ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説
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ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説

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ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説

記載されている内容は2021年12月27日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

初回公開日:2021年12月27日

更新日:2024年05月31日

多くの方がテレビニュースや新聞などで、企業の存続を脅かすような重大事故を目にすることがあるでしょう。この記事では、こうした労働災害に関するハインリッヒの法則についてや、ハインリッヒの法則で示されている、ヒヤリ・ハットするような事例について紹介します。

ハインリッヒの法則とは?

ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説
※画像はイメージです

ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社に安全技師として勤めていた、ハーバード・ウイリアム・ハインリッヒが発表した労働事故に関する法則群を指しています。

ハインリッヒの法則群の中でも有名なものが「300:29:1の法則」です。1929年にハインリッヒが発表したもので、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件の事故寸前の出来事があるという法則のことを指しています。

また、ハインリッヒは「300:29:1の法則」の発表に至るまでには、1926年に「4:1の法則(労働機会費用も含めた災害のコストを数値化)」と「88:10:2の法則(適切な安全対策による労働災害の削減可能な範囲)」を発表しています。

これらの法則は労働災害を見える化(数値化)したものであり、あくまで指標となるものです。ハインリッヒの法則で重要なことは、労働災害の背景には数多くの危険有害要因が隠れており、それらの情報をできる限り把握し、迅速、的確に対策を講じるかということになります。

出典:ハインリッヒの「産業災害防止論」|長岡技術科学大学
参照:https://safety.nagaokaut.ac.jp/wp-content/uploads/2013/12/anzen_01-05.pdf

他の理論との関係とは?

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企業の安全管理を考えていく際に、ハインリッヒの法則をはじめとした様々な法則や理論を耳にする方もいるでしょう。

ここでは、ハインリッヒの法則が他の法則や理論とどのような違いや関係性があるのかを解説していきますので参考にしてみてください。

ドミノ理論との関係

ドミノ理論は、冷戦時代のアメリカ大統領であったD.アイゼンハワーが用いたことが始まりとされています。この理論は、ある地域において戦略的に重要な1つの国が共産主義化すれば、その国に隣接する国々が連続的に共産主義化するという政治的な考え方に起因しています。

つまり、ドミノ理論とは1つの原因から結果を、ハインリッヒの法則とは1つの結果から原因をみていく考え方といえるでしょう。

バードの法則との関係

バードの法則とは、1969年にフランク・バードが発表した法則のことをいい、別名「600:30:10:1の法則」とも呼ばれているものです。

このバードの法則では、175万件にのぼる事故分析をもとに事故の発生割合から、重症または廃疾を伴う災害が起こる割合を1とした場合、軽傷災害の割合が10、物損事故の割合が30、傷害と損害がない事故の割合が600になるという比率を示しています。

バードの法則やハインリッヒの法則は、ささいな失敗や出来事は大きな重大事故の前触れ、あるいはそれを引き起こす可能性があるということを指しています。

出典:バードの分析|厚生労働省
参照:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo79_1.html

ハインリッヒの法則を考える上で重要な「ヒヤリ・ハット」

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ハインリッヒの法則にある1つの重大事故の背後に隠れている小さな失敗や出来事は仕事や作業している時に危うく惨事になるような「ヒヤっとした」、あるいは「ハッとした」ことを指します。

これらの「ヒヤっとした」、あるいは「ハッとした」ことを取り上げ、労働災害を防ぐ目的として始まったのが、ヒヤリ・ハットという活動です。ハインリッヒの法則を考える上で、ヒヤリ・ハットは欠かすことができないものといえるでしょう。

出典:ハインリッヒの法則|厚生労働省
参照:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo24_1.html

厚生労働省が公開するヒヤリ・ハットが発生する15の災害事例

ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説
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厚生労働省が運営する職場のあんぜんサイトでは、ハインリッヒの法則で示されている危うく惨事を引き起こすような、ヒヤリ・ハットする出来事や事例を収集し公開しています。

ここからは、職場のあんぜんサイトで挙げられている15全てのジャンルからそれぞれ事例を紹介していきます。また併せて、事例の発生原因・要因についてもみていきますので、参考にしてみてください。

