マーケティングにおけるプロモーションの役割とは?成功・失敗事例を参考にしよう
記載されている内容は2021年07月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2021年07月19日
更新日:2021年07月19日
マーケティングにおけるプロモーションの役割
自社製品やサービスのマーケティング戦略を考える際、フレームワーク4Pの1つであるプロモーション、つまり販売促進は非常に重要視される要素です。どんなに優れた製品やサービスがあっても、その良さが顧客に伝わらなければ購買意欲を喚起することはできません。
この記事では効果的なプロモーションとは何か、その代表的な手法やメリット、成功や失敗の具体的事例について紹介します。
プロモーションの目的
プロモーションの主な目的は、製品・サービスの認知度や評判を高め、売上や利益を向上させることです。
マネジメントやブランディング、セールスなどの企業活動はすべてプロモーションに繋がります。プロモーションを成功させることによって、「ファン」を固定層とした安定的なビジネスの展開が実現します。その成否は会社の未来の流れに直結するものと言えます。
プロモーションの種類と手法6選
プロモーションには数々の手法が研究され、開発されています。様々な分析を行い、有効な手法を組み合わせたプロモーションミックスを戦略的に実施していくことで、相乗的な効果が期待できます。
まずは、プロモーションの代表的な種類と具体的な手法について見ていきましょう。
1:広告・広報
広告・広報とは、文字通り広く知らせて認知度を上げる手法のことです。
従来の手法としては、テレビCMや新聞、雑誌の広告枠を利用し、視聴者や読者の属性、地域性に合わせたメッセージを発信することで効果を狙います。
また、最近では自社サイトを使って、コンセプトカラーやコーポレートアイデンティティを自由に強く打ち出す形での広告も増えています。しかし自社サイトを使った広告は、BtoBには有効ですが、BtoCではブランド力の差によって効果が大きく違ってきます。
2:PR
PRとは「パブリックリレーションズ」の略で、組織体とパブリックとの間に相互に利益をもたらす関係性を構築するという意味のマネジメント用語です。
PRと単なる広告との違いがわかる事例としては、製品やサービスだけでなく、企業の「組織的な価値」を上げることで認知度を高め、マーケティング効果を期待する手法があります。
例えば、注目されるような社会貢献活動を企業として積極的に行ったり、最先端のマネジメント手法やルールを取り入れ、その情報発信を通して企業そのもののファンを増やすというやり方があります。
PRでは、社会的でグローバルな企業活動を展開することもできますが、その一方で効果的な情報発信に成功しない限りは、購買意欲に直結することはなく、実施の意味が薄れてしまうことも危惧されます。
3:販促
販促(販売促進)とは、プロモーションの中でもダイレクトに購買意欲を高めるための活動を意味します。
主な手法としては、キャンペーン企画や体験イベントを通して製品やサービスの良さを実際に体験してもらう機会を提供する活動が挙げられます。
また、購買者をターゲットとし、再度の購入を促すDM(ダイレクトメール)も有効な販促の1つとして多くの企業で実施されています。最近では、メールではなくSNSを利用したDMが主流となりつつあります。このSNSでの販促については、のちほど詳しく紹介します。
4:セールス
セールスとは営業活動そのものを意味しますが、セールスプロモーションは横並びの競合他社への顧客流出防止を目的に実施されます。
流通網を利用して試食や無料サンプルの配布、会員特典や特別割引の付与など、差別化を図る手法が用いられます。また、流通先の店舗で自社製品が置かれる位置や、購買意欲を上げるポップの提案など、店頭プロモーションもセールス活動に重要なものです。
5:口コミ
ファンからファンへ、顧客からその知人へと、製品やサービスの良さや悪さといった評判が伝播していく口コミは、プロモーションの肝となる手法です。
誰しも、知らない人から言われたことより、身近な人や親近感を感じる人の言葉の方が響きやすく、購買の動機と結びつきやすいです。
その効果があまりにも大きいことから、意図的に口コミ効果を狙った広告やプロモーションが打たれる事例が多く見受けられますが、やり方を間違えると逆効果となり、悪影響を生むこともあるので、注意が必要です。
6:SNS
SNSを使ったプロモーションは、昨今各企業が力を入れている手法の1つです。
現代人は、TwitterやLINE、Facebookなどのメッセージに対して、身近な人の言葉以上に親近感を持ったり、共感したりすることが多く、口コミ以上の購買喚起効果がSNSプロモーションには期待されています。
そして、InstagramやYouTubeといった、画像や動画によるイメージプロモーションにも高い注目が寄せられています。発信力の高いインフルエンサーが社会的に大きな影響を与える存在になるなど、SNSプロモーションの熱は冷める気配がありません。
一方で、SNS疲れといった現象も起こり始めており、SNSでの発信はターゲットを間違えるとまったく効果が出ないこともあるため、メディア利用者の属性把握は必須と言えるでしょう。
プロモーション戦略で考慮するポイント4つ
プロモーションには様々な手法がありますが、マーケティングコミュニケーションとも言われるように、売り手と買い手の間でより良い形でのコミュニケーションや信頼関係をいかに作っていくか、という視点からプロモーション戦略を練り上げていくことが重要です。
