KPIを設定する方法とは?5つのポイントと営業活動における例も紹介
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また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2021年11月22日
更新日:2022年03月01日
そもそもKPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」を略したもので、日本語で「重要業績評価指標」と訳される言葉です。KPIは、組織や企業が目標達成を目指す過程で、その目標の達成度合いを測るために用いられる重要な指標となっています。
KPIはベンチマークとして利用されるため、数値で管理できるものにする必要があります。たとえば、営業部の場合は「受注件数」などをKPIに設定するケースが多いです。
KPIと区別しておきたい3つのキーワード
KPIは、企業が目標の達成度合いを測るために用いる指標ですが、他にも「KGI」「KSF」「OKR」などの略称で呼ばれる指標があります。そのため、具体的にどのような違いがあるのか、わからない方も多いでしょう。
ここでは、KPIと区別しておきたい3つのキーワードについて、それぞれ解説していきます。
- KGI
- KSF
- OKR
1:KGI
KGIとは「Key Goal Indicator」を略したもので、日本語で「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」と訳される言葉です。KGIは、企業が実施した経営戦略やビジネス戦略の「何をもってゴールと見なすのか」を定めるための指標となります。
KGIは、最終的な目標の達成度合いを測るために用いられるため、「成約件数」「売上率」「利益率」などをKGIに設定することが多いです。
2:KSF
KSFとは「Key Success Factor」を略したもので、日本語で「重要成功要因」と訳される言葉です。KSFは、企業が経営戦略や事業を成功させるために必要な要因を定めたものです。
近年では消費者のニーズも多様化しているため、以前よりもKSFの重要性が増しています。また、KSFは技術の進化などの影響を受けるため、一度設定すれば終わりではなく、必要に合わせてアップデートを行うことが大切です。
3:OKR
OKRとは「Objectives and Key Results」を略したもので、日本語で「達成すべき目標と目標達成のための主要な成果」と訳される言葉です。
OKRはIntel、Google、Facebookなどが取り入れている目標管理方法で、組織やチームとしての大きな目標を掲げた上で、その目標に紐づく個人の指標を設定します。
また、従来の目標管理方法よりも評価のスパンが短く、個人の人事評価とは切り離して考えるなどの特徴があります。
企業においてKPIを設定する4つのメリット
KPIは、目標の達成度合いを数値によって測るものです。KPIは、KGIを達成する上で中間指標として重要な役割を持ちますが、KPIを設定することには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、企業においてKPIを設定するメリットを紹介していきます。
- 企業全体の士気の高まりに期待ができる
- 社員の評価基準が明確になる
- 業務のPCDAサイクルがスピーディーになる
- 個人の目標が設定しやすくなる
1:企業全体の士気の高まりに期待ができる
KPIを設定することにより、達成しなければならない目標が明確になります。そのため、企業全体でKPIを共有することにより、組織やチーム全体のモチベーションの向上が期待できるでしょう。
また、士気が高まることによって生産性の向上にもつながります。さらに、目標達成に向けた取り組みの中で問題が発生した場合でも、チーム全体で問題を共有して解決のために取り組めるようになるでしょう。
2:社員の評価基準が明確になる
KPIでは明確な数値を設定するため、社員の評価基準も統一することが可能です。KPIは定量的な数値で測ることができるため、KPIに到達すれば目標達成、到達できなければ目標を達成できなかったと判断できます。
このように、わかりやすい指標によって評価することが可能になるため、誰にとっても納得しやすい評価基準となるでしょう。
3:業務のPDCAサイクルがスピーディーになる
KPIが設定されていれば、目標達成のために必要な課題を見つけることも可能です。KPIを設定して現在の問題点を洗い出し、改善していくことによって目標達成へ近づくことができます。
このように、KPIを設定することで、業務のPDCAサイクルが円滑に回せるようになるでしょう。逆に言えば、KPIが設定されていないと業務改善が行われないままになってしまう可能性があります。
