マーケティングリサーチの調査方法とは?手順や実施する際のコツも紹介
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初回公開日:2021年11月22日
更新日:2024年05月31日
マーケティングリサーチとは
「マーケティングリサーチ」とは、消費者から情報を集めて調査・分析をして、市場の現状やトレンドを把握し、企業のマーケティングにおける課題を解決することです。調査によって得られた情報は、市場の予測や考察に使用され、企業の意思決定の材料となります。
なお、マーケティングリサーチは「市場調査」と混同されがちですが、厳密に言えば、市場調査は自社の商品やサービスの市場について調査し、結果を数値化するなどしてそのデータを把握することです。つまり、市場調査はマーケティングリサーチの一部と言えるでしょう。
- リスク回避のためにも必要
- 企業の課題を明確にすることができる
リスク回避のためにも必要
企業が商品やサービスを売りだしても、消費者のニーズと合致せず、思うように売れ行きが伸びない場合もあります。商品やサービスが消費者に受け入れられず、コストと労力、時間を無駄にするというリスクを軽減するためにも、マーケティングリサーチは必要と言えるでしょう。
消費者のニーズを優先して商品やサービスの企画および開発を行う「マーケットイン」思考で企業運営を進めていく上で、マーケティングリサーチは欠かせません。
企業の課題を明確にすることができる
マーケティングリサーチの目的の一つは、自社のマーケティングにおける課題や問題点を洗い出し、解決することです。たとえば、マーケティングにおける課題とは、ターゲットや価格、新商品のコンセプトなどをどう設定するか、というものです。
課題を解決するために消費者の顕在ニーズおよび潜在ニーズを収集・分析し、企業のマーケティングが成功につながるよう導きます。
マーケティングリサーチにおける集めるデータによる調査分類
マーケティングリサーチの手法は、大きく「定量調査」と「定性調査」に分けられます。それぞれメリット・デメリットがあるため、目的に応じて使い分けたり、双方を組み合わせたりしましょう。
定量調査と定性調査における具体的な手法とその特徴について紹介します。
- アンケート形式の定量調査
- インタビューを行う定性調査
アンケート形式の定量調査
「定量調査」は、アンケート形式で数値を集めることによって、主に仮説を検証したり、現状の実態や傾向を把握したりするために用いられます。アンケートは、○か×、1~5で答える、といった質問で構成されているのが一般的です。
定量調査には具体的に下記のような手法があります。
郵送調査
アンケート用紙を対象者へ郵送して回答を返送してもらう方法です。多額にはなりませんが、アンケート用紙を作成するコストや郵送料が必要になります。また、対象者以外の人が答えても実施者が把握しづらいという難点もあるでしょう。
郵送調査とほぼ同様な手法で、郵便ではなくFAXを使用するFAX調査もあります。
インターネット調査
インターネット(Web)を利用してアンケートに回答してもらう方法です。地域を限定せずに、短期間・低コストで多くの意見を回収できるというメリットがある一方、対象者はインターネットの利用者に限られるというデメリットもあります。
インターネットの普及により急速に増加した調査方法で、最近ではSNSを利用するケースも増えており、主に若い世代に受け入れられやすい方法です。
訪問調査
訪問調査は、対象者の自宅や職場などに調査員が訪問して、直接面談してデータを収集する方法です。訪問調査では、アンケート形式の調査票をもとにヒアリングする方法と、調査票を渡して回答してもらう方法があります。
この調査には、自宅に訪問する人的コストや交通費などを必要とするデメリットがあると言えるでしょう。
なお、訪問調査は、対象者にインタビューをして数値化できない意見を収集することもできるため、定性調査に含まれる場合もあります。
ホームユーステスト
実際に対象者の自宅に商品を送って実際に試してもらい、どのように商品を使用しているか、満足度などを調査する方法です。
実際の生活の中で試用してもらうため、対象者の本音が聞けるなど、他の調査に比べてよりリアルな意見が聞けるでしょう。ただし、回答者の在宅時に訪問する時間と労力が必要になり、多数のサンプルを得られにくいデメリットもあります。
