BtoBのマーケティング成功事例16選|企業ごとの施策ポイントを参考にしよう
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初回公開日:2022年03月25日
更新日:2022年03月31日
BtoBマーケティングとBtoCマーケティングとの相違点
企業の行うマーケティングは、マーケティングの対象によって、BtoBマーケティングとBtoCマーケティングに大別することができます。
「BtoB(Business to Business)」は企業が企業と行う取引を指す言葉で、「BtoC(Business to Customer)」は企業が消費者と行う取引を指す言葉です。
BtoBとBtoCは、下記のような点に主な違いがあります。
・取引の単価
・購入等の意思決定に関わる人の数
・意思決定に要する時間
・意思決定の判断基準
BtoBでは、商品の価格やサービスの契約金額など、取引の単価がBtoCに比べ高い傾向にあります。
BtoBでの購入等の意思決定は組織として行われるものであり、意思決定に至るまでのプロセスには複数の人が関わります。こうした組織という特性と、単価が比較的高いということもあるため、BtoBでの意思決定は即断的ではなく、客観的な基準に基づいて判断が行われます。
これに対し、BtoCで意思決定を行うのは購入を行う消費者本人かその家族などの個人、あるいは本人と家族などを合わせた少数の人です。客観的な観点を意識する場合でもBtoBほど厳格でない場合が多く、その判断には意思決定をする人の感情も大きく関係します。
これらを踏まえると、BtoBマーケティングには、BtoCマーケティングとは異なるアプローチや観点が必要とされることがうかがえます。
では、そんなBtoBマーケティングで成功するためには、どんなことを意識したり、気をつけたりしていけばよいのでしょうか。
この記事では、BtoBマーケティングの成功事例とともに、マーケティングの成功に重要な事柄やポイントについて紹介していきます。
マーケティングに重要なリレーションとその要素
BtoBマーケティングでは、顧客との「リレーション」が重要です。ここでのリレーションは顧客との間のよい「関係」を指し、顧客に自社の製品・サービスを認知してもらうところから購入・契約までのあらゆる段階で、よい関係を築き維持することが重視されます。
顧客とのリレーションの構築・維持を重視する場合、マーケティングはリード(見込み客)の創出からはじまり、購入・契約まで5つのステップに分けることができます。
この5つのステップについて、それぞれ見ていきましょう。
リードジェネレーション
リードジェネレーションは、見込み客を創出することを指します。「見込み客」とは自社の製品・サービスに関心を持っている人々です。
具体的には、顧客との接点を作っていきます。接点にはオフラインのものとオンラインのものがあります。
オフラインの接点としては、テレビCM、交通広告、セミナー、展示会、電話営業、名刺交換、などが挙げられます。
オンラインの接点としては、自社Webサイト、メルマガ、ウェビナー、コンテンツマーケティング、Web広告、などがあります。
リードナーチャリング
リードナーチャリングの段階では、見込み客を育成していきます。ここでの「育成」は、購入意欲を高めて顧客にすることが目的です。
「ホット・リード」と呼ばれる購入意欲の高い見込み客は、当初は見込み客全体の1割ほどしかいないと言われます。
残りの9割、購入をすぐ検討していない見込み客についても、その潜在的なニーズを引き出すことで、顧客になる可能性が高まります。
潜在的なニーズを引き出すには、見込み客の関心・興味を高めることが重要です。具体的な方法としては、コンテンツなどの接点を通じた有益な情報の提供や、見込み客の抱える課題の調査とその課題に対する提案、などが挙げられます。
特にBtoBにおいては、意思決定には複数の人が関わりプロセスも長くなりやすいため、それぞれの見込み客の課題をしっかり捉え、それぞれによりよくマッチした対応をとっていく必要があります。
リードクオリフィケーション
リードクオリフィケーションは、具体的な商談・受注の手前に位置する段階です。この段階では、育成した見込み客の中から、実際の商談・受注につながるホット・リードを「選別」します。
ホット・リードを見つける具体的な手法として、しばしば「スコアリング」が用いられます。
例えば、
・メルマガを開封した:3点
・資料請求をした:5点
・ウェビナーに参加した:7点
といった形で見込み客に点数をつけ、一定の基準点数を超えた見込み客をホット・リードとします。
こうして決めたホット・リードをリストなどにすることで、効率的に営業活動を行うことができます。
商談から受注
この段階では、前の段階までで作り上げられたホットリードに対して商談を行い、受注につなげます。
商談の際には、対象のリードのこれまでの段階での言動をよく把握しておき、商談の内容を最適化することで受注につながりやすくなります。
