心理的価格設定の9つの種類|企業による事例と利用するときのコツも紹介
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初回公開日:2021年10月28日
更新日:2022年03月01日
心理的価格設定を行う必要性
心理的価格設定とは、顧客の価格へ対する、心理に影響を与える価格設定のことです。顧客は多くのことを考えながら商品を購入するか否かを決定します。そのため、多くの店舗では商品やブランドに応じて、この心理的価格設定を行なっています。
心理的価格設定を行うことで、顧客心理をコントロールすることが可能になり、結果的に売り上げや利益を上げることができます。今回は、この心理的価格設定に関して解説を行います。
心理的価格設定の9つの種類
新商品や売り出したい商品をPRする際には、価格設定は非常に重要になります。安すぎてもいけませんし、高く設定しすぎて売れなくなるのも困ります。心理的価格設定は、顧客の購買心理の要因に基づいて価格を設定する手法です。
心理的価格設定がうまくいくと、狙った商品が狙った価格で販売できるため、売り上げと利益の向上に繋がります。ここでは、9つの心理的価格設定について解説していきます。
1:端数価格についての概要
心理的価格設定の1つ目は「端数価格」です。端数価格は、1000円や2000円といったキリのいい価格ではなく、980円や1980円といったわざと端数を出す価格設定のことです。
実際の価格差は大したことがありませんが、価格を見ている顧客の心理としては、なぜか価格差以上に安く感じてしまうのが、この端数価格の特徴です。家電量販店などがよくこの手法を採用しています。
価格をキリよく並べるのではなく、端数で価格設定を行うことで、売り上げの向上が見込めます。
2:名声価格についての概要
心理的価格設定の2つ目が「名声価格」です。名声価格は「品質の良さ」や「プレミアム価値」といった他の商品とは一線を画す商品としてブランディングを行い、より高い価格設定にする手法です。
現在、市場に出回っている商品やサービスにも、同一ブランドでありながら、プレミアムの位置づけであったり、ブランド名の違いで高価格帯に設定にされている商品やサービスが多数見受けられます。
名声価格を設定することで、商品やサービスをあえて高く販売することが可能になります。
3:慣習価格についての概要
心理的価格設定の3つ目が「慣習価格」です。慣習価格とは、以前からずっと設定されてきた価格であり、消費者である顧客にもその価格が浸透している価格のことです。例として、自動販売機のジュースやたばこなどが挙げられます。
このように刷り込まれた慣習価格の場合は、それ以上安くする必要がありませんが、逆に大幅に値上げを行うことは難しいでしょう。新たに商品やサービスを展開する際には、類似商品で慣習価格が根付いていないかをリサーチすることも重要です。
4:段階価格についての概要
心理的価格設定の4つ目が「段階価格」になります。段階価格は「松竹梅」の法則ともいわれています。簡単にいうと「300円」「500円」「800円」の価格設定の商品があった場合、真ん中の500円の価格設定商品が一番売れるという法則です。
真ん中を選択しやすいという人間の心理を利用した心理的価格設定になります。もし、自社商品で一番売りたい商品がある場合には、段階価格を設定し、一番売りたい商品価格を真ん中に設定してみるのもいいでしょう。
5:抱き合わせ価格についての概要
心理的価格設定の5つ目が「抱き合わせ価格」です。抱き合わせ価格は、メインで販売する商品に別の商品を抱き合わせ、セットにして販売する手法です。
この心理的価格設定では、単品で別々に購入すると、セットで買った場合よりも高値になるように設定されているのが一般的です。
抱き合わせてセットで買えばお得であると顧客に思わせて、複数の商品を購入してもらうように誘導するのが、抱き合わせ価格になります。
6:プライスライニングについての概要
心理的価格設定の6つ目が「プライスライニング」です。プライスライニングとは、商品のランクに応じて価格設定を行う手法です。
例えば3つの同一商品があった場合に「1000円」「3000円」「5000円」といったように「安価」「標準」「高価」といったランク設定を行い、ランクに応じた価格を設定する心理的価格設定です。