会場調査
あらかじめ用意した会場に一定数の調査対象者を集めて、実際に商品を使用してもらったり、広告動画を見てもらったりして、質問に回答してもらう方法です。
一度に回答を得られますが、会場を準備する必要があり、対象地域も限定されるのがデメリットでしょう。
インタビューを行う定性調査
「定性調査」は、数値化できない情報から、仮説を立てる際や行動要因を把握するためなどに行います。インタビューを行って質問に答える形で消費者の要望を収集したり、SNSで口コミなどを集めたりします。
定量調査には下記のような方法があります。
デプスインタビュー
「デプスインタビュー」とは、対象者とインタビュアーが一対一で面談し、意見を収集する方法です。消費者の考えを深くまで聞くことができ、対象者の消費行動や心理状況など複雑なプロセスや要因を明らかにしやすいでしょう。
ただし、デプスインタビューは一人の意見を得るだけでも長い時間がかかる上に、交通費なども発生します。また、特定の対象者の意見であるためバイアスがかかりやすいと言えるでしょう。
グループインタビュー
複数の対象者を会場に集めて、一つのテーマに関して討論してもらい、意見やアイデアを収集する方法です。一度にたくさんの意見を収集でき、参加者同士で刺激し合って、思いがけないアイデアを得られる可能性があります。
しかし、人前で本音が話しにくい人や雰囲気に流されて同調してしまう人もいるため、対象者の集め方に注意したり、意見の妥当性を吟味したりする必要があります。また、複数の対象者を集めるため、交通の便が良い会場を用意する手間もあるでしょう。
マーケティングリサーチにおける調査の継続性による調査分類
マーケティングリサーチは、データの種類だけでなく、調査の継続性に関する分類の仕方もあります。
必要な時だけ単発的に行われる「アドホック調査」と、ターゲットを固定して継続的に行われる「パネル調査」に分けることができます。二つの調査は対極的であり、目的に応じて使い分けられます。
それぞれの調査について解説します。
- 単発のアドホック調査
- 継続的なパネル調査
単発のアドホック調査
「アドホック調査」とは、調査が必要なときに意見を集める方法で、単発調査とも呼ばれます。アドホック調査は、前述した定量調査と定性調査に分けられます。
調査の企画や設計、実施、分析などを1回で完結させる調査です。
継続的なパネル調査
「パネル調査」とは、選定した対象者に対して同じ調査を繰り返し継続的に行う方法です。半年から数年かけて実施され、経年によって考えや意見が変化する過程を収集できます。
対象者の属性が定まっているため分析がしやすく、季節や社会的背景によって変わる商品の購入頻度やニーズ、ブランド力などを把握することができます。
マーケティングリサーチの5つの手順
マーケティングリサーチは一定のノウハウや経験が必要で、企業によっては外注する場合もあるでしょう。リサーチ会社の中には、市場調査のみ行う会社から、分析・考察まで引き受ける会社もあります。
ただし、外注する場合も、マーケティングリサーチの手順を知っておくことは重要です。
マーケティングリサーチの基本的な流れは、企画、設計、調査実施、分析、立案となります。また、商品が開発されたら終わりではなく、長期的に継続される場合もあります。
マーケティングリサーチの手順を詳しく見ていきましょう。
- 調査の目的を明確にする
- 調査の方法や期間を決める
- 実際に調査を行う
- 結果を詳しく分析し課題を洗い出す
- 課題解決のための行動計画を立てる
1:調査の目的を明確にする
マーケティングリサーチの第一歩は、リサーチの目的を明確にすることです。たとえば、「自社の商品やサービスに関する問題点(課題)を解決するため」や、「仮説を立証するため」などです。
目的をより具体的にしておくと、マーケティングリサーチの成果につながりやすくなります。「回答や意見を集めること」がマーケティングリサーチの目的にならないように注意しましょう。
2:調査の方法や期間を決める
続いて、立てた仮説から、調査の目的に応じて調査の方法や調査期間、ターゲット、質問の項目などを決定します。
調査手法や対象者のサンプル量、質問の質と順番、回答のしやすさなどは重要となります。対象者にアンケートの質問内容が正確に伝わり、偏りがないように工夫しましょう。
