PDCAサイクルの成功事例とは?利点や注意点とうまく回すポイントも紹介
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また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2021年11月22日
更新日:2022年03月01日
PDCAサイクルってなに?
PDCAサイクルとは、4つのプロセスを循環させることで、品質の向上や問題の解決を図るフレームワークです。ビジネスシーンで使用されるフレームワークは数多くありますが、その中でも耳にする頻度の高いフレームワークのひとつとなります。
当記事では、企業の広報やマーケティング担当の方向けに、大手企業の成功事例もあわせて、PDCAサイクルについてご紹介します。
PDCAサイクルの4つの手法
PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)、この4つのプロセスを順番に行い、Action(改善)の次はPlan(計画)に戻ることで、サイクル状にプロセスを回すことをいいます。
ここからは、PDCAサイクルの各プロセスについて紹介していきます。
1:Plan(計画)
Plan(計画)は、明確な目標を設定し業務計画を作成する段階を指します。広報やマーケティングにおいては、商品やサービスのターゲティングやブランディングの設定段階です。
目標を達成するためには誰が何を実行すればよいか、他社の類似品と差別化するためには何をしたらよいかなど、論理的に実行可能な計画を練る必要があります。何となく目標を立てるのではなく、情報収集をするなどして、しっかり説明できる目標と計画を立案しましょう。
2:Do(実行)
Do(実行)は、Plan(計画)で作成した計画を実行する段階を指します。
計画通りに実行することで、計画の問題点や改善点を見つけることができます。また、後で活動内容を確認できるように、記録をとっておく必要があります。結果を数値化して記録することで、次のプロセスで客観的な判断を下すことが可能です。
3:Check(評価)
Check(評価)は、Do(実行)の結果を検証する段階を指します。
計画通りに目標を達成できたか、失敗した原因は何かなど、活動の結果を調査し問題点を導き出します。また、成功した場合でもその要因は何であったのかを分析することで、今後のマーケティングに活かすことが可能です。
4:Action(改善)
Action(改善)は、Check(評価)での検証結果から、改善する段階を指します。
前のプロセスで露呈した問題点に対して、何を行わなければならなかったのかなど、改善策を検討します。そのため、検証結果が不十分な場合は、正しい改善策を思索できません。
そして、Action(改善)段階で提案された改善策を考慮したPlan(計画)を練ることで、PDCAサイクルが循環していきます。
PDCAサイクルの成功事例
この章では、PDCAサイクルを活用した2社の成功事例をご紹介します。
成功した企業は、どのようにPDCAサイクルを取り入れたのでしょうか。実際の活用事例を読んでヒントにしてみてください。
日本の大手電気通信事業者の事例
大手電気通信事業者のSoftBankでは、取締役会の評価・改善を実現するためにPDCAサイクルを取り入れています。
Plan(計画)段階では、第三者からの意見を踏まえた上で評価観点やアンケート項目を検討・決定し、Do(実行)段階ではアンケートを配布・回収します。Check(評価)段階では、第三者機関から課題と改善の提示を受け、Action(改善)段階では、Check(評価)で受けた提示をもとに、取締役会の今後の課題と改善の方向性を決定します。
目指しているコーポレート・ガバナンスの形へ近づけるため、PDCAサイクルを実行しています。
日本の大手自動車メーカーの事例
日本の大手自動車メーカーであるトヨタ自動車でもPDCAサイクルが活用されており、徹底した無駄の排除で効率化を図っています。
長い年月に渡り「ムダ・ムラ・ムリ」をなくす試行錯誤を繰り返した結果、トヨタ生産方式であるジャスト・イン・タイム(JIT)と自働化(自動化ではなく、ニンベンがつく)に到達しました。
計画目標である「ムダ・ムラ・ムリ」をなくすため、作業を検証することで改善を繰り返し誕生した生産システムは、PDCAサイクルをうまく取り入れた成功事例となっています。
PDCAサイクルをする利点3つ
ここでは、数多くの種類があるフレームワークの中で、なぜPDCAサイクルを活用するのか、3つの利点をあげて説明していきます。
利点を理解することで、より適した場面で使用することが可能です。
1:今後の課題が見えやすい
PDCAサイクルを使用することで、定めた目標に対してどの程度達成できたのか、何が問題だったのかを把握しやすくなります。
活動結果を記録して計画の評価・改善を図るため、主観の入った曖昧な評価ではなく客観的な検証・評価ができます。目標に対し結果がどうであったのかを正確に検証することで、今後の計画立案の際に活かすことが可能です。
2:不安になる原因が分かる