4:個人の目標が設定しやすくなる
KPIを設定しておけば、会社として目標を達成するために、社員として自分が何をすればよいのかが明確になります。そのため、社員一人ひとりの目標も設定しやすくなるでしょう。
また、KPIがあれば自分がやらなければならないことを達成するための最短ルートも選択できるようになるため、結果的に業務スピードも上がります。逆にKPIを設定していないと、社員は何を目標にすればよいのかわからなくなってしまうでしょう。
KPI設定の4つの流れ
ここまで紹介したとおり、KPIを設定することでさまざまなメリットを得られます。それでは、KPIを設定するにはどのような手順で実施すればよいのでしょうか。
ここでは、KPI設定の流れについて解説していきますので、参考にしてみてください。
- 最終目標であるKGIを設定する
- KGIを細分化しKSFを洗い出す
- KSFに対応するKPIを設定する
- KPIツリーを構築する
1:最終目標であるKGIを設定する
KPIは目標を達成するために用いる指標であるため、まずは最終的な目標であるKGI(重要目標達成指標)の設定を行う必要があります。KGIを設定する際には、個人やチームで何を目標にしたいのかを話し合い、どの地点をゴールとするのか全員で確認しましょう。
また、KGIは一般的には売上高や営業利益などを用いるケースが多いですが、市場におけるシェアなどをKGIにするケースもあります。
2:KGIを細分化しKSFを洗い出す
KGIの次に設定する指標はKSF(重要成功要因)です。KGIを達成する上で重要な要素が何なのか、KGIをいくつかの重要な要素に細分化することによって洗い出していきましょう。
KFSを設定するには、まずは目標達成までに想定されるプロセスを時系列に並べて数値化します。さらに、自らでコントロールできるものとできないものとに分け、コントロールできるものの中から影響度の高い順に優先順位を決めて、KFSを絞り込みましょう。
3:KSFに対応するKPIを設定する
絞り込んだKSFを成し遂げるために、必要なKPI(重要業績評価指標)を洗い出していきましょう。KSFを細分化していくことにより、KPIを導き出せます。
その際には、KGI達成に必要な水準になるように、KFSを数値化することがポイントです。
4:KPIツリーを構築する
KPIツリーとは、KGIを頂点に置き、目標達成に必要なKPIをツリー上に段階的に設置した図です。KPIツリーは目標達成のために役立つ道しるべになるものなので、最後はKPIツリーを作成するようにしましょう。
KPIツリーを作成することにより、KGIの実現のために達成しなければならない多くのKPIを可視化し、社内で共有できるようになります。
KPIを設定する際の5つのポイント「SMART」
KPIを設定する際に意識したいポイントとして「SMARTモデル」と呼ばれるものがあります。
「SMART」は「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time-bounded」の頭文字を取ったものです。
KPIを設定する際には、この5つを意識することでKPIに必要な要素を押さえられます。ここでは、KPIを設定する際のポイントであるSMARTについて紹介していきます。
- Specific(明確な指標)
- Measurable(計測できる指標)
- Achievable(達成できる指標)
- Related(企業目標に関連する指標)
- Time-bounded(期限のある指標)
1:Specific(明確な指標)
「Specific(明確な指標)」とは、KPIをできるわけわかりやすくすることです。KPIを設定する場合は、社員全員が理解できるように明確でわかりやすく設定することが大切です。
社員全員がきちんと理解できるレベルにまで落とし込めれば、社員一人ひとりで目標達成のために動けるようになるでしょう。
2:Measurable(計測できる指標)
「Measurable(計測できる指標)」とは、測定結果を数値化して表すことです。KPIは「件数」や「回数」など、数字で測定できるものを選ぶ必要があります。
実際に設定する場合には、「受注件数」や「発注件数」、「販売数」といった内容になるでしょう。数値化が可能なKPIを設定することは、最低限押さえておきましょう。
3:Achievable(達成できる指標)
「Achievable(達成できる指標)」とは、努力することで到達できるKPIを指します。目標が達成できればモチベーションを上げられるため、KPIは達成可能かつ本人の評価につながりやすい項目を設定しましょう。
4:Related(企業目標に関連する指標)
