
採用ブランディングを成功に導くフレームワークとは|戦略設計から実行までの実践ガイド
記載されている内容は2025年06月16日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
初回公開日:2025年06月16日
更新日:2025年06月16日
採用活動の成果は、表面的な打ち手だけでは伸び悩む傾向にあります。大切なのは、企業の価値や文化をもとにした「採用ブランディング戦略」の全体設計です。
本記事では、採用ブランディングを構築するための基本フレームワークを解説し、実践に活かせる具体例も紹介します。
はじめに
採用活動の成果を高めるには、場当たり的な施策ではなく、全体を見通した戦略的な設計と一貫性のあるメッセージ構築が求められています。
採用手法の多様化とブランディングの重要性
現代の採用活動は、求人媒体や説明会だけに頼る時代から大きく変化しています。SNS、オウンドメディア(自社運営メディア)、社員インタビュー動画、ウェビナー、ダイレクトリクルーティングなど、選択肢は年々多様化しています。
こうした手法の多様化はチャンスである一方で、企業のメッセージが分散しやすくなるという課題も抱えています。「何を」「誰に」「どのように」伝えるかを明確にしないままツールを使い分けてしまうと、結果として一貫性のない印象を与え、求職者の共感を得られません。
そのため、ブランディングの視点が欠かせません。単なる情報発信ではなく、企業の価値観や文化がすべてのチャネルで統一感をもって伝わるよう設計することが、採用競争を勝ち抜くための前提条件となっています。
感覚ではなく戦略的設計が求められる時代
採用活動は「求人を出せば応募が来る」時代から、「選ばれるための設計」が必要な時代へと変化しました。労働人口の減少や働き方の多様化により、求職者の視点も変化しています。
そこで重要になるのが、採用ブランディングを“戦略”として捉えることです。担当者の感覚や場当たり的な施策では、再現性や持続性がなく、採用成果が偶然に左右されてしまいます。
フレームワークを活用し、採用の目的、ターゲット、訴求メッセージ、チャネル、導線設計を体系的に整理しておくことで、社内の共通認識も生まれ、施策の一貫性と成果が高まります。
企業の魅力を適切に届けるには、見た目の華やかさよりも、設計の“軸”を持つことが求められているのです。
採用ブランディングにおけるフレームワークの役割

採用ブランディングの効果を高めるためには、感覚や属人的な対応ではなく、全体を整理し共通言語で動けるフレームワークの活用が重要です。
なぜフレームワークが必要なのか
採用活動では、人事部門だけでなく広報、現場社員、経営層など多くの関係者が関わるため、方向性がぶれやすいという課題があります。部署ごとに異なるメッセージやトーンで発信されてしまうと、求職者に一貫性のない印象を与え、企業全体の信頼性を損なう恐れがあります。
フレームワークを導入することで、「誰に」「何を」「どのように伝えるか」といった基軸を明確にし、社内全体で統一した方針を共有できます。たとえば、ターゲットとなる人材像や訴求ポイント、表現トーンを事前に定義しておけば、SNSや採用ページ、イベントなど各チャネルで発信される内容が自然と統一されます。
また、採用体験においても、説明会・面接・入社後のオンボーディングまで一貫したブランドストーリーを描けるようになります。断片的な情報発信から脱却し、求職者に「信頼できる会社」という印象を持ってもらうために、フレームワークは不可欠な道具となるのです。
企業の採用力を「見える化」するための思考整理ツール
採用活動の成果を高めるには、まず自社の強みや課題を正確に理解することが必要です。しかし、現場の感覚だけに頼ると、主観に左右されて本質的な改善に結びつかないケースも少なくありません。
フレームワークは、こうした課題に対して“構造的に整理する思考ツール”として役立ちます。たとえば、採用活動における現状の可視化や、応募者の流入経路・辞退理由などを項目別に分析することで、見えにくかった問題点が浮き彫りになります。
また、採用ブランディングの方向性を「誰に」「何を」伝えるかといった視点で言語化することで、関係者間の認識ズレも防げます。さらに、フレームに沿って施策を分類・実行することで、検証・改善のサイクルも回しやすくなります。
感覚に頼らず、思考の枠組みをもとに整理していくことで、採用活動全体が戦略的に「見える化」され、継続的なレベルアップへとつながっていくのです。
採用ブランディング設計に役立つ主要フレームワーク
採用活動を戦略的に進めるには、フレームワークを使って思考を整理し、施策の一貫性と再現性を高めることが不可欠です。
STP分析(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)
採用ブランディングにおいて最も基本的かつ重要な考え方が、STP分析です。これは「誰に、何を、どう伝えるか」を明確にすることで、採用戦略の土台を整える手法です。
