市場調査での分析を有効活用する方法5選|種類や具体的な進め方を紹介
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初回公開日:2021年11月22日
更新日:2022年03月01日
マーケティング活動における市場調査とは
市場調査とは、マーケティング活動を行う上で必要な市場や消費者に関する情報を収集し、分析することです。現在の市場を把握することでマーケティング戦略の立案に役立てます。
市場調査は「マーケットリサーチ」とも呼ばれるため、マーケティングリサーチと混同されるケースが多いです。
しかし市場調査が現在の市場を数値によって調査するのに対して、マーケティングリサーチはより広義にマーケティング課題を解決するための調査であるという違いがあります。
市場調査における分析の種類
市場調査と一言で言っても、その分析の種類には大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の2つがあります。また、定量調査と定性調査の中にもさまざまな調査手法が存在しています。
ここでは、市場調査における分析の種類である定量調査と定性調査について紹介していきます。
- 定量調査
- 定性調査
定量調査
「定量調査」とは、数値で表すことができる定量データを収集する調査方法です。代表的な定量調査としては、対面や郵送、インターネットなどで実施されるアンケート調査が挙げられるでしょう。
定量調査を実施することにより、調査対象者がそれぞれ選択肢を選んだのかという人数が数値で表すことができるため、集計や分析を行なうことが可能です。定量調査は特定の商品の購買率や認知率などを調べるのに役立ちます。
定性調査
「定性調査」とは、調査対象者の生の声などを調査する調査方法です。代表的な定性調査としては、1対1やグループで実施されるインタビュー調査などが挙げられます。
定性調査には、会話や観察などの方法によって調査対象者の潜在意識、購買の意思決定の背景などを探る目的があります。定性調査は定量調査と違って明確な数値化はできませんが、特定の事象をより深く調べることができます。
市場調査をする利点
企業が自社の商品やサービスを顧客に知ってもらい、売上を伸ばすためのさまざまなマーケティング施策を実施しています。しかしそのためには、顧客のニーズや商品に対する意識などの情報を収集し、それらの情報を元に効果的なマーケティング施策を検討する必要があります。
市場調査では現在の市場や顧客を調査することにより、マーケティングに必要な情報を収集し、活用できるという利点があります。
市場調査の種類
市場調査の種類には、大きくわけて一次調査と二次調査があります。一次調査は現場に出て直接調査を行うことから「フィールド調査」、二次調査は既存データなどを使用することから「机上調査」と呼ばれることもあります。
ここでは市場調査の種類についてそれぞれ解説していきます。
- フィールド(一次的)調査
- 机上(二次的)調査
フィールド(一次的)調査
「フィールド(一次的)調査」とは、アンケート調査やインタビューなど企業が自身で実施する調査のことです。フィールド調査では実際に調査を実施するため、新しいデータの発生が伴います。
実際に市場調査を実施する場合は、まずは机上調査によって既存のデータを収集し、自社のマーケティングに関して足りない部分をフィールド調査で補うという流れにすると効率的です。
机上(二次的)調査
「机上(二次的)調査」とは、第三者が実施した調査のことです。政府機関や研究者、他の企業などが調査し、インターネット上に公開しているようなデータを利用するのが机上調査です。
インターネット上で無料公開されているような統計データや、企業の財務データなどが机上調査に該当します。机上調査では自社で一から調査を行う必要がないため、コストを抑えられます。
市場調査での分析を有効活用する方法5選
市場調査はマーケティングのために行われるものですが、市場調査を行う目的は企業によっても異なります。たとえば、自社のブランドイメージを把握したいケースもあれば、新しい調品開発のために顧客のニーズを調べたいというケースもあるでしょう。
そのため、市場調査を行う場合はどのように活用できるのかも知っておきましょう。ここでは市場調査での分析を有効活用する方法を紹介していきます。
- ブランドイメージを把握する調査
- 購入・使用実態の満足度調査
- 商品開発をするための調査
- 効果的な販促を考える調査
- 売り上げ向上を見込む価格調査
1:ブランドイメージを把握する調査