また商談中のリードの言動を記録しデータとして蓄積しておくと、受注につながりやすい条件やパターンを客観的に導き出すことものちのち可能になります。こうして見つけた条件・パターンを活用することで、受注率の向上も期待できるでしょう。
サービスの継続利用
再度の受注やサブスクリプション形式のサービスの継続利用のためには、一度受注した後も、価値を提供し続けていく・新しい価値を提供していくことが必要になります。
この段階では、顧客の不明点・疑問点への回答の提供や、利用状況に基づいた課題解決へのアドバイスなどを積極的に行う、カスタマーサクセスを提供していくとよいでしょう。
並行して、製品やサービスに愛着を持つ顧客:ロイヤルカスタマーの育成を進めていくことも重要です。
BtoBのマーケティング成功事例16選
ここからは、BtoBマーケティングで成功した、具体的な事例を紹介していきます。
具体的な事例を知ることで、そこから学べることがあります。また複数の事例を比較することで、共通点などを見つけることもできるでしょう。
1:お問い合わせフォームへのスムーズな誘導
大手の生活用品メーカーの成功事例です。こちらの企業では、以前はWebサイトからの問い合わせのうち約50%以上が目的外のものでした。
そこでWebサイトを改善したところ、問い合わせ数の増加、更には売上の増加にもつながりました。
Webサイトの改善の一部として行った、お問い合わせフォームへ関心のあるユーザーがたどり着きやすいよう動線を張ったことが、成功の一因とみられます。
2:オンラインスクール方式で認知拡大
大手飲料メーカーのグループで抗体医薬品の分野に強みを持つ製薬会社の成功事例です。
「抗体医薬」やそれによって実現される「個別化医療」(患者ひとりひとりに最適な治療を行う医療)への一般の人による認知が薄く・理解が進んでおらず、事例以前はこの会社の社名もあまり認知されていませんでした。
そこでこの会社は著名な特撮番組のキャラクターを起用し、抗体医薬や個別化医療について楽しみながら学べるオンラインスクール方式のWebサイトを公開しました。このサイトは非常に多数のアクセスを記録し、利用者のうち抗体医薬について理解した数は全体の半数を超えたそうです。
成功につながった要因としては、遊びの要素を取り入れて楽しみながら学べる作りになっていたことや、ターゲットを40~50代の層に絞り、この層になじみ深いキャラクターを起用したことなどがあるようです。
出典:個別化医療とは|医療法人社団 金沢先進医学センター
参照:http://www.kadmedic.jp/personal.html
3:徹底したペルソナの再設計
大手電機メーカーのグループで業務用の電気製品を製造・販売する会社の成功事例です。
業務用エアコンの分野で同社は卸にあたる「特約店」と取引をしていますが、特約店から製品の供給を受けて販売している、エンドユーザーとやりとりのある「設備店」の抱えている課題などを把握しきれずにいました。
そこで、1800社以上の設備店にアンケートを実施し、その結果を基に、設備店店主を想定した具体的なペルソナを設定しました。この具体的なペルソナに基づいてマーケティングを行ったことで、業務用エアコン分野における同社のシェアが向上しました。
アンケートに加えて、回答者の多数を占めた10人以下の設備店については実際に訪問してのインタビューも行ったそうで、こうして集めた現場の声を適切にマーケティングに反映させたことが、成功につながったのでしょう。
4:ハッシュタグでプロモーションを拡散
カナダにある大学の成功事例です。
この大学は、大学のイメージアップ、また認知度を上げることなどを目的に、Instagram上でプロモーションキャンペーンを展開しました。
このキャンペーンでは、Instagramを利用している学生に、学生それぞれのストーリーと大学周辺の写真を専用のハッシュタグを使って上げてもらう取り組みを行いました。
このキャンペーンの結果、わずか6週間で50万以上のインプレッション獲得しました。
この成功には、専用のタグを用いて学生を巻き込んだキャンペーンが功を奏したと言えるでしょう。
5:MA導入で効率化アップ
電子計測器で知られるメーカーの成功事例です。
この会社では、以前はそれぞれの部門ごとにお客様情報が管理されており、例えば、メールマガジンの配信が効率的に行えていない、といった問題がありました。
この会社では、MAツールの導入が成功につながりました。
MAツールを導入したことをきっかけに、部門ごとに管理されていたお客様情報がひとつに統合されました。その結果、コンタクトのできる見込み客が1.5倍以上に増えたそうです。また、しばらくの間連絡を取っていない見込み客の割合を可視化することもできました。
6:SNSでプロジェクトの拡散に成功
各種プリンターや計測機器を手がけるメーカーの成功事例です。
この会社は、経営者層向けのプロモーションとして、プリンターを活かして子どもたちに夢を持たせるようなプロジェクトを実施し、そのプロジェクトのビデオをWeb上で公開しました。