「Related(企業目標に関連する指標)」とは、KPIがKGIに関連した内容であることを指します。KPIはKGIを達成するために必要な指標であるため、KGIに関係している必要があります。
KPIを達成するほどKGIの達成に近づいていくように感じられる内容をKPIに設定することで、モチベーションを保ちながらKGI達成を目指せるでしょう。
5:Time-bounded(期限のある指標)
「Time-bounded(期限のある指標)」とは、KPIには期限を設けるということを指します。明確な達成期限を設定しなければ、いつまで経っても目標を達成できなくなります。
いつまでに達成しなければいけないという期限を設けることで、具体的な行動がとれるようになるでしょう。
KPI設定・管理で失敗してしまう7つの理由
KPIの設定や管理を行っても、結果的に失敗してしまうケースもあります。KPIの設定を成功させるには、どのような失敗理由があるのかも把握しておくことが大切です。
ここでは、KPI設定・管理で失敗してしまう理由を紹介していきますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
- KGIにつながるKPIになっていない
- KPIが多すぎて達成できない
- 数字ばかり追い求めKPIの目的を忘れてしまう
- 途中の過程を煩雑化しすぎてKPIを達成できない
- KPIが全体に周知されていない
- KPIに関連するデータが可視化されていない
- KPIに関する取り組みが継続的になされていない
1:KGIにつながるKPIになっていない
KPIを設定する場合は、KPIをすべて達成することによって自動的にKGIが達成できる内容にする必要があります。しかし、KGIにつながるKPIになっていなければ、KPIを達成したとしてもKGIが達成できなくなり、この図式が成立しなくなってしまいます。
2:KPIが多すぎて達成できない
KGIを達成するために、KPIを多く設定しすぎることで失敗してしまうケースがあります。あまりにも多くのKPIを設定してしまうと、すべて達成できず、逆に社員のモチベーションを低下させてしまう原因になります。
また、KPIが多すぎると業務内容も窮屈になってしまうため、あまりにも多くのKPIを設定しないように気を付けましょう。
3:数字ばかり追い求めKPIの目的を忘れてしまう
KPIを設定しても、数字を追い求めるばかりにKPI本来の目的を忘れてしまうケースもあります。KPIは数値で設定されるため、数値を達成することを目標にしてしまうと本来の目的から逸れてしまう可能性があるでしょう。
KPIは最終的に、KGIを達成することを目的に設定するものであることを忘れないようにしましょう。
4:途中の過程を煩雑化しすぎてKPIを達成できない
KPIを達成するためのプロセスを重視しすぎるあまり、KPIが達成できないケースもあります。たとえば、KPI達成のためにツールを導入したり、管理方法の設定に力を入れすぎたりしてしまうと、プロセスが煩雑化してしまうでしょう。
そのため、余計な工数が取られて業務が圧迫され、KPIが達成できなくなることもあります。
5:KPIが全体に周知されていない
KPIは経営陣だけでなく、社内に周知してすべての従業員で共有する必要があります。従業員一人ひとりがKPIを理解することで、目標達成のための具体的な行動がとれるようになります。
しかし、KPIが社内全体で周知されていなければ、全員で同じ方向を向いて目標達成へと努力できなくなるため、失敗してしまうでしょう。
6:KPIに関連するデータが可視化されていない
KPIに関するデータは把握できるように可視化し、一定期間で共有・周知する必要があります。可視化できるようにすれば、進捗も確認できるようになります。
しかし、KPIに関連したデータが可視化されていないと、進捗の見極めやKPIの修正などもできなくなるため、失敗してしまうでしょう。
7:KPIに関する取り組みが継続的になされていない
前述のとおり、KPIは設定することで問題点の洗い出しを行い、改善することによって目標達成を目指します。そのため、KPIに関する取り組みはPDCAサイクルを回し、継続的に実施する必要があります。
KPIに関する取り組みが継続的に実施されなければ、KPIの設定や管理でも失敗してしまうでしょう。
営業活動におけるKPIの6つの例
営業活動にKPIを設定する場合、どのようなKPIを設定するのが有効なのでしょうか。ここでは、営業活動におけるKPIの例を紹介していきますので、参考にしてみてください。
- 見込み客の成約数
- 顧客単価
- 営業訪問数
- 営業案件数
- 受注期間
- 解約率
1:見込み客の成約数
営業活動のKPIとして設定するのにおすすめの指標が、見込み客の成約数や成約率です。「コンバージョン数」「コンバージョン率」と言いかえることもできます。