市場調査はブランドイメージの把握に活用できます。消費者に対して自社の商品と競合の商品とを比べた場合のイメージを調査することにより、消費者がどのようなブランドイメージを持っているのかがわかります。
そのため、ブランドイメージ調査を行うことにより、自社のブランド戦略の効果が出ているのか、より勝機のある市場がないかどうかなどを把握できるでしょう。また、特定のブランドに限らず、企業そのもののイメージの調査が行われることもあります。
2:購入・使用実態の満足度調査
市場調査は商品の満足度調査にも活用できます。自社の既存商品や、新しく参入することを検討している市場の競合商品に関して行われる調査です。
既存商品に関する満足度を調査することにより、顧客のニーズや不満を明らかにし、新商品の開発に役立てることができます。
3:商品開発をするための調査
市場調査は商品開発にも活用できます。商品開発調査は、自社の商品やサービスの顧客であるターゲットに対して、どのようなニーズや不満を持っているのかを調べる調査です。
商品開発調査は新商品の開発はもちろん、既存商品の改善にも役立てられています。
4:効果的な販促を考える調査
市場調査は売り上げを増やすための販促にも活用できます。このような調査は販促調査と呼ばれており、広告やイベントなど販売支援のために実施することで、効果的に販売量を増やす方法を調べます。
たとえば、事前に広告のデザインやキャッチコピーなどを数種類用意しておき、消費者に提示してどのデザインやキャッチコピーが良いかを選んでもらう広告調査などがあります。
5:売り上げ向上を見込む価格調査
市場調査は適正な価格を決定するためにも活用できます。商品やサービスの価格の設定は非常に重要なポイントになります。そのため、事前に市場の適正価格などを調べておくことが大切です。
価格調査では、この業界ではいくらでどの程度売れるのか、地域によって価格を変える必要があるのかなどを調べます。
市場調査の具体的な進め方5選
市場調査を実施する場合には、「調査目的の明確化」「調査方法や実施期間の決定」「調査の実施」「分析」「意思決定」という5つのステップを順番に踏んでいく必要があります。
はじめて市場調査を実施する場合はイメージがつかめないというケースもあるでしょう。ここでは市場調査の具体的な進め方を紹介していきます。
- 調査目的を明確に設定する
- 調査方法と実施期間を決定する
- 調査を開始する
- 結果を分析してレポートを作成する
- 調査結果を基に意思決定を行う
1:調査目的を明確に設定する
まずはどのような目的で市場調査を実施するのかという調査目的の設定を行いましょう。実際に企業が市場調査を実施する場合、何らかの解決したい課題や目的を持って実施するはずです。
そのため、まずは目的を明確に設定しておくようにしましょう。そもそもの目的が曖昧なまま調査をはじめても、どのように調査結果を活用するのかが決まっていなければ効果的な市場調査を行うことはできません。
市場調査を実施する目的例としては、「市場分析」や「アイデアの創造」などがあります。
2:調査方法と実施期間を決定する
市場調査の目的を設定したら、具体的な調査方法や実施期間などの調査設計を行います。市場調査の手法としてはアンケート調査やインタビューなどがありますが、目的によって適切な調査方法も変わります。
そのため、自社がどのような目的によって市場調査を実施するのかを踏まえたうえで、適切な調査方法を選択しましょう。たとえば、大量のサンプルを収集したい場合はインターネット調査、商品のアイデアや新しい知見を得たい場合はインタビュー調査などが適しています。
3:調査を開始する
調査設計ができたら、実際に策定した調査方法や調査期間で調査を実施しましょう。調査を行う際のポイントとしては、どのような人を調査対象者にするのかと、調査スキルのある調査員の確保です。
たとえば直接インタビュー調査を実施する場合、調査員のスキルによって結果は大きく変わります。また、市場分析のために定量調査を実施する場合は、平均的な消費者を調査対象者にするケースが多いです。
このような点を踏まえて、調査対象者や調査員を選びましょう。
4:結果を分析してレポートを作成する
調査が終了したらデータの集計や分析を行ない、レポートを作成しましょう。単純に調査結果を集計するだけでなく、調査結果をレポートにして活用することまで考えて行うことがポイントです。
また、リサーチ会社に作業を依頼して、課題解決や目的の達成に役立つレポートを作成してもらうのも良いでしょう。
5:調査結果を基に意思決定を行う