出典:職場のあんぜんサイト:ヒヤリ・ハット事例|厚生労働省
参照:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.htm

1:巻き込み・挟まれる要因

まずは、巻き込み・挟まれそうになった事例についてです。

機械の清掃時に着用していた軍手が機械に巻き込まれそうになった、緩やかに下った傾斜地にトラックを停車した際に、後退してきたトラックに挟まれそうになったなどの事故が報告されています。

要因として、機械の停止やブレーキの確認が不十分であったことや安全装置がなかったことなどが挙げられます。

2:発火・感電・火災の要因

発火・感電・火災の事例は、電源ケーブルの絶縁被覆が一部破損していたことで感電した、灯油ボックスの近くで溶接バーナーに火を付けたまま別の作業をしていたことで火災が起きかけたなどが報告されています。

また、清掃業者が床を水拭きしている際に、床にあった電源タップに水がかかりショートし停電を起こしてしまったという事例もあります。

要因として、電気機械器具の漏電や防水などの対策、作業環境の安全確認が不十分であったことが挙げられるでしょう。

3:交通事故の要因

労働災害の中でも交通事故は、一般の人を巻き込みやすい事故の1つといえるため、より一層の対策が求められるでしょう。

具体的な事例では、歩車分離式の交差点で車両用信号機の確認不足で歩行者とぶつかりそうになったり、前方不注意により路肩に駐車していた他の車を避けるのに遅れてしまい衝突しそうになったりなどが報告されています。

要因として、運転者の周囲への確認不足や車両設備の準備不足、また運転者の体調チェック不足が挙げられるでしょう。

出典:ヒヤリ・ハット事例(交通事故)|厚生労働省
参照:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/11.html

4:高・低温の物質などの接触の要因

この事故では、自然環境によるものもあり、人為的な要因による事例と合わせて注意が必要といえるでしょう。

具体的には、炎天下で草刈り作業や舗装工事を行い、作業中や終業後に体調が悪くなった事例が報告されています。また、飲食店で使用後の食用油を廃棄する際に、高温の油の中に水をいれたことにより突沸を起こしてしまった事例もあります。

要因として、屋外作業時の作業管理や熱中症に関する安全衛生教育が不十分であったことや、油などの高温になっているものの廃棄手順や注意事項の周知不足が挙げられるでしょう。

5:転倒しそうな要因

公開されている事例の中でも件数が多いものの1つが、転倒です。

トラックから荷卸し作業中に、ストッパーをかけ忘れていたことにより動き出したカーゴ台車を避けるために転倒しそうになったり、法面での除草作業中に雑草に足を滑らせ転倒しそうになったりなどがあります。

こうした事例が起きる要因として、作業環境の安全確保が不十分であったこと、作業者への注意喚起や作業者自身の危機管理不足などが挙げられるでしょう。

6:墜落・転落の要因

現在公開されている事例の中で、最多件数となっているのが墜落・転落です。作業の際に使用している脚立の不具合、足場としている樹木の枝や踏み台の破損によるヒヤリ・ハットが多く報告されています。

たとえば、エアコンフィルターの清掃中に脚立が急に開き転落しそうになったり、剪定作業中に足場としていた枝が折れ地面に墜落しそうになったりといったことがあります。

要因として、足場とする機材や枝の状態確認を十分にしなかったことが挙げられるでしょう。

7:有害物との接触の要因

ヒヤリ・ハット事例の中には、有害物によるものも報告されています。

たとえば、営業後に換気扇を止めた状態で、燃え残りの炭を片付けていたことにより体調を崩してしまったり、清掃時に使用していたゴム手袋に小さな穴が開いていたことで、希釈した苛性カリ液が指に触れ軽い炎症を起こしてしまったりといったことがあります。

要因として、作業場の喚起が不十分なことや作業時に使用する薬剤などの有害性への理解不足などが挙げられるでしょう。

8:接触・衝突・激突の要因

接触や衝突などの事例では、フォークリフトを運転中に一時停止を怠ったことで他の作業者と衝突しそうになったり、屑鉄処理作業中にバッカンが振れて作業者にぶつかりそうになったりなどがあります。