活動内容を検証するプロセスを経るため、不安となる原因を導き出すことができます。
PDCAサイクルは何度も循環させるフレームワークです。そのため、1度目の検証で問題点を見つけられなかったとしても、何度も検証することにより問題点が露呈する可能性があります。
不安となる原因を突き止めることでその部分を補強でき、計画の基盤がしっかりします。何を改善する必要があるのかを知ることで、よりよい施策を立てることが可能です。
3:成長するまでの過程が早くなる
枠組みがないまま複合的に作業を進めると、何から手をつけていいのか躊躇してしまい、どうしても作業効率が落ちてしまいます。PDCAサイクルに当てはめて動くことで、何をしなければならないのかが明確になり、効率よく作業を進めることが可能です。
持続的にPDCAサイクルを回すことで、計画をブラッシュアップし、成長し続けることができます。
PDCAサイクルをする注意点3つ
PDCAサイクルは取り入れやすく便利なフレームワークですが、注意しなければならない点も存在します。
ここでは、PDCAサイクルを活用する際の注意点について説明していきます。適さない場合は、別のフレームワークを考えてみましょう。
1:新しい要素を取り入れにくい
PDCAサイクルは立案した計画をもとに検証・改善していくため、全く違う新たなアイデアを取り入れにくくなってしまいます。
検証結果をもとに改善を繰り返し、ブラッシュアップしていくフレームワークのため、前例主義に陥りがちです。そのようなことにならないためには、改善策を検討する際に外部の意見に目を向けたり、他の事例を参考にしたりするなどの工夫を凝らす必要があります。
2:実行するだけになってしまいやすい
本来の目標ではなく、PDCAサイクルを回すことが目的となってしまう場合があります。これは、失敗する原因としてよく見られる事例のひとつです。
PDCAサイクルを回すことに集中してしまうあまりに、各プロセスを疎かにしてしまっては意味がありません。PDCAサイクルはあくまでもフレームワークのひとつです。達成したい目標を見失わないようにしましょう。
3:早急な改善には不向き
PDCAサイクルはその性質上、ひとつひとつのプロセスを順番に行う必要があり、ある程度の時間がかかってしまいます。
活動結果の検証・改善に時間を割かれてしまうので、通常の業務より時間と労力が増す可能性があります。そのため、早急な対応が求められる業務や、急な問題点には不向きなフレームワークといえるでしょう。
PDCAサイクルをうまく回すポイント7つ
PDCAサイクルを活用する際、下記で説明する7つのポイントを押さえることで、うまく回すことが可能になります。
PDCAサイクルをうまく回せないと、計画自体が途中止めになってしまったり、回すことはできてもフレームワークとして十分な効果を発揮できなかったりしてしまいます。闇雲に回すのではなく、うまく回すためのポイントを意識してフレームワークを活用してみてください。
1:行動の進み具合や結果を記録する
計画を実行しても、その過程や結果を目に見える形で記録しなければ、評価や改善に役立てません。
PDCAサイクルは、目標を達成するための計画をブラッシュアップさせるフレームワークです。立案した計画に対して、結果がどうであったかを評価し改善します。実行過程や結果をもとに判断するため、記録が欠かせません。
また、数値化することで主観が入らず、客観的に判断できるようになります。結果や問題点をきちんと把握することで、よりよい改善につなげることが可能です。
2:挫折しないために目標をハッキリさせる
PDCAサイクルをうまく回すには、何の目標のために何を行うべきか、目標を明確に決めて計画を立案する必要があります。
たとえば、広報やマーケティングを実施する際、誰をターゲットにするのか、何の商品やサービスを売り出したいのか、売上目標はどの位かなどを決めなければ、具体的な方策を立てることはできません。
目標を定めることで、目標に対してどの程度進展したのかが確認できるようになり、モチベーションアップにもつながります。理想だけ高くても、現実的に不可能な目標では意味がないため、実現可能な目標を設定しましょう。
3:優先する順番で改善を行なう
計画・実行・評価・改善する際には、実行項目や問題解決の優先順位をつけることで、スムーズに業務を遂行できます。
目標達成するためには、しなければならないことが複数存在する場合があります。優先する順番が分からないままでは、何から手をつけていいのか戸惑ってしまい、余計な時間がかかります。
まず、しなければならないタスクを緊急度・重要度・所要時間などで分け、そこから優先順位を決めることで、効率のよい業務遂行が可能となります。
4:原因の追究を行なう
失敗したり問題が発生したりした際は、何が原因であったかを見つける必要があります。
問題点を明確にしなければ、それに対応する改善策を講じることはできません。5WHYなどを用いて原因を追究することで、問題点の把握が可能です。5WHYとは、問題に対して5回「なぜ?」を繰り返して、問題を掘り下げるフレームワークです。
また、計画が無事に成功した場合においても、成功した要因を追究することで、成功事例として今後の手掛かりとなります。