この動画は単に公開されただけでなく、テレビCMや電車内の広告、同社のFacebookなどで展開され、その結果再生数は200万回にも達しています。
これだけの成功をした理由としては、動画をひとつの媒体のみでなく、SNSを含めた様々な媒体で展開したことが挙げられるでしょう。
7:オウンドメディアの活用
M&Aの仲介を行う会社の成功事例です。この会社では、Web上でM&Aについての情報を得たいという需要に着目し、自社メディアを積極的に用いることを決めました。
自社メディアではM&Aに関する記事やM&A関連の最新情報などを提供し、こうして自社メディアのコンテンツを整備したことで、月間のPV数が100万に達する結果となりました。
8:コンテンツSEOの施策実施
テレワーク向けの機器やサービスの提供を行っている会社の成功事例です。
この会社では、自社サイト・自社メディアのリニューアルに合わせて、テレワークに関する企業としての認知を広げることや見込み客の獲得数の増加を目標としました。
自社メディアでは100件以上の既存コンテンツの改善とさらなるコンテンツの追加を行いました。こうした自社メディアの改善とサイトのリニューアルなどの結果として、テレワークに関するキーワードで多数のアクセスを得て、見込み客の獲得も月間1500件に達しました。
9:インバウンドマーケティングを社内業務化
店舗向けに集客を支援するデジタルマーケティングのサービスを提供している会社の成功事例です。
以前はアウトバンド(企業から顧客に働きかける形式)での営業が中心でしたが、新規顧客の獲得に課題がありました。そこでこの会社は、インバウンドマーケティングを社内のリソースで実施できるようにする取り組みを行いました。
その結果、受注率は約15%を超え、アポの獲得率は約60%以上になるという成果が得られました。
10:自社情報をYouTubeで配信
工場で使う機器の製造を行っている会社の成功事例です。
この会社では、自社のWebサイトやブログを通した問い合わせが受注につながりにくいという点に課題を持っていました。
この課題に対して、Webコンテンツの改善・見直しに取り組んだところ、新規の問い合わせが3倍以上になるという結果になりました。
Webコンテンツの改善・見直しにあたって、商品情報に加えて、技術力の高さを活かした動画コンテンツなどを用いた発信も行ったことが、成果に結びついたのでしょう。
11:見込み顧客のデータを一元化
大手電機メーカー・ITベンダーのグループで、公共分野などを中心にシステムインテグレーションを行う会社の成功事例です。
この会社は以前、営業など各部門が集めた見込み顧客情報の管理や、コンテンツの企画・制作に課題を抱えていました。
そこでこの会社では、見込み顧客に関する情報を一元管理するシステムを構築するとともに、このシステムから得られるデータを活かしてコンテンツの拡充に取り組みました。
この取り組みによって、力を入れた時期には年間300ほどの記事を上げ、サイトの訪問者もこの時期は前年度の約2.5倍を記録しています。
12:エンジニア不要のCMSで更新スピードアップ
調剤薬局向けのサービスを展開する会社の成功事例です。
この会社では、あるときからコンテンツマーケティングに力を注ぎ始めました。それにあたり、Webサイトの更新にエンジニアの力を借りなければならずその分エンジニアの工数を要してしまうことに課題がありました。
そこでこの会社では、エンジニアに頼らなくてもよい、マーケティング部門のスタッフだけで運用できるCMSを導入しました。これによってサイトの更新スピードが上がり、以前は数週間かかっていたものが数時間~1日程度で済むようになりました。
更新頻度が上がったことに伴って、CV数の増加にもつながっています。
13:チャットボットで心理的ハードルを低減
クラウドを利用した受付システムを提供する会社の成功事例です。
この会社は、LPにおいて、資料請求に至らない段階での離脱率が高いという課題を抱えていました。
この課題に対してこの会社では、Webサイト上にチャットボットを導入しました。その結果、資料の請求数が導入以前と比べ約160%以上増加しています。
14:インタラクティブコンテンツの充実
ネイティブ広告のサービスを提供する会社の成功事例です。
この会社ではあるときから、市場に合わせたマーケティングの必要性からデジタルマーケティングの活動を本格的に始めました。
それにあたりこの会社では、WebサイトにeBookなどを活用したインタラクティブコンテンツを導入しました。またインタラクティブコンテンツからサイト内のブログ記事への動線の設置なども行いました。
これらの施策の結果として、見込み客の獲得率が施策を行う以前の2倍近くになっています。
15:生産管理システムの導入でペーパーレスを実現
変圧器の設計・製造・販売を行う会社の成功事例です。この会社は、納入状況の早期把握や、工程負荷の把握をしたいという要望を持っていました。
これらの課題に対して、オフィスオートメーションの機能を持つ生産管理システムを導入し、各種管理や各種集計のデジタル化・ペーパーレス化を実現しました。