こうした事例の要因として、移動時も含めた作業環境調整の不十分さ、使用する設備の安全確保が徹底されていなかったこと、また作業者自身の危機管理の薄さが挙げられるでしょう。

9:交通事故以外の激突の要因

車や作業者などに激突されてしまいそうになるのは、交通事故以外にも報告されています。

緩やかな下り勾配に駐車させる際、サイドブレーキをかけ忘れたことによってトラックが後ろ向きに動き出し激突されそうになった事例や、市場内荷卸し時に、フォークリフトの移動方向に別の労働者がいたことで激突しそうになった事例などがあります。

要因として、車両を駐車する際のサイドブレーキや輪留め使用時における安全対策が不十分なこと、フォークリフトなどの重機を使用する作業場の安全確保や誘導員の配置不足が挙げられるでしょう。

10:倒壊・崩壊の要因

倒壊・崩壊の事例では、古紙等の集積場で古紙の圧縮物(重さ約500kg)を3段に積み上げたところ、その重さによって圧縮物が変形し崩壊したことによって、近くで清掃していた作業者が下敷きに遭いそうになった事例があります。

また他の事例では、適正なはい付け(箱ものなどを一定の方法で規則正しく積み上げること)が行われなかったことによって、荷崩れを起こし倒壊しそうになったというものです。

要因として、適正な倒壊防止措置が講じられていなかったことや、重機を用いての積み上げ作業に関する教育が不十分であったことなどが挙げられます。

11:飛来・落下物の要因

ヒヤリ・ハット事例の中で飛来・落下物の事例は、人為的なものだけでなく突風や雪などの天候によるものも報告されています。

人為的なものとしては、足場の解体作業時に足場材を地上に落下させてしまった事例や、巻き過ぎ防止装置の電源を切った状態で巻き上げしたことによって、クレーンのワイヤーが切れバッカンを落下させてしまい作業員にぶつかりそうになった事例があります。

一方、天候による事例としては、資材置場で突風により型枠があおられてしまったことや、除雪作業中に屋根から雪が落下してぶつかりそうになったことなどです。

人為的なものが要因となっている場合、作業環境の安全確保や使用する機材に合わせた有資格者の配置などが欠けていたことが挙げられるでしょう。

12:破裂の要因

現在、破裂が原因となっているヒヤリ・ハットの事例はそれぞれタイヤの破裂によるものです。

1件目は空気を充填したタイヤを装着しようとした際に、タイヤチューブが破裂しサイドリングが吹き飛び作業員に当たりそうになった事例、2件目ではタイヤに空気を充填している時に、突然タイヤが破裂した事例です。

要因としては、タイヤやそれに付随するパーツの点検不足といえるでしょう。

13:接触・切傷の要因

接触・切傷のヒヤリ・ハット事例には割れた食器や尖った針が原因となっているケースもあり、刃物によるものだけではないことが分かります。

割れた食器を誤って掴んでしまい手を切りそうになった事例や、点滴用具の廃棄時に誤って指に針を刺してしまった事例が報告されています。

また、刃物による事例では、パン工房においてスライサーで食パンを切断している時に、スライサーの刃が指に当たりそうになったケースもあります。

要因として、作業者の不注意や安全確認の不足、作業時に適切な道具を使用しなかったことが挙げられるでしょう。

14:動作の反動・無理な動作の要因

無理な動作や動作の反動による事例では、介護時に被介助者をベッドから車イスに移乗させようとした時に、無理な姿勢で介助したことによって腰を痛めてしまった事例や、不安定な足場にもかかわらずつま先立ちで拭き掃除を行い滑り落ちそうになった事例があります。

要因として、作業者の危機管理意識の低さや作業時の環境調整の不十分さが挙げられるでしょう。

15:その他の要因

その他の特殊なケースには、ビニールハウス内の除草作業中、蜂が入り込み刺されそうになった事例や、大雨による地下飲食街の冠水、潜水作業中に潜水士のヘルメットが外れてしまったケースなどが報告されています。

