビューを行うための会場の手配やインタビュアーの選出などを行う必要があるため、コストがかかる傾向にあります。
定量調査の3つのポイント
定量調査とは調査対象の量や割合を調べる調査のことで、調査結果は数値として集計したり、比較したりすることができます。また、定量調査での調査結果はグラフ化し、レポートを生成するのが一般的です
定量調査を実施することで、特定の商品やサービスの認知度や年代別の利用率などを調べることができます。ここでは、定量調査の3つのポイントを紹介していきます。
1:定量調査の種類とは
定量調査の種類としては、「アンケート調査」「会場調査」「ホームユーステスト」などの種類があります。また、アンケート調査の中にも実施の方法によって「訪問調査」「電話調査」「FAX調査」「インターネット調査」「街頭調査」「郵送調査」などの種類があります。
会場調査は会場で調査対象者に製品などを試してもらい、感想をもらう調査方法です。ホームユーステストは会場ではなく調査対象者の自宅に商品を送り、感想をもらう手法となっています。
2:定量調査を実施するメリット
定量調査では調査結果が数値として現れるため、説明する際に説得力が生まれるというメリットがあります。また、サンプル数が少ない定性調査と違い、定量調査では一度の調査で100~1,000ほどのサンプルを利用することになるため、比較的誤差が出にくいです。
さらに、それらの多くのサンプルを短期間で回収できるといったメリットもあります。
3:定量調査を実施するデメリット
定量調査ではアンケートなどの設問文や選択肢を用意し、それを見て答えてもらう形式になるため、設問や選択肢の書き方が異なると結果まで変化するというデメリットがあります。
また、調査結果は集計する必要があるため、統計的な専門知識が求められます。さらに、定量調査は比較的短期間で回答を回収できるメリットがありますが、調査内容によっては時間がかかったり回収が難しかったりすることもあります。
企業と業界別によるマーケティングリサーチの5つの事例
マーケティングリサーチは多くの企業が実施しており、ビジネスの成功へ繋げています。そのため、マーケティングリサーチを実施する場合は具体的な事例について把握し、参考にすることも大切です。
ここでは企業と業界別によるマーケティングリサーチの5つの事例を紹介していきますので、どのような事例があるのか参考にしてみてください。
1:フリマアプリ運営会社の場合
某フリマアプリ運営会社の事例では、インターネット調査によって第三者からのフラットな意見をマーケティングに活かしています。自社のユーザーに対する満足度調査ではバイアスがかかりますが、外部調査であれば客観的な意見を収集することができるでしょう。
また、実際に調査結果として現れた高い認知度をCMのコピーにも活かしています。
2:大手ビールメーカーの場合
大手ビールメーカーの事例では、インターネット調査やグループインタビュー、モニター調査などによるリサーチ主導型での新商品の開発を行いました。
この調査では約5,000人の調査対象者に対してノンアルコールビールの飲用状況などを調査し、ノンアルコールビールに対しては機能性よりもビールに近い味というニーズが高いことを突き止めました。
また、ターゲットを「ビール愛飲者」にして商品開発を行い、ノンアルコールビールの大ヒット商品を生み出しました。
3:大手流通持株会社の場合
大手流通持株会社の事例では、商品開発に参加できるコミュニティを立ち上げ、消費者の意見を参考にプライベートブランドの商品開発を行っています。
実際にヒットとしたプライベートブランドの高級食パンは、一般的な価格を大きく上回る価格設定となっています。
しかし、コミュニティのメンバーを対象に同価格帯の他社の食パンとの食べ比べのホームユーステストを行った結果、約7割のメンバーからプライベートブランドの食パンの方がおいしいという評価を得ています。
4:インターネット求人広告サイト運営会社の場合
某インターネット求人広告サイト運営会社の事例では、独自調査の結果を活かしたSEO対策を行っています。コンテンツ作成のために独自調査を行い、プレスリリースや自社コンテンツで発表、さらに被リンクを獲得することで検索順位がアップしています。
実際にこれまでのプレスリリースの多くがメディアで記事となり、テレビの取材対象になっているなど、良い結果を残しています。
5:ネットリサーチ会社の場合
某ネットリサーチ会社の事例では、海外を対象としたマーケティングリサーチを行っています。アジアでもかなりのパネルネットワークを保有しているため、アジア各国に対するオンライン調査も実施することができます。
実際にこれまでにも中国や韓国、台湾などを対象にしたクレジットカードのブランド調査や、中国、台湾、タイを対象にした訪日旅行に関する意識調査などを実施しています。