製品ライン全体で利益を取ることができ、顧客も自分の予算に合った商品を容易に選択することができるというメリットがあります。
7:均一価格についての概要
心理的価格設定の7つ目は「均一価格」です。均一価格は、商品の価格を一律に統一してしまう手法です。この均一価格の代表例が「100円ショップ」です。
均一価格を設定している店舗や企業が顧客の支持を伸ばしている理由は、「わかりやすさ」です。何個買っても計算が簡単で、予算も立てやすいため、顧客にとって買いやすい仕組みになっています。
8:コストプラス法についての概要
心理的価格設定の8つ目が「コストプラス法」です。コストプラス法を簡潔に説明すると「原価に利益をプラス」するという、いたって単純な手法になります。
基本的に、価格設定をする際には多くのことを加味しながら設定しますが、コストプラス法の場合、単純に欲しい利益だけを原価にプラスして設定します。競合が少ない場合などに採用することで、比較的楽に価格を設定できます。
9:マークアップ法についての概要
心理的価格設定の9つ目が「マークアップ法」です。マークアップ法の基本的な仕組みはコストプラス法と同じで、「原価に利益をプラス」するという手法です。しかし、マークアップ法は卸売業者が主に使用する手法になります。
コストプラス法の場合、単純に原価に欲しい利益分をプラスするだけでしたが、マークアップ法の場合は原価の中に「仕入れ原価」や「人件費」「販促費用」といった経費も含めた上で、価格を設定します。
心理的価格設定の企業による事例3選
心理的価格設定は、至る所で採用されています。意識して見ないと気づかないかもしれませんが、日常的に心理的価格設定の商品を目にしているでしょう。
価格設定は、商品やサービスを販売する上で重要なものの1つといえます。ここでは、心理的価格設定を行なっている事例を3つご紹介します。
1:惣菜や弁当の製造・販売会社による数種類の商品への段階価格
心理的価格設定の段階価格を採用することで、大きく売り上げを伸ばしている「惣菜・弁当の製造・販売会社」があります。その企業では、以前は1種類だった弁当の価格を3種類の価格に分け、提供を行うようにしています。
価格を3種類に分けて販売したことで、真ん中の価格の弁当が大幅に売り上げを伸ばすという結果が出ています。これは「端数の回避性」という行動経済学で有名になった傾向で、人は真ん中を選びやすいという心理を狙った手法です。
2:大手ファストフードチェーンストアによるセットの抱き合わせ価格
ファストフードチェーンでは、セット商品が多いですが、元々はそのようなセット商品はなく、単品注文がメインだった時代があります。
それを、大手ファーストフードチェーンが単品同士を組み合わせ、お得なセット価格で売り出したところ、大ヒットを記録します。
ここで使われている手法は心理的価格設定の「抱き合わせ価格」です。単品で売った方が利益は出ますが、セットで売った方が売り上げが増加するため、全体的には利益も多くなります。
3:医薬品の慣習価格
昔から相場が決まっている商品の場合は、安くしすぎても高くしすぎてもよくありません。例として挙げれば「ジュース」「ガム」「チョコレート」などです。
医薬品の場合の慣習価格とは、例えば「体調が悪いので、薬を買って病院にいった場合、〇〇円ぐらいかな」と予測がつくようなイメージになります。
【4種類別】心理的価格設定を利用するときのコツ
心理的価格設定を利用することで、顧客の意思決定に介入し、自社に有利な条件で商品を販売することができるようになります。
心理的価格設定で商品を販売することで、自社は利益を確保し、顧客は得をした気分になります。ここでは、心理的価格設定を利用するときのコツについて解説します。
1:名声価格を設定したい場合のコツ
名声価格は「高価なものには価値がある」「古いものには価値がある」「希少性が高いものには価値がある」といった商品の背景を利用した価格設定になります。
商品の機能や性能だけでなく、販売する側が設定した商品ブランディングを利用し、顧客に商品の価値を植え付けます。高級品などは、あえて高い金額で商品を販売することが、名声価格を設定する場合のコツになります。
2:端数価格を設定したい場合のコツ
端数価格は、2000円や3000円といったキリのいい価格ではなく、あえて1980円や2980円といった端数の価格をつけて、価格差以上のお得感を出す手法です。