5:持続的に状況の確認をする
PDCAサイクルが回るたびに、結果検証を実施して問題点をあぶり出し、状況にあった改善策を講じることが重要です。
そのためには、持続的に状況を確認する必要があります。中でも、Check(評価)とAction(改善)は、肝心なプロセスとなります。状況の確認を先延ばしにせず定期的に行うことで、PDCAサイクルを効果的に活用することが可能になります。
6:評価は計画を元に行なう
Check(評価)は、ただ単に結果だけを評価するのではなく、立案した計画に対して評価を下します。
計画通りに業務を遂行した結果、スムーズに行えたか計画に抜けや問題点はあったかなど、あくまで計画をもとに評価します。計画を改善していくフレームワークのため、計画を基準として判断することが必要です。
7:次回に繋がる報告をする
よりよい改善策を講じるには、PDCAサイクルを回すための報告が必要になります。
Action(改善)の報告からPlan(計画)へと意見を反映させ、継続的に計画を改善していきます。何をどう改善したらよいのか明確にしてから報告することで、次の業務に活かすことが可能です。
PDCAサイクルがうまくいかない理由5つ
PDCAサイクルに限らず、フレームワークは正しく活用しなければその効果を発揮させることはできません。
ここからは、PDCAサイクルがうまくいかない5つの理由をみていきます。前述した注意点とあわせて気をつけてみてください。
1:繰り返しができていない
PDCAサイクルを1回転させただけで満足してしまっては意味がありません。
PDCAサイクルは何度も繰り返し循環させることで、効果を発揮するフレームワークです。すぐに効果が出るとは限らないため、根気よく繰り返して回す必要があります。
2:Plan(計画)を実行するまでの時間が長い
綿密過ぎる計画を立案しようとして時間がかかっては、いつまでも計画を実行できません。最初から完璧な計画を立てられるなら、PDCAサイクルは必要ありません。
PDCAサイクルは計画を改善するためのフレームワークのため、筋道を立てたらすぐに実行に移しましょう。
時間をかけて計画立案しても、実行に移さなければ何の意味もなくなってしまいます。計画を練ったら速やかに実行することが大切です。
3:Plan(計画)を詳細に立てていない
先ほどとは反対に、大雑把な計画では実行する際に何をすればいいのか分からず、立ち止まって考えてしまう可能性があります。また、実現不可能な目標を立てたとしても、目標を達成することはできません。
Plan(計画)段階では、実現可能な範囲で計画を立てて、次のDo(実行)へつなげる必要があります。明確な目標を立てることにより、計画の穴が埋まっていき、充実した立案が可能になります。
4:Action(改善)とCheck(評価)が止まっている
Plan(計画)とDo(実行)を行なったことで満足したり、全てが終わった気になったりすると、PDCAサイクルの真の効果は発揮されません。
実行した計画の結果を正しく評価し改善することで、PDCAサイクルがうまく回るようになります。よりよい計画立案のために、Check(評価)とAction(改善)のプロセスを怠らないようにしましょう。
5:Action(改善)を急ぎすぎる
早く改善を図りたいがために、評価を疎かにしてしまっては正しい改善を施すことはできません。
計画が失敗した際、早く改善したいと気持ちが焦るかも知れませんが、正しい改善が行えないと失敗を繰り返してしまう可能性があります。よりよい改善策を練るためにも、ひとつひとつの問題点をきちんと分析することが必要となります。
OODAとは?
OODAとは、Observe(観察)・Orient(仮説構築)・Decide(意思決定)・Act(実行)の頭文字をとったフレームワークです。OODA(ウーダ)ループと呼ばれることもあります。
PDCAサイクル同様、繰り返し回しながら活用します。現状を観察した上で判断し実行するため、OODAループは臨機応変に対応可能なフレームワークです。
PDCAとOODAの違い
それぞれの特徴として、PDCAサイクルは計画から改善まで時間をかけて丁寧に行う、OODAループは現状把握から決断し早急に行動する、という点が挙げられます。
PDCAサイクルは、スピードでは劣るものの、落ち着いた状態で判断ができます。反対に、OODAループは綿密な計画を練らずに実行するため、スピーディーな対応が可能です。
また、似た事例が多く参考にする資料が豊富な場合は、綿密に計画を練るPDCAサイクルが向いています。参考にできる事例がなく、どのように計画を立てればいいのか分からない場合は、OODAループが向いています。
PDCAサイクルは計画を基本として行動し、OODAループは状況を基本として行動するフレームワークです。
成功事例を参考にPDCAサイクルを活用しよう
PDCAサイクルは、大手企業も取り入れているフレームワークです。うまく回すポイントや注意点に気をつけて活用することで、効果を発揮することができます。
上記で紹介した大手企業の成功事例を含め、さまざまな事例を参考にして、ビジネスシーンでPDCAサイクルを取り入れてみてはいかがでしょうか。