ここからは、プロモーション戦略で考慮する4つのポイントについて、見ていきましょう。
1:STPを分析する
様々なプロモーションを効果的に組み合わせたマーケティングミックスを成功させるために、STPと呼ばれる分析が有効だとされています。
STPとは、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」を略したマーケティング用語です。
「セグメンテーション」、つまり市場や顧客のニーズや性質によってグループに分割して分析を行い、その結果を受けて戦略上の「ターゲティング」を定め、また自社の市場での「ポジショニング」を明確化することで、最適なプロモーションが選択できます。
2:ターゲットに合った手法を選ぶ
STP分析によって明確になったターゲットの属性情報を分析していくと、使いやすいツールやメディアが明らかになります。そこで、効果が出るプロモーション媒体がWEB、SNS、紙面なのどれなのか、実施すべき詳細を決定していくことができます。
また、「ペルソナ(persona)」というサービス・商品の「典型的ユーザー像」も、ターゲティングの結果、より明らかに見えてきます。
ペルソナを立てることで、より具体的なメッセージ性を持ったプロモーションが、ターゲットに合う形で打てるようになりますが、その際はターゲティングを入念に分析し、読み間違えないように注意しましょう。
3:達成目標に合った手法を選ぶ
プロモーションは成功すれば想定以上の反響も期待できますが、自社の生産体制や人員体制等を鑑みて、マーケティングの達成目標に見合った戦略を立てることが重要です。
例えば、資格取得を目的としたセミナーをプロモーションする際、会場のキャパシティや運営スタッフ、講師の手配、予算など、関係するすべての要素を踏まえて、設定された売上達成目標に見合ったプロモーションを考えます。
テレビCM、新聞広告など広域広告は事業の認知を上げるための効果が期待できます。ターゲットを絞り込み、参加希望者をWEB上の申込用フォームまで誘導するためには、WEBバナー広告やリスティング広告が効果的です。
また、自社サイトで効率的な勉強方法をブログ形式で紹介するなど、ターゲットに有益なPR企画を打つことで信頼感が高まり、参加希望者が申込に進む決め手ともなり得ます。
そして、募集開始後しばらくすると、また違うフェーズとして、セミナーを定員まで埋めるなど新たな達成目標の元で、従来の顧客層やターゲットへのDMなど、即効性のあるプロモーションを打つことが必要です。
4:自社イメージと乖離しない
プロモーションは打てば打つほど効果が上がる反面、プロモーションだけが独り歩きをして、自社のイメージやコーポレートアイデンティティなど、本来大切にするべき部分から離れてしまい、失敗に陥ってしまうケースもあるので注意が必要です。
老舗の大手企業であっても、古いイメージを壊すために、斬新なキャッチフレーズや奇抜なイメージ写真で広告を打った結果、既存客が離れてしまったということも起こり得ます。
プロモーションとは注目を集めればそれで良いというものではありません。企業理念やコーポレートアイデンティティを、いかにわかりやすく魅力的に伝えることができるか、という点にプロモーションの本来の目的があります。
プロモーションマーケティングの成功事例
ここでは、プロモーションマーケティングの成功事例を紹介します。
無印良品ブランドで広く知られる「株式会社良品計画」です。現在、無印良品ブランドは日本国内よりも海外の店舗数が多く、特に中国で高い人気を保っています。
プロモーション戦略を成功させたポイントは、「What is MUJI?」というコーナーを設けて、ブランドのコンセプトをわかりやすく丁寧に解説しながら新店舗を展開していったことにあります。
自社理念そのものを魅力あるブランドコンセプトに仕立てて、常に新しい要素を取り入れながら、誰にでもわかりやすく提示していく、正にプロモーションの大道とも言える成功事例です。
プロモーションマーケティングの失敗事例
それでは次に、プロモーションマーケティングの失敗事例を見ていきましょう。
ユニクロを運営する「株式会社ファーストリテイリング」の事例です。ファストファッションでは世界的なシェアを誇るユニクロブランドですが、その運営会社である株式会社ファーストリテイリングのプロモーション戦略は、他分野では苦戦を強いられたことがありました。
同社が展開した野菜販売事業「SKIP」は、高品質の野菜や旬のフルーツを契約農家から直接消費者に届けるというものでしたが、約9億円の赤字を出し、約2年で事業が打ち切られました。
元来、株式会社ファーストリテイリングが大切にしていた理念である、安くても質の良い商品を届けたい、というメッセージに共鳴してきた根強いユニクロファンにとって、そこから外れた新事業「SKIP」のやや高級なイメージに魅力を感じられなかったのです。
ブランドイメージが一度定着してしまうと、そこから乖離したプロモーションは消費者に違和感を持って受け止められ、失敗の要因となってしまいます。
マーケティングにおけるプロモーションの役割や手法を理解しよう
企業のマーケティングの行く末を左右するプロモーション戦略について、代表的な事例や手法を見てきました。核となるのは、自社の理念やコンセプトを大切に伝えていくメッセージ性や、歴史を踏まえた自社独自のストーリーです。
プロモーションの基本は、相互理解を深めてより良い関係性を築くことです。その点を理解して、マーケティングを成功させていきましょう。