コツは、先述したように、あえて端数を出すということです。価格を見ると、なぜか実際の価格差以上に安く感じるでしょう。
キリのいい価格を設定するのではなく、あえて中途半端な価格設定をするのが、端数価格設定のコツになります。
3:段階価格を設定したい場合のコツ
段階価格では価格を数種類に分けて、それぞれに価格を設定します。「松竹梅の法則」と呼ばれる手法です。この価格設定を使用することで、顧客は真ん中の価格の商品を選択する可能性が高まります。
段階価格設定のコツは、価格を3種類ほどに分け、段階的に価格を設定することです。あえて本命の商品を真ん中に持ってくることで、売り上げも変わってくる可能性があります。
4:慣習価格を設定したい場合のコツ
慣習価格は、顧客の間で広く浸透している価格設定になります。ペットボトルは約150円、ガムは約100円などといったイメージです。慣習価格は、価格が長年設定され続けることで、定着していきます。
慣習価格を設定したい場合のコツは、顧客のイメージと合致するような価格を考えることです。顧客の中で商品と価格のイメージが合致すれば、それなりの数が売れていきます。
商品を販売するときは基本的に慣習価格に沿った価格設定をする
商品を販売する場合には、基本的には慣習価格に沿った価格設定を行うのがセオリーです。広く受け入れられている価格より高価に設定すると「ボッタクリ」などの悪評がたちますし、安くしすぎると「安もの」として敬遠されます。
基本的に商品やサービスは、慣習価格に沿った価格で販売することで、一定の需要を見込むことが可能です。
慣習価格より高額で販売したいときは商品に付加価値をつける
慣習価格より高額で商品を販売したい場合は、商品に付加価値をつける必要があります。付加価値はブランディングで生み出すこともできます。
機能や性能が同じでも、「限定」や「特別モデル」といった通常商品とは違う「何か」を打ち出すことが重要です。
【シーン別】心理的価格設定の具体的なやり方4つ
商品やサービスを市場で展開する場合、通常は競合他社と戦っていく必要があります。心理的価格設定は、そのような競合と戦っていくための強い武器になります。
ここでは、シーン別に心理的価格設定の具体的なやり方について解説を行なっていきます。
1:長期戦略的な商品ブランドの場合
長期戦略的な商品ブランドの場合には、商品に高付加価値を追求することが重要です。例えば「高くても壊れない」や「オーバーホールをすることで、一生使用できる」といった付加価値です。
値段が他の商品より高くても、その付加価値に魅せられた顧客は、高い金額を払って高付加価値の商品を購入します。
2:100円ショップの場合
100円ショップのビジネスモデルは単純で「安く仕入れて100円で売る」ことです。どれだけ買ってもほとんどの商品は1つ約100円のため、計算がしやすく、散財しにくい特徴があります。計算がしやすいため、顧客は安心して買い物ができ、結果的に需要が増えます。
3:スーパーの場合
スーパーでは日々消費する商品に見合った商品価格が提示されています。スーパーへ買い物に行くとき、なんとなく「お肉がいくら」「野菜がいくら」と計算ができます。
また、金額も198円や398円といった絶妙な価格設定がされていることも特徴です。スーパーでは心理的価格設定を用いながら、日々消費する商品に見合った価格設定がなされています。
4:コンビニの場合
コンビニは基本的に同一チェーン店であれば、商品の価格は同じです。コンビニの商品の価格がなんとなくわかるという人もいることでしょう。
コンビニの商品価格は顧客の意識内に定着しているため、変動させなくても問題ない価格設定になります。
5:百貨店内でのお中元やお歳暮販売の場合
百貨店にはお中元やお歳暮のコーナーがありますが、そこでは2000円や3000円、5000円ほどといった価格設定がなされています。
お中元やお歳暮といった商品は、基本的には価格交渉するものではないため、百貨店のように指標となる価格を設定しておいた方が、顧客は選択しやすいといえます。
心理的価格設定を理解してマーケティングに活用しよう
心理的価格設定は、損得を顧客にわかりづらくしながらも、納得して商品を購入してもらうための価格設定方法です。自社の扱う商品やサービスが心理的価格設定で提供できるのであれば、これを採用することで、有利な状況で商品を販売することも可能になるでしょう。