また、収集した調査結果および意見は分析や考察に使われます。企画段階で、それらを見据えた質問を用意する必要もあるでしょう。
3:実際に調査を行う
設計した調査方法を対象者に対して実施します。実際に、質問票を印刷して送付したり、面談会場を予約して対象者を集めたりなどして意見や回答を収集します。
調査手法によっては、あらかじめ会場を予約したり、対象者にアポイントメントをとったりするなど、事前に労力やコスト、人員が必要な場合があります。
4:結果を詳しく分析し課題を洗い出す
調査を終え、結果が収集できたら分析を行います。内容によって単純集計やクロス集計、多変量解析などの適切な解析方法で詳しく分析しましょう。
平均値の算出や属性別(性別・年齢・居住地域など)の比較などを行い、最終的には仮説の立証をできるデータをそろえます。また、その結果によって、新たな課題が生まれることも多いでしょう。
5:課題解決のための行動計画を立てる
データの分析から生まれた課題を解決するために、具体的なアクションを立案していきます。リサーチの結果が、そのまま企業の大きな意思決定の根拠となることもあります。
また、追加調査を行い、より深い情報を求めたり、消費者のニーズの確認をとったりする場合もあるでしょう。マーケティングリサーチによって立てられた戦略案をより具体的にすると、企業の成長につながりやすくなります。
マーケティングリサーチを実施する際の4つのコツ
マーケティングリサーチを成功に導くためには、多くの重要なポイントがありますが、ここからは代表的な4つのコツを紹介します。
なお、どの段階でも必要になるのが客観的な視点です。つまり、自社にとって都合の良い情報だけを集めることがないよう注意が必要になるでしょう。
偏りのある調査結果は正確性にかけ、改善のチャンスを逃す可能性があります。コストと労力をかけて実施する以上、正確でリアルな情報を集めようとする意識が求められます。
- あらかじめ仮説を立てておく
- 対象者を具体的に決めておく
- 必要な情報を明確にしておく
- さまざまな種類の調査をどのように組み合わせるか考える
1:あらかじめ仮説を立てておく
マーケティングリサーチの企画段階で、目的を明確にしたら、現状抱えている課題(問題点)を見つけ出し、あらかじめ検証すべき仮説を立てておきましょう。
仮説の選定はマーケティングリサーチの質を左右する重要なプロセスです。漠然としている、偏っている、漏れがある、などの不都合がないことを確認し、慎重に進めましょう。
2:対象者を具体的に決めておく
マーケティングリサーチの実施前に、調査の対象者は具体的に決めておきましょう。基本的に、調査の対象者の性別や年齢、居住地域などの属性をもとに決めるのが一般的です。
また、趣味や嗜好、行動によって対象者を絞ることもでき、その選定方法が結果に大きく影響します。自社に必要な情報をどのような対象者から収集するのが適切なのかを考えましょう。
3:必要な情報を明確にしておく
マーケティングリサーチの企画・設計の段階で、既知のデータや別の資料なども材料の一つとして検討する場合があるでしょう。つまり、すでに手に入れている情報も少なからずあります。
データを効率的に集めるためには、現時点で分かっている事実とそうでない事実を仕分けし、今後必要となる情報を明確にしなければいけません。むやみにデータを集めることのないように注意しましょう。
4:さまざまな種類の調査をどのように組み合わせるか考える
先に説明した以外にも、マーケティングリサーチには数多くの調査手法があります。目的によって調査手法は使い分けられますが、必要に応じて複数の調査手法を組み合わせて利用することも考える必要があるでしょう。
たとえば、定量調査で課題として注目した個所について定性調査で実態を明らかにする、定性調査で浮き彫りとなった情報の妥当性を定量調査で統計的に裏付ける、といった組み合わせ方が採用されることもあります。
さまざまな調査を組み合わせてマーケティングリサーチを実施しよう
マーケティングリサーチは企業にとってマーケティングの課題を解決するための重要なプロセスです。調査だけでなく、市場の現状やトレンドの分析・予測をすれば、自社が進むべき方向性が決めやすくなります。
マーケティングリサーチの調査法や分析法の種類は多く、うまく活用するにはノウハウと経験が必要です。マーケティングリサーチのさまざまな調査法・分析法を適切に活用して、企業の成長につなげましょう。