まず、セグメンテーションでは、候補者を属性や価値観などで分類し、社風にマッチする人材群を見極めます。次に、ターゲティングではその中から「特に採用したい人材層」を定めます。たとえば「成長志向のある若手エンジニア」など具体的な人物像を設定することが重要です。
最後にポジショニングでは、数ある企業の中で自社がどのような立ち位置を築くかを整理します。「挑戦できる環境」「安定した長期キャリア」など、自社の強みと求職者ニーズの接点を見つけ、訴求ポイントを明確にします。
この3つの視点を整理することで、採用メッセージに一貫性が生まれ、適切なターゲットに響くブランディングが可能になります。
ペルソナとカスタマージャーニー
求職者に響く採用施策を設計するには、企業視点だけでなく、応募者視点を持つことが欠かせません。そのために有効なのが、ペルソナとカスタマージャーニーの活用です。
ペルソナとは、採用したい理想的な人物像を具体的に描いた仮想のキャラクターです。「25歳、社会人3年目、成長機会を重視するエンジニア志望」など、細かな設定を作ることで、相手に伝えるべき言葉や魅せ方が明確になります。
一方のカスタマージャーニーでは、応募に至るまでの接触ポイントや心理変化を時系列で可視化します。「SNSで企業を知る」「採用ページを読む」「社員の動画を見る」「説明会に参加」など、各ステップで必要なコンテンツやチャネルを整理できます。
この2つを組み合わせることで、「どのタイミングで、何を届けるべきか」がクリアになり、無駄のない効率的な施策設計が可能になります。
3C分析(自社・競合・市場)
採用ブランディングを強化するには、自社の強みを正しく理解し、競合との差別化を図ることが不可欠です。その整理に役立つのが3C分析です。
これは「Company(自社)」「Competitor(競合)」「Customer(市場・求職者)」の3つの視点から採用戦略を構築するフレームワークです。
まず、自社の特徴や働く環境、カルチャー、社員の声などを言語化し、「自分たちらしさ」を整理します。次に、同じ人材を狙う競合他社がどのような打ち出し方をしているかを調査し、自社との違いを明確にします。
最後に、ターゲット層がどのような価値観を持ち、どんな企業に魅力を感じているかを把握することで、自社ならではの魅力がどこにあるのかを客観視できます。
この3C分析によって、自社の魅力を言葉にする精度が高まり、応募者の心に響くメッセージづくりが可能になります。
5W1Hフレームで施策整理
採用ブランディングでは、企画した施策を確実に実行に移すために「5W1H」の視点で整理することが効果的です。「誰に(Who)・いつ(When)・何を(What)・どこで(Where)・なぜ(Why)・どうやって(How)」という問いを立てることで、施策の精度が一気に高まります。
たとえば、
● Who:20代前半の新卒学生
● When:就活解禁直後の3月
● What:キャリア成長に関する動画
● Where:InstagramとYouTube
● Why:入社後の成長を不安に感じているから
● How:若手社員が語るストーリー動画を配信
といった具合に、施策を構造的に組み立てることができます。
このプロセスを経ることで、各施策が感覚頼りではなく、狙いや目的に沿ったものとなり、社内での説明や実行フェーズでのブレも防げます。
5W1Hは、企画のアイデア段階から実行計画の具体化、さらには効果測定の振り返りにまで活用できる、シンプルながら非常に実用性の高いフレームです。
成功企業が実践しているブランディング設計例
成果を上げている企業は、ブランディングの設計において一貫性と共感を重視し、社内外の接点すべてで魅力が伝わる工夫を凝らしています。
一貫した採用コミュニケーションの構築
採用ブランディングの効果を最大化するには、「どのチャネルでも同じ印象を持たれる」ことが重要です。そのためには、ブランドトーンの統一と、社員を巻き込んだ施策づくりが欠かせません。
ブランドトーンとは、言葉の選び方やビジュアルの雰囲気、話し方など、企業が外に発する“キャラクター”のことです。採用ページ、SNS、説明会資料、社員動画など、すべての接点で統一感を持たせることで、求職者にとって信頼と安心感が生まれます。
加えて、発信の担い手として社員を巻き込むことも効果的です。現場社員のリアルな声や表情は、企業の魅力を最も説得力あるかたちで伝えてくれます。全社的にトーン&マナーを共有し、社員が自然体で語れる環境を整えることが、信頼を得る採用コミュニケーションの土台となります。
SNS・動画活用とフレームワークの融合
採用における情報発信では、SNSや動画といった視覚的なコンテンツの活用が不可欠です。しかし、ただツールを使うだけでは意味がありません。重要なのは「どのストーリーを、どのチャネルで届けるか」をフレームワークと結びつけて考えることです。
たとえば、ペルソナで設定した“理想の応募者像”がSNSに慣れ親しんだZ世代であれば、InstagramやTikTokを主軸に据え、短尺の動画コンテンツで「働く人のリアル」を届ける戦略が有効です。