マーケティングリサーチを始める11の手順
マーケティングリサーチを実施する場合、実際に調査を開始する前に十分な準備を行うことが大切です。ここでは最後に、マーケティングリサーチを始める11の手順を紹介していきます。
1:調査の目的を明確にする
マーケティングリサーチを始める前に調査の目的を明確にしましょう。調査の目的は漠然としたものではなく、できるだけはっきりと設定する必要があります。
そのため、まずは自社のマーケティング課題を整理し、その中で特に優先度が高く、調査によって明らかにできる内容を目的として選定するようにしましょう。
2:調査の目標を設定する
マーケティングリサーチを行う目的が決まったら、調査の目標を設定します。目標を設定する際には、市場の状況や調査対象の商品の普及率などを調査し、自社を取り巻く環境について改めて確認する必要があります。
また、目標設定の時点で調査後に調査結果をどのように活用するのかも合せて検討しておきましょう。
3:自社の強みと弱みを分析する
目標設定を行ったら、現時点での自社の強みと弱みを細かく整理していきましょう。強みと弱みをより深く掘り下げていくことにより、自社の現状を具体的に把握できるようになります。
また、現状把握をしっかり行うことで、調査票の設計を行う際に質問項目が作成しやすくなるでしょう。
4:分析を元に仮説をたてる
現状把握を行ったら、分析結果を基にした仮説を複数立てましょう。仮説とは調査結果をあらかじめ予測しておくことです。
たとえば、調査の目的が「商品の普及率が悪い原因を知る」ことだとすると、仮説としては「価格が高すぎる」「味が濃い」「デザインが良くない」などの仮説を立てることができるでしょう。また、これらの仮説は調査票の選択肢として利用されます。
5:調査にかけられる費用と時間を把握する
仮説設定が完了したら、調査にかけられる費用と時間を確認しましょう。マーケティングリサーチはどの調査手法を利用するのかによって、必要となる費用も時間も変わってきます。
時間がかかる調査手法を採用する場合は想定している期間を超えてしまう可能性もあるため、費用や期間などの全体像を把握し、余裕を持って調査に取り組めるようにしましょう。
6:リサーチ方法を検討する
ここまでの準備が完了したら、リサーチ方法を決めていきましょう。リサーチ方法には、本記事でも紹介してきたように大きく分けると定量調査と定性調査があります。
どちらの調査手法を選択する場合でもリサーチ項目は設定していく必要がありますが、ここでは定量調査のアンケート調査を行うものとして話を進めていきます。
7:リサーチの項目を決める
調査票を作成する際には、リサーチ項目を決定する必要があります。また、同時に対象者の設定も行います。
調査票でのリサーチ項目は、事前分析で設定している目標に沿って必要な内容に絞り込みましょう。回答方式には選択回答やマトリクス形式、自由回答などの種類があります。
8:調査開始を実行する
リサーチ項目を決めてアンケートを作成したら、実際にマーケティングリサーチを実行しましょう。
ここで例にしているアンケート調査を行う場合は、インターネット上で用意したアンケートフォームに入力してもらう、調査票を対象者に郵送してもらうといった方法になります。
調査票の作成時の注意点として、質問の量や長さに注意しましょう。
9:回答を集計して分析する
アンケートの回答を回収し、マーケティングリサーチの結果を集計しましょう。集計方法としては、主に設問別に回答を集計する単純集計と、複数の項目を縦横で掛け合わせて集計するクロス集計が用いられます。
また、アンケートの結果を深掘りする場合はクロス集計が活用されます。
10:分析結果をレポートする
分析結果を基に結果をレポートにまとめましょう。
分析結果はグラフや表にし、レポートとしてアウトプットするのが一般的です。アンケート調査のような定量調査の場合は結果が数値として現れるため、結果をグラフ化してレポーティングすることができます。
11:マーケティングリサーチを振り返る
ここまでの一連の流れを通して、マーケティングリサーチの振り返りを行いましょう。設定したマーケティングリサーチの目的を達成できたのかどうか、マーケティングリサーチが的確なものだったかどうか、反省すべき点がないかどうかを検討していきます。
また、反省点があった場合は次回の実施では改善できるようにしましょう。
マーケティングリサーチの事例を参考にしよう
マーケティングリサーチは、マーケティング活動を行う上での課題を解決するためのさまざまなデータを収集し、分析を行うことを指します。
ぜひ本記事で紹介したマーケティングリサーチの必要性や主な手法、具体的な事例、始める手順などを参考に、自社の活動に役立つ的確なマーケティングリサーチを実施してみてはいかがでしょうか。