この会社では更に、取引先と連携して発注取引のEDI(電子データ交換)化にも取り組んでいます。
16:革新的な動画でイメージアップ
業務用大型トラックを製造・世界の各地で販売する会社の成功事例です。
この会社は、自社のトラックの性能のアピールのために、動画のシリーズを制作・オンラインで公開しました。それらの動画は著名な俳優を起用したり少し変わった発想をしていたりと、エンターテイメント性も強くかつ製品の性能をよくアピールするものでした。
この動画シリーズによるプロモーションは成功をおさめ、更に複数の世界規模の広告賞で受賞をするに至っています。
成功事例から分析するマーケティングの7つのポイント
ここまでBtoBマーケティングでの成功事例を見てきました。ここからは、事例の内容を基に、BtoBマーケティングで成功するためのポイントについて整理します。
具体的には、下記の7つのポイントで見ていきましょう。
- 現在の課題を洗い出し目標を決める
- 顧客のニーズを把握する
- STPを明らかにする
- KPIを決める
- PDCAを回す
- 他部門と連携を取る
- 外部パートナーの助けを得る
1:現在の課題を洗い出し目標を決める
目標設定の前段階として、現状の課題を洗い出すために、目指すものと現状を比べることで、不足しているものやそれを補うためにどうすればよいか、といったことを明確にする必要があります。
そうして洗い出した課題に解決していく優先順位をつけて、目指すものを見据えつつ、具体的な目標を設定していきます。
2:顧客のニーズを把握する
顧客を理解してそのニーズを把握することは、BtoBマーケティングにおいてとても重要です。
BtoBにおいては意思決定プロセスが複雑になりやすく、関わる人物も複数であるため、プロセスの細かい段階ごとに適切な情報を提供していく必要があります。
顧客を理解するために、ペルソナの設定やカスタマージャーニーマップの作成を行うのもよいでしょう。
3:STPを明らかにする
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation/市場の細分化)、ターゲティング(Targeting/狙う市場の選定)、ポジショニング(Positioning/自社の立ち位置の把握)の3つの観点から、製品やサービスの立ち位置を明らかにする分析手法です。
STP分析で立ち位置を明らかにすることで、製品やサービスの持つ優位性を知ることができ、競合についての戦略を考えることも可能になります。顧客や市場の把握につながり、その把握したものをペルソナ設定などに活かすこともできます。
4:KPIを決める
KPI(Key Perfomance Indicator)とは、大きな目標の達成のために設定する中間指標です。日本語にして「重要業績評価指標」とも呼ばれます。
KPIを適切に設定することで、目標に至るプロセスの進捗度合いをより正しく知ることができます。
BtoBマーケティングにおいては、リレーションの構築から購入・契約までのステップのように、顧客がプロセスのどこにいるかによって行う施策が異なります。このためKPIも、プロセスのステップごとに適切な形で設定することが必要です。
5:PDCAを回す
PDCAサイクルは、Plan(計画・企画)、Do(実行)、Check(評価・分析)、Act(改善)の4つで構成される、品質などの管理を効率的に行うための手法です。
PDCAサイクルは、「サイクル」とある通り、1度きりではなく何度も繰り返す、サイクルを「回す」ことが重要です。PDCAサイクルを何度も回すことで、大きな改善につながっていきます。
PDCAサイクルを回すためには、KPIを適切に設定することも必要です。適切なKPIを指標にDoやCheckを行うことができれば、具体的な改善策もよりよいものになるでしょう。
6:他部門と連携を取る
購入・契約に至るまでのプロセスには、必ず、営業などの自社の他部門が少なからず関わっています。
このため、マーケティングの成功のためには、自社内の他部門との連携も重要です。マーケティング部門による独りよがりな活動にしないためにも、目標やKPIの設定などの段階から、他部門と積極的に連携をとるよう心がけましょう。
7:外部パートナーの助けを得る
社内のリソースだけでマーケティングがうまくいかない場合、外部パートナーの協力を得ることもひとつの手として検討してみましょう。
外部のリソースを活用することで、社内のメンバーが経験のない分野での経験から知見を得られたり、社内のメンバーが個別の役割に専念できることで効率が上がったり、といった効果も期待できます。
成功事例からBtoBマーケティングのポイントを学ぼう
ここまで、BtoBマーケティングの成功事例とともに、マーケティングの成功に重要な要素や成功のためのポイントを見てきました。
成功事例の内容は様々ですが、それらの成功には、共通する点も少なからずあります。また、BtoBマーケティングでの成功にはリレーションの構築・維持も重要な要素です。
本記事をきっかけとして、自社のBtoBマーケティングの成功につながるポイントを、探ってみてはいかがでしょうか。