また、カスタマージャーニーで「企業を知る初期段階」にいる層には、感情に訴えるストーリー重視の動画を設計。後半では社員インタビューや制度紹介といった情報性の高い内容に切り替えることで、段階的に理解を深められます。
このように、ストーリー設計とチャネル選定をフレームに基づいて行うことで、発信の精度と効果が大きく向上します。
PDCAで継続改善できる体制づくり
採用ブランディングは、一度施策を実行して終わりではありません。むしろ本質的な成果を出すには、フレームワークを活用したPDCAサイクルの継続運用が必要です。
Plan(計画)段階では、フレームを用いて戦略・ターゲット・訴求軸を設計します。Do(実行)では、設計に基づき採用ページの更新、SNS投稿、動画公開などの具体的なアウトプットを展開します。
Check(評価)では、エントリー数やページ滞在時間、SNSの反応率などをもとに効果測定を行います。最後にAct(改善)として、どの訴求が響いているか、どのチャネルが効果的だったかを分析し、次の施策に反映させます。
このようにフレームワークを「使いっぱなし」にせず、運用に組み込むことが、継続的な成果創出を可能にする体制づくりの鍵となります。
採用ブランディングに活用できるツール・テンプレート紹介
採用ブランディングを具体的に設計・実行していくうえで、「考えを整理し、共有できる状態にする」ためのツールやテンプレートの活用は非常に有効です。ここでは、実務で役立つ代表的な3つのフォーマットを紹介します。
まず最初に導入したいのが「採用ペルソナシート」です。これは、自社が採用したい理想の人物像を詳細に記述するシートで、年齢、職歴、価値観、行動パターンなどを具体的に設定します。これにより、誰に向けて発信すべきかが明確になり、訴求メッセージのブレを防ぐことができます。
次に有効なのが「カスタマージャーニーマップ」です。求職者が自社を知り、興味を持ち、応募・選考を経て入社するまでのプロセスを時系列で可視化します。このマップを使うことで、どのタイミングでどのような情報提供やコンテンツが必要かを把握でき、コミュニケーション設計に一貫性が生まれます。
さらに、「メッセージ設計テンプレート」も実践的です。これは「キャッチ(惹きつける言葉)」「ストーリー(共感を誘う背景)」「証明(実際のデータやエピソード)」という3要素に分けて、採用メッセージを設計するフォーマットです。抽象的なスローガンに留まらず、求職者に「納得感のある」訴求ができるようになります。
これらのツールは、戦略の可視化と社内共有をスムーズにし、採用ブランディングをより強固で実行力あるものに変えてくれます。フレームワークと組み合わせて活用することで、継続的な改善にもつなげやすくなります。
ブランドクラウドが支援する採用ブランディング構築支援
採用ブランディングを強化したいと考えたとき、「何から始めるべきか分からない」「社内にノウハウやリソースが足りない」と悩む企業は少なくありません。ブランドクラウドでは、こうした企業の課題に対し、実践的かつ継続的な支援を提供しています。
特長のひとつは、フレームワークをベースにした支援設計です。採用ペルソナやカスタマージャーニー、3C分析、5W1Hなどを活用し、課題の可視化から施策整理までを体系立てて行います。これにより、担当者間での認識ズレを防ぎながら、確固たるブランド戦略の設計が可能になります。
支援は戦略立案にとどまりません。コンセプト設計後は、採用ページや動画、SNSコンテンツといったクリエイティブ制作も一貫してサポート。社内リソースや予算に応じて柔軟にチームを組成し、実行と運用まで伴走します。
また、施策実施後の効果測定や改善提案も行い、PDCAを回しながら中長期的な成果へつなげていきます。単発的な広告施策ではなく、企業の採用力そのものを高める“土台づくり”を支援することが、ブランドクラウドの強みです。
採用ブランディングに取り組みたいとお考えの企業様は、ぜひ一度、ブランドクラウドまでお気軽にご相談ください。貴社の魅力を整理し、理想の人材に届く戦略づくりを支援いたします。
まとめ|戦略フレームで“伝わる採用”を実現する
採用ブランディングの成否は、単なるアイデアや表現力ではなく、どれだけ再現性のある戦略設計ができているかにかかっています。優れたデザインや動画コンテンツも、設計の軸がなければ一貫性を保てず、求職者の共感を得ることはできません。
感覚や経験に頼った属人的な採用活動から脱却し、組織として採用力を底上げするには、フレームワークを用いた設計が不可欠です。ペルソナ、カスタマージャーニー、3C分析などの活用により、採用活動の「誰に・何を・どう伝えるか」を言語化・構造化することで、誰が見ても共有可能な“戦略地図”が完成します。
そして、そのフレームを活かしながら実際のコンテンツ制作、チャネル運用、成果の検証・改善までを一貫して支えるためには、信頼できる外部パートナーの存在が欠かせません。ブランドクラウドでは、企業の採用ブランディングをゼロから共に設計し、社内外への発信、そして効果の最大化まで、プロフェッショナルが伴走いたします。
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