市場調査は新しい商品の開発やマーケティング施策の検討など、目的を達成するための意思決定のために行われるものです。そのため、最後に調査結果を元にした意思決定を行いましょう。
たとえば、仮説を検証するための市場調査であれば、調査結果を基に次のアクションを決定する必要があります。
市場調査と分析の具体的な方法13選
市場調査や分析の方法にはさまざまな種類があります。前述のように、数値化できる定量調査であれば、会場調査や郵送調査などの手法があります。
また、数値化できないデータを集める定性調査であれば、デプスインタビューやグループインタビューなどの手法が代表的だと言えるでしょう。
ここでは市場調査と分析の具体的な方法について順番に紹介していきます。どのような方法があるのか、自社の市場調査の参考にしてみてください。
- 会場に参加者を集める
- 訪問・電話・郵送でのアンケートを行う
- 顧客に商品を使ってもらう
- ソーシャルメディアで調査する
- 面接を行う
- 環境を整えて実験や実地検証を行う
- 買い物の様子を観察する
- 店舗の状態をチェックする
- 対象者にインタビューする
- 競合である企業を分析する
- 売上データの分析をする
- パブリックデータを活用する
- リサーチの報告書を購入する
1:会場に参加者を集める
会場に参加者を集め、記録を取りながら質問を行う「フォーカスグループ」という調査方法があります。フォーカスグループでは、参加者とのディスカッションを実施することで多数派の意見やインサイトなどを引き出します。
フォーカスグループは自然な会話や議論によって意見が引き出せるというメリットがありますが、一方で主催者が想定していないような方向へ進むこともあります。
2:訪問・電話・郵送でのアンケートを行う
アンケート調査の場合は、訪問や電話、郵送で実施することができます。紙のアンケートを郵送したり、電話口で質問したりすることで調査を行います。
アンケート調査の場合は、インターネットでのリサーチではリーチしにくい高齢者や企業、団体、学校などに対して市場調査が行えます。ただし、回答の回収率が低いというデメリットもあります。
3:顧客に商品を使ってもらう
実際に顧客に商品を使ってもらい、感想などを収集する調査をホームユーステストと呼びます。ホームユーステストでは郵送した商品にアンケートを同封したり、調査員が訪問したりすることで回答を回収します。
また、先に商品を郵送し、後日グループ調査を実施するケースもあります。
4:ソーシャルメディアで調査する
ソーシャルメディア上で行われる調査をソーシャルメディアリスニングと呼びます。近年ではSNSが普及していることもあり、SNS上で多くの意見が投稿されています。
また、SNS上ではリアルタイムにさまざまなコンテンツが共有されていることから、SNSは市場調査にも活用されています。ソーシャルメディアリスニングを実施することで、フィルターのかかっていない意見を収集することができます。
5:面接を行う
面接形式の調査では、面接者が調査対象者に対して直接質問を行うことになります。このような調査ではコミュニケーションが進むことから、開放型の質問や、回答者の内面をより深く掘り下げたい場合に実施されます。
ただし、面接形式の調査は時間もコストも要するため、採用する場合はリソースの配分に気を付ける必要があります。
6:環境を整えて実験や実地検証を行う
実験や実地検証タイプの市場調査は、参加者自身の環境で実施されます。また、その際には「独立変数」と「従属変数」と呼ばれる変数が用いられます。
調査員は独立変数を制御することで、従属変数にどのような影響を与えるのかを調査します。このような調査は倫理的な問題もあるため、調査を実施する場合はガイドラインに配慮しましょう。
7:買い物の様子を観察する
買い物の様子を観察する定量的な調査もあります。このような調査では、観察対象者は自然な環境で買い物を行うケースと、制御された環境の中で買い物を行うケースとがあります。
観察による調査は小売業でよく行われる調査で、曜日や割引の有無などによってどのような購入傾向があるのか把握できます。
8:店舗の状態をチェックする
一般の顧客を装い、店舗の状態をチェックする調査を覆面調査と呼びます。ミステリーショッパーとも呼ばれる調査で、小売店や飲食店などでよく実施される手法です。
この調査では、商品の陳列や清掃、接客態度などが調査されます。調査される店側はいつ調査員が訪れたのかわからないため、普段通りの店舗の状態を調査することができます。
9:対象者にインタビューする
調査対象者に直接質問するタイプの調査をインタビュー調査と呼びます。インタビューには1対1で実施されるデプスインタビューと、複数人のグループに対して質問を行うグループインタビューがあります。