たとえば、営業訪問数が100件の営業担当者がいたとしても、実際に成約に結びついているのが1件だけでは、コンバージョン率はわずか1%です。しかし、コンバージョン率が50%の営業担当者であれば、訪問数が10件だったとしても5件の成約に繋がるということになります。
2:顧客単価
顧客単価が上がれば利益の拡大につながるため、顧客単価をKPIに設定するのも良いでしょう。顧客一人あたりの単価が上がれば、同じ顧客数でも利益が増えます。
たとえば、1万円の商品を10人に販売するより、30万円の商品を1人に販売するほうが利益は大きくなります。
3:営業訪問数
外回りの営業活動で営業成績を上げるには、訪問件数を増やすことが大切です。もちろん、訪問数が多ければ成約率が上がるというわけではありませんが、成約を獲得するためにも営業訪問数をKPIに設定するのは効果的だと言えるでしょう。
ただし、ただ単に営業訪問数を増やすのではなく、成約が見込める営業訪問数を増やすことが重要です。
4:営業案件数
営業部門の人員一人ひとりが抱えている営業案件数も、KPIに設定できます。営業案件は数が少なすぎれば手が空いてしまいますが、数が多すぎると案件ごとの対応が雑になってしまいがちです。
そのため、営業案件数をKPIに設定することで、一人ひとりの案件数を見直すことができます。営業案件数をKPIに設定する場合は、SFAツールを活用すると機会損失も防止できておすすめです。
5:受注期間
受注期間(リードタイム)も数値化できるため、KPIに設定することができます。受注期間とは、営業をかけてから実際に受注に至るまでの期間のことです。
たとえば、これまで受注期間が3か月だったところを1か月まで短縮できれば、営業活動の時間を増やせるため、売上の拡大につながります。
6:解約率
解約率をKPIに設定するのも良いでしょう。解約率が下がれば、それだけ利益の拡大や持続的なビジネスの成長につながります。
解約率が高いままでは、マーケティングや広告にコストをかけて顧客が増えたとしても、ビジネスの成長は鈍化してしまうでしょう。解約率を算出するチャーンレートとしては、「レベニューチャーン」「カスタマーチャーン」などがあります。
レベニューチャーン
レベニューチャーンレート(Revenue Churn Rate)とは、収益ベースで算出される顧客の解約率です。「MRRチャーンレート」と呼ばれることもあります。
一般的に解約数は顧客数ベースになりますが、解約が発生しなければ本来得られたはずの収益をどの程度損失したのか計算したい場合、収益ベースで把握できるレベニューチャーンレートを用いることになります。
カスタマーチャーン
カスタマーチャーンレート(Customer Churn Rate)とは、顧客数ベースで算出される顧客の解約率です。一般的に「チャーンレート」と言う場合は、カスタマーチャーンレートを指すケースが多いです。
カスタマーチャーンレートを計算したい場合は、「当月の解約数/先月末時点での顧客数」で算出できます。
KPI設定について学習する方法
KPI設定を行う場合は、失敗しないためにもKPI設定に必要な知識を身につけた上で行うことが望ましいです。KPI設定に関する知識を習得する方法としては、セミナーへの参加や書籍を使った勉強を行うといった方法があります。
ここでは最後に、KPI設定について学習する方法を紹介していきます。
- セミナーに参加する
- 書籍で勉強する
セミナーに参加する
KPIに関するセミナーも実施されているため、セミナーに参加すると良いでしょう。ビジネス系のセミナーであれば、営業部門での目標達成に関するセミナーなども実施されています。
近年ではオンラインセミナーも多くなっているため、近場でセミナーが開催されていないという場合でも、自宅からオンラインでセミナーを受講することが可能です。
書籍で勉強する
KPIに関する書籍は多く販売されているため、書籍を使って独学することも可能です。自分で勉強できる人は、書籍を使って習得するのもおすすめです。
書籍の場合は必要な知識が1冊にまとまっているため、基礎からしっかりと体系的に学べます。ただし、書籍によって初心者向けから上級者向けまであるため、可能であれば中身やレビューなどをチェックして、自分のレベルに合ったものを選ぶようにしましょう。
企業の目標に合ったKPIを設定し協力して達成しよう
KPIは、企業が掲げる最終的な目標の達成度合いを測る指標です。適切なKPI設定を行うことで、日々の業務の中でKPIを達成し、自然と目標達成へとつなげることができます。
本記事で紹介した、企業においてKPIを設定するメリットやKPI設定の流れ、KPIを設定する際のポイントなどを参考に、自社の目的に合わせて適切なKPI設定ができるようにしましょう。