要因として、作業時の周辺環境の安全確認不足や使用する機材の点検不足などが挙げられるでしょう。

ヒヤリ・ハットが発生する3つの場面

仕事や作業中だけでなく、普段の生活の中でもヒヤリ・ハットするような出来事を経験した方も多いのではないでしょうか。

ここからは、ヒヤリ・ハットが起きやすい場面について紹介していきますので、安全対策を考える際の参考にしてみてください。

1:車の運転中

車の運転は仕事の時だけでなく、日常生活でも行われるものでしょう。そうしたについての調査が、自動車安全センターによって報告されています。

車の運転中にあるヒヤリ・ハットには、前方で走行している車両に接近しすぎたことによる追突のおそれや、前方車両の急ブレーキによる追突事故のおそれ、人や自転車の飛び出しによる事故発生のおそれが挙げられます。

2:仕事の作業中

事務所内では、清掃時の2階の窓ふき、蛍光灯の交換、キャビネットの資料を取るといった高所での作業や脚立などを使用するシーンでの転倒、転落が挙げられます。また、事務所の床に置かれているケーブルなどにつまずき転倒してしまうケースなどもあるでしょう。

事務所以外では、両手に書類や荷物を持った状態で階段を使用したことで転倒するケースや、書庫で書棚が転倒してしまうといったことも想定できます。

3:日常の生活

日常生活でも、思わずヒヤリ・ハットしてしまう経験をした方も多いのではないでしょうか。特に、高齢者や乳幼児がいる家庭では注意したい場面がいくつかあります。

入浴の際に浴室の床が濡れていたことで転倒しそうになったり、ベビーベッドの柵が開いていたことで赤ちゃんが転落しそうになったりしたことなどが挙げられます。

ハインリッヒの法則から学ぶ4つの対策方法

労働災害を数値やデータによって表したハインリッヒの法則は、企業の安全管理を考える上で重要な役割を持っています。

ここでは、ハインリッヒの法則から学ぶ4つの安全管理に関する対策を紹介していきます。

1:従業員の意識改革をする

ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背後には300件のヒヤリ・ハットする出来事が起きていることを示しています。

従業員自らが仕事や作業中のヒヤリ・ハットした出来事を報告するといった意識改革とともに、企業側は早期に報告するルールづくりや義務化といった対策が重要です。

2:事故発生の可能性を検証する

従業員が経験したヒヤリ・ハットは、また同じような事例が起きないように発生原因を分析し検証する必要があります。

ヒヤリ・ハットに関する報告は当事者・当該部署以外の人でも理解できるよう、客観的かつ具体的に書くことが大切です。この時、いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうしたのかという5W1Hを意識して書くとよいでしょう。

3:詳細を報告できるシステムをつくる

災害の見える化を行ったハインリッヒの法則から学べることの1つに、ソフト面・ハード面からなるシステムづくりがあります。

ヒヤリ・ハットする出来事が起きてしまった際に、詳細を報告できるフォーマットや体制づくり、さらに安全管理に関する教育の実施が挙げられます。

4:すぐに改善できる担当者を決めておく

ヒヤリ・ハットを報告し対策を取れるようにするために、安全管理に関する部署や担当者を決めておくことが大切です。

この時、担当部署や担当者への報告が正確、迅速に行えるように、報告するための時間を確保することはもちろん、報告者の立場や評価が下がらないようにすることを明示しましょう。

ハインリッヒの法則を活用してトラブルを回避しよう

ハインリッヒの法則とは?発生する15の災害事例と対策方法を解説
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今回の記事では、ハインリッヒの法則とそれに関する事例や対策について紹介してきました。ハインリッヒの法則が発表されてから約100年経った現在においても、この法則は労働災害を予防するための基本的な考え方として用いられています。

危うく惨事を引き起こすようなヒヤリ・ハットする出来事を軽視せずに、しっかりとした安全管理対策を行っていきましょう。

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