デプスインタビューの場合は1人に対して細かい調査ができ、グループインタビューではデプスインタビューよりも効率的に調査ができます。インタビュー調査は商品開発や満足度に関する調査をしたい場合に有効な方法です。
10:競合である企業を分析する
自社の競合他社を分析する市場調査もあります。競合を分析する場合は、まずは分析を行なう製品やサービス、ブランド、セグメントなどの定義を行いましょう。
競合分析を実施することにより、自社が競合に対して優位に立っているかどうかを把握することができます。
11:売上データの分析をする
売り上げデータを分析することにより、市場インサイトの全体像を把握することも可能になります。売り上げデータと他の市場調査の結果を組み合わせれば、実施した施策とその結果の関連性もわかりやすくなるでしょう。
顧客ごとの売り上げデータが把握できていない場合は、追跡調査できるように環境を整えるようにしましょう。
12:パブリックデータを活用する
インターネット上のパブリックデータを利用する調査をパブリックドメインデータと呼びます。自社で調査を行うためのリソースに限りがある場合は、パブリックデータを活用すると良いでしょう。
利用できるパブリックデータには、政府のデータベースや統計データ、ファクトタンクのデータなどがあります。
13:リサーチの報告書を購入する
自社で調査を行わなくても、他者からリサーチ結果を購入することも可能です。近年では業界の調査データを購入できるサブスクリプションサービスも登場しています。
必要なデータのリサーチ報告書が既に販売されている場合、購入することで時間の節約が可能になります。また、このようなサービスでは、希望するフォーマットでデータ収集ができるなどのメリットもあります。
市場調査を分析する上でのポイント5選
市場調査を実施する場合には、いくつかの押さえておきたいポイントがあります。どのようなポイントがあるのか知らずに調査を行った場合、失敗してしまう可能性もあるでしょう。
ここでは最後に、市場調査を分析する上でのポイントを紹介していきます。
- 調査目的・優先順位を細かく絞り込む
- サンプル数は少なめに用意する
- 専門性の高い項目は外部に依頼する
- 調査票は中立性を保って作成する
- 定量調査と定性調査の両方を実施する
1:調査目的・優先順位を細かく絞り込む
市場調査を実施する場合は、調査目的をしっかりと絞り込んで行うようにしましょう。目的が曖昧なまま調査を行っても、曖昧な結果にしか結びつきません。
特に定量調査を実施する場合には調査目的を明確化してから実施するようにしましょう。目的が絞りにくい場合は、優先順位をはっきりさせておくだけでも調査を有効活用できるようになります。
2:サンプル数は少なめに用意する
調査のサンプルはターゲット層から500~1000ほど抽出することを目標にしましょう。もちろんサンプル数が多いほど調査の精度も高くなりますが、その分コストも大きくなってしまいます。
統計上は500~1000ほどのサンプルで十分信頼できるデータが集められるため、サンプル数は少なめで用意するようにしましょう。
3:専門性の高い項目は外部に依頼する
市場調査の手法の中には、専門家でなければ難しい調査も存在しています。そのため、自社で実施することが難しい部分は外部に依頼すると良いでしょう。
専門的な知識がなければ難しい調査項目の例としては、グループインタビューの進行役やデータ分析などがあります。
4:調査票は中立性を保って作成する
質問の仕方や選択肢の順番によって、回答者の答えが左右されるようなものもあります。そのため、調査票を作成する場合は、できるだけ中立性を保って作成するようにしましょう。
無意識に希望する回答に誘導してしまうこともあるため、中立の立場を意識しながら作成する事が大切です。
5:定量調査と定性調査の両方を実施する
市場調査は定量調査と定性調査の両方を実施すると良いでしょう。多くのサンプルに対して広く浅く調査できる定量調査と、限られたターゲットに対して深い調査ができる定性調査には、それぞれメリットとデメリットがあります。
そのため、どちらも行うのが効果的です。実施する場合は両方同時に行うのではなく、一定期間時間を空けるようにしましょう。
市場調査の分析方法を理解しよう
企業がマーケティング活動を行う上で、現在の市場を数値で把握できる市場調査は必要不可欠です。本記事で紹介した市場調査の分析の種類や市場調査の種類、市場調査の具体的な進め方などを参考に、市場調査について理解を深めてみてはいかがでしょうか。